05
城の敷地内には城内で働く者や住む者の為に食堂がある。
侍従、侍女、騎士は勿論、国を担う大臣達や王子王女、ごく稀に王や王妃も利用する(が、食堂内に漂う緊張感は半端ない)。
仕事を終えたシュゼットもその内の1人で、今日は仕事仲間3人と食事を楽しんでいた。
「今日、ブローゼット様に声掛けて貰っちゃった」
女性が4人集まれば話のネタは尽きないのか、隣国との情勢、経済の話から噂話まで幅広い話題で盛り上がる。
中でもやはり年頃の女性らしく色恋沙汰に時間が多く割かれるが。
「ブローゼット様って宰相様の?」
「そっちじゃなくて子息のマルセイ様」
「キャー!羨ましいわ。何処でそんな機会にあったの?」
「うふふふ」
「私はマルセイ様よりもブローゼット様の方が大人の色気があっていいわぁ。奥様を亡くされても尚、愛し、独り身でいる一途さ!」
「色気より強さよ。第一騎士団団長様は正に理想の筋肉!」
「第一騎士団団長様は婚約者一筋。2人が並んでいる姿はそれはそれは一枚の絵のように素晴らしいですわ」
揃って頬に手を添えながらうっとりし羨ましがっていると、ふと1人が何かを思い出したように我に返った。そして内緒話をすべく皆の額を集めた。うふふふと楽しそうに笑うと口を開いた。
「騎士団と言えばシュゼット、想い人との仲は進展しているの?」
「ふぁ!!!」
予想だにしていなかった内容にシュゼットは思わず大きな声を出して仰け反った。食堂中の視線が集まる。シュゼット以外の3人で周りに謝ると再び食堂は普段の空気に戻った。シュゼットも居住まいを正すが3人の表情は厭らしい笑みを浮かべている。
「そういえばこのリボン、かわいいね」
「何故か使うハンカチーフ以外にもう1枚いつも持ってるよね」
「いつだったか騎士団棟に呼ばれてたよね」
3人の的確な指摘に顔がどんどん赤くなっていくのが分かって、堪らずシュゼットは両手で顔を隠した。
「付き合ってるの?」
その質問に首を横に振る。
「でもリボンとハンカチーフはプレゼントでしょ?」
一瞬、躊躇って頷く。
「それ以外の事は?」
ピクリと肩を揺らすが何も言えず、隠している手まで赤く染まり出した。
「ふーーーーーーん」
何かを悟った3人は少し前に食堂に入ってきた騎士団の面々のある人物の方へと視線を向ける。
「人畜無害な顔をしておいて・・・」
「あ!いや!違っ!何も。その・・・・・・キスを」
変な誤解が生じてはいけないと、ものすごーーーーーく小声で白状すると3人はやはり小声で「キャーッ!!」と嬉しそうな悲鳴を上げてシュゼットを羨ましがった。