10話 初めての戦闘
「はい。他はー?」
「はい。」
シホちゃんが手を上げる。
「はい。シホちゃん。」
「地球戦隊5女レンジャー!レッドはトモちゃん、ブルーは私、グリーンはクロちゃん、イエローはカオリちゃん、ピンクはアンナちゃんだ「あ、あの~。」よ。」
声を掛けられて私達は振り向くと支援回復クラスのヨシノ君が立っていた。
「なにかな?」
と不機嫌になったクロちゃんが言う。
「盛り上がっているところごめん。」
声を掛けてきたヨシノ君が頭を下げる。
「なにかな?」
「えーっと、その、ラクモトさんになんだけど…」
「私?なに?」
「その、ラクモトさん!タナカ君のパーティーに入ってくれないかな!お願いします!」
とヨシノ君はまた頭を下げる。
「え?」
「ちょっとぉ、それはないんじゃないかなぁ。」
「そそ。どう見てもトモちゃんと私達がパーティーを組んでるってわかるよね?」
「それでも!どうかお願いします!」
私は必死なヨシノ君に困惑するが、ヨシノ君の目を見てちゃんと断る。
「ヨシノ君ごめんね。もうパーティー組んでるから、タナカ君のパーティーには入れませんって伝えて。」
「………」
ヨシノ君は無言で去っていく。
私達は去っていくヨシノ君を見ながら話す。
「なんであんなに必死だったんだろうね。」
「なんでだろうねぇ?」
「タナカ君にトモちゃんを絶対に仲間にしろって脅されたとか?」
「タナカ君って俺様系男子だもんね。トモちゃんの事が好きで手に入れたいって感じかな?」
「へぇ、じゃあ、タナカはぁ私の敵だねぇ。ん?トモちゃんどうしたのぉ?」
「…ちょっと、ヨシノ君が心配で…」
ヨシノ君がタナカ君達に合流して頭を下げている。タナカ君がヨシノ君の肩に手を置く。
「ご、ごめん。もうパーティー組んでるから、入れないって。」
「はぁ、やっぱぁお前使えねぇな。」
「………」
「回復魔法って自分にも使えるんだよな?」
「え?う、うん。使えるよ。」
「じゃあ、後でお前の回復魔法のレベル上げを手伝ってやるよ。」
「い、いや、いいよ。」
「気にすんなよ。お前は回復魔法のレベル上げが出来て、俺達はストレス発散が出来るんだから一石二鳥だろ?」
ヨシノの表情が困惑から絶望に変わる。
タナカ君が笑いながらでヨシノ君の肩を何度か叩いている。
「笑ってるよ?大丈夫じゃない?」
「そう、かな?」
「タナカは敵ぃ。あの顔は怪しぃ。」
「………」
「カオリちゃん、どうしたの?」
「…ううん。何でもないよ。」
「そう。」
「まぁ、何かあったら力になろう。」
「そうだね。」
「助ける。」
「うん。」
マーデルさんがパンパンと手を叩き、注意を引く。
「パーティーが決まったようなので一度集まって下さい。」
言われた通りマーデルさんの前に皆が集まる。集まる時にヨシノ君の表情を見ようとしたが、タナカ君達で隠れてて見えなかった。
パーティーは私達のパーティー含めて6パーティー(男女混合が4組、女子パーティーが1組、男子パーティーが1組)が組まれていた。
「パーティーが決まりましたので、パーティーの連携の訓練を開始したいと思います。これから私達がゴーレムを作成します。まずは1体。問題なく倒せたら2体と、徐々にゴーレムの数を増やしていきます。」
パーティー毎に魔法使いの人が付き、ゴーレムを作成する。私達の担当はサリー・ササリーという女性の魔法使い。
「「「「「よろしくお願いします。」」」」」
「きゅ。」「にゃ。」「バウ。」ぷるぷる。
「よろしくね。」
ゴーレムはロボットの様なモノで、形、大きさはは作成者の魔力とスキルレベル、想像力によって様々な形に作成する事ができるらしい。大きさが大きいほど、形が複雑なほど魔力を多く使う。
今回はゴブリンという魔物の形で作成するみたい。
土がうねうねと動き形を作っていく。大きさは小学生の低学年くらい120センチくらい。鼻と耳が尖ってる。目はつり目で大きく、睨めつくように鋭い目付き。口も大きく裂けている。歯が見えていて、歯並びが悪いが犬歯は他の歯より大きく立派である。右手にはサリーさんが渡したバット様な棒を持っている。
陣形は五角形、一番前にシホちゃん、その左右後ろに私とアンナちゃん、私の右後ろにクロちゃん、アンナちゃんの左後ろにカオリちゃん、後衛2人を守るようにラビちゃんとコクちゃん、ハク君が後ろにいる。セイは私の腕にリストバンド型になっている。
私達が構えると、ゴーレムゴブリンが棒を振り上げ走ってくる。シホちゃんが正面に立ち上段で構える。ゴーレムゴブリンが棒を振り下ろす。シホちゃんが一歩下がり避け、隙が出来たゴーレムゴブリンの頭に剣を振り下ろす。頭が割れて、ゴーレムゴブリンがぼろぼろに崩れる。シホちゃんがふぅっと息を吐く。
「シホちゃん!凄い!」
「凄いねぇ。」
「カッコいい。」
「きゅ!きゅ!」「にゃ!」「バウバウ!」
「シホちゃーん。一人で倒したら練習にならないよー。」
「ごめん。やれると思ってやっちゃった。」
「まさか、こんな簡単にやられると思わなかったわ。」
サリーさんが驚きながら言う。
「そうなんですか?」
「ええ、このゴーレムはレベル5でね、戦った事がないパーティーは普通はあんな風に前衛が抑えている間に他の子が攻撃するのよ。」
サリーさんが他のパーティーを指しながら言う。前衛が抑えて、他の子が魔法や剣などで攻撃している。
「そうだよねー。連携の練習だしー。」
「でもシホちゃんが一人でもやれるって分かったからいいんじゃないかな。」
「いいと思うよぉ。」
「まぁ、そうだね。」
「ありがとう。トモちゃん。」
「それで、2体に増やす?」
「どうする?トモちゃん。」
「うーん。練習だからもしもの為に自分の身を守れるように1対1とか経験したいな。」
「あー、そうだね。それがいいかも。」
「わ、私も?」
「うん。シホちゃんみたく出来なくてもいいから、経験した方がいいと思う。やれなくても怪我しないように自分の身を守る事が出来たら、その後は私達が助けるから、ね。練習だしやってみよ?」
「う、うん。が、頑張る。」
「私もぉ頑張るよぉ。トモちゃんはぁ私が守るぅ!」
という事でみんながゴーレムゴブリン1体とやってみた。
私は攻撃を受けないように避けてはゴーレムゴブリンの足を叩くを何度も繰り返し、足が傷付き壊れ倒れたところで頭を壊す。ロボットだからこんな風に出来たけど、本物のゴブリンだと絶対こんな風に出来ないと思った。
アンナちゃんはゴーレムゴブリンの攻撃を上手く受け流したり躱したり転ばしたりしていた。何度も繰り返した後ラビちゃん、クロちゃん、ハク君に指示を出す。ラビちゃん達が攻撃をして気を引いたところをアンナちゃんがゴーレムゴブリンの胸辺りに突きをする。吹っ飛んで倒れたゴーレムゴブリンはラビちゃん達に蹴られて噛まれて引っ掛かれてぼろぼろになり最後にアンナちゃんのフルスイングを頭に受けて土に戻った。
それを私と私の頭の上でスライムの形に戻ったセイが一生懸命見ていた。
クロちゃんはゴーレムゴブリンが近づいてくる前に魔法で攻撃をして、近付いて来たら、先端に宝石が付いている棒で牽制、攻撃を防いで、払ったりして近距離からの魔法を使ってぼろぼろにしていた。
カオリちゃんはクロちゃんより長い棒を両手で持って震えながら構えている。ゴーレムゴブリンが振り上げながら走ってくる。後ろに下がろうとして躓き尻餅をつく。ゴーレムゴブリンが目の前まで来て棒が振り下ろす。カオリちゃんはきゃっと声を出して目を瞑り、反射的に頭を守ろうと棒を上げる。棒と棒が打ち合う。ゴーレムゴブリンはもう一度振り上げ、カオリちゃんはいやああ来ないでえええと叫び棒を無茶苦茶に振りながら後退する。ゴーレムゴブリンは攻撃しようにも攻撃が出来なく、カオリちゃんは無茶苦茶に振っているから当たらなくて決着がつかない。しかしカオリちゃんの体力が尽き、棒を振れなくなり、ゴーレムゴブリンが近づいて棒を振り下ろす。カオリちゃんは目を瞑る。ゴーレムゴブリンはコツンとカオリちゃんの頭に棒を優しく当てる。
私達はカオリちゃんの側に行く。
「カオリちゃん。戦いで目を瞑っちゃ駄目ですよ。野生の魔物だったら死んでましたよ。」
「うん。防げるものも防げない。」
サリーさんとシホちゃんちゃんが言う。
「だって、だってぇ怖いよぉ…」
私は目に涙を溜めて泣きそうなカオリちゃんの背中を擦りながら言う。
「怖いよね。でもカオリちゃん、最初の攻撃を防げていたよ。」
「え?」
「うんうん。ちゃんと防いでいたよ。」
「その後だって自分の身を守れてたよ。だから自信を持って。」
「………」
「無茶苦茶だったけどねぇ。」
「冷静だったら、最後まで防げていた。」
「私もシホちゃんの言う通りだと思うよ。初めてだし仕方がないよ。」
「いっぱい練習をして慣れていこう。」
「…ぁ、ぁりがとう。頑張る。」
「「「「うん。」」」」一緒に頑張ろ!」
カオリちゃんには体力が回復するまで見学しいてもらい、私達はもう一度ゴーレムゴブリンとやった。
私はセイと一緒にやった。セイは跳んで顔や足に体当たりをして少し注意を引いてくれた。一回目より簡単にやれたが、セイが攻撃を受けて吹っ飛んだ時は焦った。セイはぷるぷると震えて大丈夫と直ぐに戻ってきた。
アンナちゃん達は問題なくやっていた。
カオリちゃんも体力が回復して、目を瞑っちゃっていたが最初より少し冷静にやっていた。
休憩して2体以上のゴーレムゴブリンと何度かやった。
2体のゴーレムゴブリン。シホちゃんが1体を私かアンナちゃんがもう1体を相手をしてクロちゃん、ラビちゃん達が攻撃する。シホちゃんはすぐ壊す。私が相手をしている間にアンナちゃんがゴーレムゴブリンの膝裏を叩き、体勢を崩したとこをクロちゃんが顔に攻撃魔法をして倒してみんなでボコボコして壊した。
3体のゴーレムゴブリンの時はシホちゃん、私とセイとクロちゃん、アンナちゃんとラビちゃん達がそれぞれ相手をした。カオリちゃんは回復魔法の準備。3体でもシホちゃんは速攻で壊して、どっちかのゴーレムゴブリンを壊す。
4体のゴーレムゴブリンではシホちゃん、私、アンナちゃん、クロちゃんとセイ達従魔達がそれぞれ相手をする。相変わらずシホちゃんは速攻で壊す。立ち位置を失敗して私とクロちゃんがぶつかって体勢を崩す。シホちゃん、セイ達が壊して、引き付けてくれて問題なかったが間に合わなかったら危なかった。
今日は4体まで練習が終わった。明日もパーティーの連携の練習、これからはパーティーで行動する事が多くなりそうだ。
練習が終わり夕食を摂って、今はパーティーのみんなと一緒にお風呂に入っている。
「クロちゃん、ごめんね。4体目の時。」
「ううん。あれは周りを把握してなかった私が悪いよ。ごめん。」
「難しいね。あ、シホちゃん達ありがとう。」
「そうだね。シホちゃん達ありがとう。というかシホちゃん余裕だね。」
「皆が1対1の状況を作ってくれるおかげ。ありがとう。」
「皆凄いね。私、何も出来なかった。」
「カオリちゃんが一番凄いよ。」
「うん。カオリちゃん最後の方、目を瞑らなくなった。凄い。」
「カオリちゃん今日ちょぉ成長したぁ。」
「うんうん。あんなに怖がってたのにねー。ちゃんと見てたし、防いでいたよ。」
「それは、皆がやってるのに、私も、って思っただけで、皆みたく壊せなかったし…」
「これから出来るようにぃなればいいんだよぉ。皆ぁ得意ぃ不得意な事がぁあるんだしぃだからぁ出来なくてもいいんだよぉ。」
「………」
「出来なくてもカオリちゃんをパーティーから外したりしないよ。」
「「「うんうん。」」」
「きゅ!」「にゃ!」「バウ!」ぷるぷる。
「…ぁ、ぁりがとう。」
「あ、お風呂を上がったら、カオリちゃんのステータス見せてよ。私達も見せるから。」
「うん。わかった。」
「カオリちゃんのぉ胸のステータスはBぃ。シホちゃんと同じくぅこれからに期待ぃ。」
シホちゃんが素早くアンナちゃんに近付きおでこにチョップ。
「いたぁい。何するのぉシホちゃん。」
「勝手に言うから。」
「見ればわかるしぃ。」
またシホちゃんがチョップ。
「いたぁい。」
「あはは。アンナちゃんが悪いよ。」
「…事実だしぃ。」
またまたチョップされるアンナちゃん。
クロちゃんに釣られ私も笑う。カオリちゃんも笑っている。皆が笑う。
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