5話 初めての従魔
「セイ?セイの事をもっと知りたいの。ステータスを見てもいい?」
セイは手の上で上下に揺れる。
「ありがとう。」
私は小声で呪文を唱える。
「《魔物鑑定》」
ーーー
セイ
ベビースライム 女 0
魔石 1
魔力 5/5
スキル【吸収lv1、消化lv1、保管lv1、打撃耐性lv1、意思疎通lv1、環境適応】
称号【トモエの従魔】
ーーー
「他の子より小さいと思ってたけど、0歳の赤ちゃんならしょうがないね。」
セイはうんうんと、上下に揺れる。
「魔力も低いのもしょうがないね。」
セイはうんうんと、上下に揺れる。
「でもスキルはすごいね!もう6つもあるよ!」
セイはえっへん!と胸を張る様に少し膨らむ。
「すごいねー。」
私はセイを撫でる。セイは嬉しそうにぷるぷると揺れる。
あ、そういえば、全然ベトベトしてない!ぷるんぷるんだ。少しひんやりしてて気持ち良い。
「セイは、スライムはなんでも吸収し消化できるんだよね?」
セイは右の方へ身体を寄せる。
「そうなの?って。あ、そうだよね。まだ赤ちゃんだからわからないよね。
過去に召喚された勇者がそう言ってたらしいよ。なんでも吸収消化出来るってすごい事だよ!セイはすごいんだよ!」
セイはぷるんぷるんと揺れる。嬉しいと照れの気持ちが流れてくる。
…可愛い、撫で撫で。
「あ、スライムって味覚があるの?甘いとか苦いとかわかる?」
セイは右の方へ身体を寄せる。
「わからないか。美味しい、不味いは?」
セイはまた右の方へ身体を寄せる。
「じゃあ、好き嫌いはある?」
セイは上下に揺れる。そしてセイの中から草が出てくる。
「好き嫌いはあるんだね。って!?なにこの草?」
セイはぷるぷると揺れる。
「え?この草が好きなの?というかどこから出てきたの?
あ、もしかして保管スキル?」
セイは上下に揺れる。
「非常食が保管できるんだね。良いスキルだね。」
セイは嬉しそうにぷるぷると揺れる。
保管スキルか…保管できる量ってどのくらいだろう?
あと長い時間保管してるとやっぱり腐っちゃうよね?何を保管したか覚えてないといけないね。忘れて腐らせちゃ勿体無いよね。ノートかメモ帳が欲しいな。値段はいくらなんだろう?
…あれ?そういえばお金ってどうすればいいんだろう?
今まではお小遣いをお母さんからもらっ…て……お母さん………お母さん、お父さん、妹、弟、猫、みんなに会いたい…会いたいよ………
頰に何かが当たる。涙でぼやけた視界にセイが身体を伸ばしているのが見える。セイはさらに身体を伸ばして涙を吸収してから、私の頭を撫でる。
「セイありがとう。」
私は伸びて細くなったセイの身体を優しく撫でる。セイはぷるぷると震えながら私の頭を撫で続ける。
「…そうだね。会えないのはすごく…すごく悲しいけど、今を頑張らないといけないよね。ありがとうね、セイ。」
セイは元に戻りぷるぷると揺れる。
「うん。一緒に頑張ろうね。」
私はまたセイを優しく撫でる。セイはぷるぷると揺れる。
うん。少し落ち着いた。セイのおかげだね。
あぁひんやりしてて気持ち良いし、ぷるぷるしてるの可愛いなぁ。あ、そういえば…
「ねぇ、セイ?さっき伸びてたけど、どの位まで伸びる事が出来るの?」
疑問に思った事をセイに聞いてみた。
セイは右に身体を傾けた後、元に戻ってから身体をふらふら揺らしながら伸ばしていく。30センチくらいまで伸びてぷるぷると揺れた後また元に戻る。
「約3倍かな?結構伸びたね。すごいよ!」
私はセイを撫でセイは嬉しそうにぷるぷると揺れる。
「三角とか違う形になれる?」
私は一旦セイをガラスケースの上に置き、両手で△を作る。他にも□、×、☆とか色々と出来る事を試してみた。セイは不格好ながら頑張って言われた形になった。
色々試してる時、ふと移動する時ずっと手に持っているのはなぁ…とか思ったりして、今セイには左手首にスポーツで使っていたリストバンドの形になってもらってる。左手首に密着してるけど圧迫感が無い、ひんやりしてて気持ち良い。
「トモちゃん、テイムできたぁ?」
声を掛けられて振り向くと、頭にうさぎの耳付きの帽子をかぶっているアンナちゃんがいた。
「で、出来たけど……あ、アンナちゃん、なんでうさぎの帽子をかぶっててるの?動いた!?」
私はアンナちゃんのうさぎ耳を指差しながら言うとうさぎ耳がピクピクと動いて驚く。
「この子はぁ私がテイムした兎のラビちゃん。可愛いでしょぉ。」
アンナちゃんは帽子…じゃなくて兎のラビちゃんを外し、ラビちゃんの脇を持って私の目の前へ持ってきてぶらんぶらーんと少し左右に揺らす。
「うん。可愛いね。」
「それからぁ…」
アンナちゃんは私にラビちゃんを渡し、しゃがむ。ラビちゃんはリストバンドみたいになってるセイをクンクンして、セイはぷるぷると少し震える。
アンナちゃんは右手、左手に黒い子猫と白い子犬の首を掴んで立ち上がった。子猫子犬は大人しくぶらーんと手足が下がっている。
「黒猫のコクちゃんとぉ白狼のハクちゃんの3匹がぁ私のテイムした子達なんだぁ。」
あ、犬じゃなくて狼なんだ。あれ?白狼ってウルさんと同じ…?
「3匹とテイムしたんだ。すごいね。ハクちゃんはウルさんと同じ白狼?親子?それと魔獣って事なの?」
「親子じゃないよぉ。白狼は獣でぇウルさんも元は獣だったみたいでぁ、昔ぃ従魔契約して力を付けてぇ魔獣に進化したみたいだよぉ。魔獣ってぇもの凄い量の魔力を保有した獣がぁ進化した者達の事を言うみたいよぉ。だからぁハクちゃんはまだ獣なのぉ。」
「そうなんだ。その従魔契約した人ってユーさんの事?」
「違うみたいよぉ。過去の勇者らしいよぉ。
それでぇ、トモちゃんの契約した子は何処にいるのぉ?」
アンナちゃんはコクちゃんとハクちゃんを床に置き、私の足元を見てそれから上へ視線を動かしていき、私の顔を見て首を傾げる。
私はラビちゃんをアンナちゃんに返して、手のひらを上に向けて「セイ、戻って」と言う。
セイは手首から手のひらに身体をにょ〜んと伸ばしてリストバンド型から元の姿に戻った。
「この子が私がテイムしたベビースライムのセイだよ。セイ、この人は私の友達のアンナちゃんだよ。あとさっき聞いてたと思うけど、ラビちゃん、コクちゃん、ハクちゃんはアンナちゃんのテイムした子達だよ。仲良くしてね。」
私はコクちゃんとハクちゃんも見えるようにしゃがみ、アンナちゃんもラビちゃんを抱えながらしゃがむ。
セイはぺこりと頭を下げるように少し上下に動く。
「変わったブレスレットを付けてるなぁと思ったけど、スライムだって全然気が付かなかったよぉ。セイちゃんね、私はトモちゃんのし・ん・ゆ・うのアンナだよぉ。よろしくねぇ。」
アンナちゃんはにっこりと笑って人差し指でセイを触ろうとする。
セイは身体の一部を伸ばしてアンナの指にちょんと触る。それからラビちゃん、コクちゃん、ハクちゃんの鼻にも伸ばして軽く触れて元に戻る。猫同士の鼻で挨拶してるみたいに見える。
「セイちゃんはブレスレットみたいになるしぃ、身体の一部を伸ばして動かす事も出来てぇ、器用ねぇ。」
「すごいよね!さっき色々試してて出来るようになったんだよ!あとスキルがテイムした時から6つもあるんだよ!」
セイは照れてぷるぷると少し揺れる。
「それはすごいねぇ。」
アンナちゃんはセイを優しく撫でる。
「私の子達はぁラビちゃんが2つ、コクちゃんが3つ、ハクちゃんが2つスキルがあったよぉ。ほら?」
ーーー
ラビ
茶兎 女 0
魔力 3/3
スキル【逃げ足lv1、意思疎通lv1】
称号【アンナの従魔】
ーーー
ーーー
コク
黒猫 女 0
魔力 4/4
スキル【夜目lv1、忍び足lv1、意思疎通lv1】
称号【アンナの従魔】
ーーー
ーーー
ハク
白狼 男 0
魔力 1/1
スキル【狩りlv1、意思疎通lv1】
称号【アンナの従魔】
ーーー
と、アンナちゃんがラビちゃん達のステータスを見せてくれた。
「みんな意志疎通があるね。セイにもあるよ。ほら?」
「それは従魔契約すると覚えるみたいよぉ。」
「それでみんなあるんだ...って?!」
ーーー
セイ
ベビースライム 女 0
魔石 1
魔力 5/5
スキル【吸収lv1、消化lv1、保管lv1、変形lv1、打撃耐性lv1、意思疎通lv2、環境適応】
称号【トモエの従魔】
ーーー
「スキルが増えてる?!意志疎通のレベルも上がってる!?」
「あらあらぁ。短時間ですごいねぇ。」
「セイ!すごい!セイすごいよ!」
私は喜びセイを高い高いする。セイは嬉しそうに身体の一部を音符の形にして揺らす。
「わぁ。本当にすごいよ。セイは天才かな?」
私はセイを撫でまくる。セイは嬉しそうにぷるぷると揺れながら撫でられまくる。
「…親バカが誕生した瞬間を見てしまったよぉ…」
「みんな、テイムできたみたいだな。」
「はい!」「できました!」
「はぁい。」「…はい。」
…さっきのテンションが恥ずかしい…あんなにはしゃいじゃったよ…でも嬉しかったんだもん…しょうがないよね…
私達は隣の部屋に移動した。
「テイム成功おめでとう。」
「「「「ありがとうございます。」」」」
「昨日初めて魔法を使って、今日テイムを成功させるなんて、しかも複数テイムした者もいる。さすが勇者だな。」
私達は褒められて嬉しくなる。
「お前達は大丈夫だと思うが、昨日も言ったが、テイムしたモノを大切にするんだぞ。」
「「「「はい!」」」」
その後テイムした子達の自己紹介した。
マキ君は犬に似た魔物ドーワンのシキ、鳥に似た魔物チーチュンのトキ
タダノ君は蜘蛛2匹クモオとスパコ、蜂2匹のハチコとビーコ、蟷螂のカマコ
魔物を初めて見たけど、普通の動物にしか見えないな…あ、セイ、スライムも魔物だった…初めてじゃなかった……
自己紹介した後、外でテイムした子達と一緒に身体を動かして色々確かめ、さらに仲を深めていった。
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