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さて、こいつらどうしたものか。
幸い、勇者も、気絶はしているものの、今すぐ、死ぬような怪我では、ないみたいだ。正直、このまま放置しててもいいのだが、一応、森からは、離れている。だが、モンスターに襲われない保証はない。このまま襲われて、死なれでもしたら、寝付きが悪い。
「どうしたものか…」
そんなとき、街がある方角から大勢の人たちがやって来た。その集団は、俺の少し前で止まり、先頭の鎧を来た人が近づいてきて、話しかけてくる。
「これをやったのは、君かい?」
「えぇ。」
「そこで、倒れている人も君がやったのかい?」
「…えぇ。」
一呼吸おいて、返答する。
「そこに倒れているのは、確か勇者パーティーだったと思うのだが、倒れている理由を聞いても?」
「はぁ、分かりました。」
俺が、ゴブリンを倒してから、勇者が俺に言ってきた事を、こと細かく説明しておく。
「そうか…」
「それで、貴方は?」
「あぁ、すまない。挨拶がまだだったね。ゴブリンの大群の報告を受けて、急いで、騎士団を連れてやって来た、領主をしているマルクスだ。後ろは、その連れてきた騎士団だ。そういえば、君の名前をまだ聞いていなかったね。」
「領主様!? 俺は、龍神 守と言います。」
俺は、姿勢を正して、名前を名乗る。
「タツガミマモル? 聞いたことない名前だね。冒険者かね?」
「いえ、最近、田舎から出てきたものです。」
初めに決めていた事を、伝える。
「そうかね。それで、マモル、領主として、礼を言わせて欲しい。ありがとう。いくらゴブリンとはいえ、ざっとみた感じ、上位種もかなりの数いたみたいだ。私らが相手にしたら、たぶん、数名死者が出ていただろう。だから、ありがとう。」
領主様は、かなりいい人っぽい。
「いえ、別にそれはいいのですが、そこの勇者を倒した事に対して、何か罰則とかあったりしますか?」
「いや、それは大丈夫だ。確かに勇者は珍しいが、数ある職業の内の1つに過ぎない。この国にも、確かもう2人いたはずだ。しかも、そこに転がっている勇者パーティーは、最近評判が悪い。今回の件でいいお灸になっただろう。だから、気にする必要はないよ。治療はこちらでしておこう。」
「ありがとうございます。それは、良かったです。それじゃあ、これで失礼します。」
俺は、シュタット?にむけて、歩いて行こうとすると、
「待ちたまえ。」
「何でしょうか?」
呼び止められたから、振り返る。
「魔石の回収はしないのかい?」
魔石?あぁ、確かモンスターの中の埋まっている石の事か。それが、どうかしたのだろうか。
「ん、なんだ、知らないのかい? 魔石を冒険者組合に持っていけば、換金してくれるよ。常識だと思っていたが、よほどの田舎から来たみたいだね。」
「はははは、そうなんですよ。」
そう言って、振り返りゴブリンの死体を眺める。
魔石の回収かぁ…面倒だなぁ…
でも、お金もそこまである訳じゃないしなぁ…どうしたものか…
マルクスさんは、何かを察したのか、
「では、こうしよう。魔石はこちらで回収するので、そのまま買い取らせては、くれないかい?」
「それは、こちらとしては、有り難いのですが、本当にいいですか?」
「あぁ、少しばかりのお礼と思ってくれて構わない。」
「そうですか、それなら、お願いします。」
マルクスさんは、後ろの騎士団に何かを告げ再び俺のもとにやって来た。
「そういえば、この後は、どうするんだい?」
「一応、シュタットに行く予定です。」
「そうか、それは良かった。あぁ、門を入ってすぐの宿屋、火熊亭ってとこがおすすめだよ。」
「火熊亭ですか? 分かりました。そこに泊まってみます。」
「それなら、夜、その宿屋に使いをだそう。魔石の集計も終わっているだろうし、一緒に、ご飯でもどうかね?」
「ご飯ですか? 分かりました。それじゃあ、後の事は頼みます。では、ここで失礼します。」
俺は、シュタットにむけて、歩き出す。