3話 異世界
目が覚めたら、なぜかアンナちゃんが私に抱きついて眠っていた。
昨日ラーゴンさんから本を渡させた後ずっと頭の中でスライムの事を考えていた。夕食の時もお風呂の時も考えていた。割り当てられた部屋でラーゴンさんから借りる許可を得た生物図鑑をベッドで横になり読んでいたらいつの間か眠っていたらしい。
…あぁ、そうだ。同じ従魔クラスという事でアンナちゃんと同じ部屋になったんだった。
アンナ…自分のベッドがあるのに、なんで私のベッドに来て抱きついて眠っているのかな…?
「トモちゃん、おはよぉ。」
「…おはよう。どうして抱きついてるの?」
「私抱き枕がないと眠れなくてぇ、トモちゃんを試しに抱いてみたらぁ、抱き心地が良くてねぇ、そのまま眠っちゃったみたい。トモちゃんありがとねぇ。」
「…どういたしまして?」
…あれ?もしかしてここでも抱き枕にされる?
…妹は…ちゃんと眠れてるかな…
「朝ご飯食べに行くぅ?」
「…そうだね。行こうか。」
顔を洗い、気持ちを切り替え、身支度を整えてアンナちゃんと一緒に食堂に向かった。
皆(男子はサトウ君、マキ君、ダダノ君だけ)に挨拶をし、朝食を受け取る。
朝食はロールパンにコーンスープ、サラダでした。
うん。美味しかった。
朝食後、王女様とマーデルさん、王女様の数名の護衛が食堂に来た。
「皆様、おはようございます。」
「「「おはようございます。」」」
「イガラシ様、説明後は訓練所でスキルを試してみませんか?」
「「「やったー!」」」
「せんせー。スキル使いたーい!」
わー!っと歓声を上げる一部の男子達。先生は苦笑しながら言う。
「えっーと…こういう事なのでよろしくお願いします。」
「はい。わかりました。」
王女様は護衛に説明後の事を伝え、準備しておくようにと命令した。
「では、この世界について説明をマーデル殿、お願いします。」
「畏まりました。皆様、おはようございます。この世界について説明しますね。
この世界はカラーレントと言います。母神カラー様と父神レント様から来ています。
カラーレントには人族、魔人族、エルフ族、ドワーフ族、獣人族、魔物がいます。レベル、魔力、ジョブ、スキル、称号があります。」
「カラー様とレント様の子達が創造した人々、人族を召喚神アルジェ様が、魔人族を魔神ノワル様が、エルフ族を精霊神ヴェルル様、ドワーフ族を鍛治神ブラウ様、獣人族を戦女神ルジェ様が創造しました。私達はその子孫です。」
「魔人族は魔法全般が、エルフ族は精霊魔法、ドワーフ族は鍛治、獣人族は戦闘が得意です。魔力は魔人族が一番多く持っていまして、次にエルフ族、その次に人族、ドワーフ族、最後に獣人族です。
レベルは魔物や邪王、邪族、邪魔物を斃すと上がります。魔物とは魔石がある生き物で自然発生又は分裂、交尾で生まれてきます。魔石は魔力が凝縮された心臓の様なものです。
邪王達は姿形は目や魔石が真っ黒な私達や魔物といった感じでしょうか。斃すと魔石を残して消えます。あの者達が何処から来ているのか未だに分かりません。私達を殺して、この世界を手に入れるというのだけは分かってますが…」
「すみません、質問があります。人を斃した場合はレベルは上がらないのですか?」
「アラヤ君!!何を言ってるか分かってる!?」
「え?気になるじゃん?」
「イガラシ様、いいですよ。アラヤ様、レベルは上がりません。人を斃してもレベルが上がらない理由は『子達が仲が良いのになんで子達が創造した子供達が争う切っ掛けを儂らが作る訳がないじゃないか。皆仲良くしてほしい。』とカラー様とレント様がそう望んで、そういう世界を創造したからです。」
「へぇ…そうなんだ…」
アラヤ君はなんで残念そうな顔をしてるのかな?
「私達がいる国、アルジェレント王国は人族の王が治めています。
魔人族の王が治めるノワルレント王国、エルフ族の王が治めるヴェルルレント王国、ドワーフ族の王が治めるブラウレント王国、獣人族の王が治めるルジェレント王国があります。魔物は様々なところで生息しています。」
「今は協力し合っていますが、大昔は各地で種族内で…種族間で戦争をしていたようです。」
「神々が仲良くしてほしいと望んでるのに、先人達は…嘆かわしいです。」
「…しかし突如として邪王が率いる邪族、邪魔物が現れて各種族を殺戮していきました。私達は必死に戦いましたが、レベルが低かった為多くの人々が殺され、絶滅の危機に陥りました。そんな時、神々が危機を打破する為、勇者召喚を行いました。」
「神々が召喚したからでしょうか、レベルも高くスキルも強力なモノを持っていて、圧倒的だったと伝えられています。」
「勇者様達が邪王を斃し、危機を脱して皆が手を取り合って喜んでいましたが、邪王が死に際に『この世界を手に入れるまで仲間達が何度も攻めに来る。せいぜい残り短い時を楽しむんだな。』と言葉を残して消えました。
それ以降、邪王達が現れても子供達が乗り越えられるように神々がダンジョンを作られました。私達はそこでレベルを上げています。約百年毎に邪王達は現れ、先人達は何度も自分達で斃してきました。
数百年前今回のように予知があり、神託を受けた事がありました。その時の先人達は『先人達も斃せしてきたんだ。先人達より強い私達なら自分達で斃せる!』と神託を無視して戦いました。しかし負けて殺され、神託の通り絶滅の危機に陥ちました。また神々が勇者召喚を行い先人達は救われました。」
「その先人達も汚点です。歴史から、歴史書から消し去りたいです。」
「……それからは『神託は必ず守れ』と伝えられ、神託があった時は勇者召喚を行い、勇者様達と協力して斃したと伝えられています。」
「そして今回神託があって勇者召喚を行い、今に至ります。」
説明が終わった。
「ねぇ?神託がある時はカラーレントの人達では斃せない程邪王達が強いって事なのかな?神様は何かしらの方法で分かって勇者達を召喚させてるのかな?」
「そうだとしたら私達にそんな邪王達を斃せるのかな…」
「大丈夫だよ!私達勇者だもん!斃せるよ!!」
「任せとけよ!俺が殺してやる!」
斃す、殺すって言うのは簡単だけど…
レベルを上げる…強くなる為には斃さなきゃいけないって言われたけど…私はそんな簡単に割り切れないよ…
王女様が話をしている生徒達に言う。
「大丈夫ですよ。皆様は勇者様ですから。これからレベルを上げれば斃せますよ!
ではスキルを試しに行きましょうか。」
いつの間にか控えていたラーゴンさんが王女様に話しかける。
「王女様、おはようございます。スキルを試すとお聞きしました。その件で従魔クラスは従魔屋でスキルを試したいのですが、許可頂けませんか?」
「おはようございます。そうですね…良いでしょう。許可します。」
「ありがとうございます。
じゃあ、従魔クラスの奴は俺に付いてくてくれ。」
私はもやもやした気持ちのままラーゴンさんに付いていく。
私達従魔クラスは従魔屋という所に、王女様と他の勇者達は訓練所に向かった。
最後まで読んで頂きありがとうございます。気に入って、ブックマークでもしてもらえると嬉しいです。