月曜日
「おはよー。」
月曜日の朝。教室でかわされる挨拶に、我関せず焉とイヤホンをして本を広げる男子が一人。
「ショウはもっと社交的にならなきゃダメですよ。」
「やだよ、わずらわしい。」
ボクのご主人様は少し偏屈なところがある。名前は成谷翔。
「まあ、ボクがいればそれでいいんですよね。」
ため息をつくご主人様の顔を見て楽しむボクはエル、電子生命である。
電子機器には大抵侵入できてしまうので、その存在自体が秘密の存在。
今はご主人様の腕時計型端末にいる。
「露骨に嫌そうな顔しないでくでさい。ボクたち公認カップルですよ?」
実際、こうして毎日イヤホン越しで会話をしているご主人様は、クラスメイトから束縛の激しい彼女と電話してると思われている。
実際は脳の波長を音声に変換してエルと会話してるだけだったが、そもそもエルの存在を知らずして正しい推測なんかできるわけがない。
だから「公認カップル」は嘘ではなかった。
ご主人様は気づいてないようだったけど。
「そろそろ授業始ま、、?」
ボクとの会話を打ち切ろうとしていたご主人様の動作が止まる。
その視線の先にはほとんど学校に来ないことで有名なうちのクラスの名物担任がいた。
クラスメイトも「先生が学校来てる。」と、ざわついている。
「転入生紹介。」
だるげに話すと、廊下の外から転入生を招き入れる。
今は6月。こんな変な時期に。
教室に入ってきた転入生の姿に誰かの息を呑む声が聞こえた。
結論から言うとかっこいい男子だった。