表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

『Monster』

作者: 連雀×柘榴

キャラを確立させる為のテストプレイみたいなやつです。なかなか容姿以外で何かをモデルにしたキャラって描かないので。


なんの話かは内緒。


まあ、それは関係なく見て頂けると幸いです。

こっちはこっち。それはそれ。ですよ。


ヘイ マイマザー。マイ マザー。マイ マザー……。


貴方は人の形をした化物だ。

貴方から生まれた私もきっと化物だ。


形は変わらなくとも、絶対にそう。

この苦しみは貴方から受けた親愛という名の"偽り"が消えぬ限り、一生続くだろう。














眠りに落ちる感覚が好きだった。

目が覚めたあとは絶望に落ちていく。


そんな私を拾い上げてくれたのは、歪んだ彼だった。

だけど、それは私を蝕み終いには全ての責任を私に押し付けた。


それでも私は最後まで憎めなかった。

私は最後まで物だった……。


私は化物ではない。然し、道具ではある。

けれど、


「お前の過去は知らねぇし、よく分かんねぇけど、んな格好してたら凍えんぞ。」


低くよく通る声。ビクリと体が跳ねる。


「聞こえてんのか?人間。」


ああ、この人は人間じゃないのか。

そして、私は人間なのか。


それだけの台詞が、私の中にあるものを壊して消し去った。

私を取り囲んでいた化物を消し去った。


「ありがとう。貴方は誰?」


「あ?そぉだな……化物じゃん?」


少し考えてそう言って自信に満ちた笑みで笑う。



差し出された手は、きっと掴んではいけないものだろう。

差し出した手は、きっと掴まえるだろう。


「お前はまだ自分の咲き方を知らない。お前はただ花弁を広げただけで咲いた気になってんだろ。」


─私、頑張ったのに……そんな風に言われるのもう沢山だ。

何一つ報われなかったのに……。

母さんも、最後まで、褒めてくれなかった。見てくれなかった。


 ボーとする頭に、入ってくるため息の音。


「頑張れとかこれからだとか言うつもりじゃねぇよ。ただ、折角キレイなのに泥だらけじゃねぇかって話してんだよ。」


私は、男の本心が捉えられずにいた。


「知ってるか?花はさ、ミツバチと共存してんだよ。お前のキレイさに引き付けられたミツバチがお前の話を遠くまで運んでくれる。」


掴んだ手を掴み直されて、ゆっくりと引き寄せられる。


「俺もそうだ。」


青い瞳に見つめられて、心臓が跳ねる。私はすぐに目を逸らした。厭な汗が伝う。


「お前の泥を拭いて、お前を連れてってやる。どんなに願っても見ることのできなかったミツバチの景色を見せてやる。」


男の言葉は口説き文句などではなかった。

私の心を弄んで言葉遊びをしていてるだけだ。


だけど。


「死ぬつもりだったんなら拐ってもいいじゃん?幸せにしてやるなんて嘘も、死んだあとで見た夢とでも思え。」


私はもう、彼の瞳から目を逸らすことができなくなっていた。

私と同じ暗く淀んだ光のない目。……だけど、確かに炎が灯っていた。


「たく、こんの花、適当に育てて貶したのはどこのどいつだかな……うまく咲かなかったのはテメェのせいじゃん?」


男は月を見上げていった。

私も、月を見上げる。


「マザー……good night。」





私はそうして、死ぬことよりも消えることを選んだ。

私は今も、夢と現実を行き来していてる。


夢だって構わない。幻想でも構わない。


私は人間だ。

誰かが私を否定する限り、私は生き抜いてやる。


例えそれが地獄でも。

例えそれが現実でも。


私は否定し続ける。そうして藻掻く。彼のように。





「水が足りなくなったら言えよ、風信子。」


私の名前を呼んでくれる。彼はいつも戦っている。

自分と世界と。

それは私も同じだ。


私は、咲き方を教えてもらえなかった。

ただ咲くことが、生き方だと思っていた。

彼はつまらないと笑ったが。


私は人の形のまま彷徨っていた。何年も何年も。

自分の咲き方を忘れたまま。


それでも彼は、私の咲き方を忘れなかった。


もう戻らないと思っていたハチが、戻ってきた。

そして、私の側にいたいと言う。


私もう、道具じゃない。誰かを満たす為に、咲く必要はない。


私は私の為に咲く。

母さんがそれを拒んでも。




だから、私の泥を取り除く手伝いを、どうか……。





やめないで。



「当たり前じゃん?俺飽き性だから保証はできねぇけどな。」


不思議と今までの言葉の何よりも安心できた。





「……生きる意味がないなら、死ぬ意味もねぇから。」


それは、彼がいつか言った言葉だ。

それは、私に纏わり付く責任を灰にした。


「これは、現実だ。」


 あの頃より私の元に来るミツバチは増えた。最初は戸惑ったけど、みんな私の泥を取り除く手伝いをしてくれる。


 だから、私は今日も咲く。


あの日のことを思い出すこともあるけれど、今はただ、この美味しい水を飲んでいたい。



今はただ、彼等の為に咲いていたい。


だから、私の花粉を飛ばして。















 



生きるのに疲れたら、死にたくなったら、

鳥にでも花にでもなってみたらいいんです。


気楽でいいなとか嫉妬するとこもあるかもしれないけど、彼等も過酷な世界を生き抜いてたりするから。それでいて、ああやって生きている。


ほら、まだ生きているのも悪くないと思わない?




……少しでも伝わったらいいな……。



『貴方が咲く手伝いを、私にさせてください。』


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ