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因果の果て  作者: 中田英二
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魔法少女

幸佳は、一息つくと肩の力を抜いて、窓から見える風景を眺めていた。

美しい青空が広がっている。

少しだけ、心と身体が落ち着いたような気がした。

そうやってしばらく頭の中を空っぽにして休んでいると、クラスメイト達の会話が耳に入った。


「ねー、聞いた?また、出たんだって」

「出たって、何が?」

「ほら、あの魔法少女」

「え、マジ?」

「うん。隣のクラスの子が見たんだって!」


魔法少女、という単語が幸佳の心を動かした。


そう、幸佳達の住んでいる町には最近、テレビアニメに出てくる魔法少女のような

奇天烈な格好の少女が、一匹の猫をお供に連れて、どこからか現れる、という奇妙な噂が

流れている。


なんでも、その「魔法少女」は、出会った人々がトラブルに巻き込まれていると、

助けてくれるらしいのだ。その詳細については、幸佳は一切知らないのだが、いずれにせよ

現在、町の住民達の間で密かに注目を集めている謎の人物だった。

正体不明の魔法少女。

そんなものがもし、本当にいるのだとしたら。

幸佳は切実に想う。

まず、あの「暴力の鬼」を抹殺してほしい。自分達を苦しめている邪悪の化身をこの世から

追放してほしい。

恐らく、これは五年四組の生徒全員が願っている事だろう。

幸佳の気持ちをよそに、クラスメイト達の会話は続く。

「ね、ゆかりちゃんはどう思う?」

「えっ?ええ?わ、私?」

いきなり話を振られた赤星ゆかりは、何故か随分と動揺したようだった。

「うん。魔法少女っていうのが本当にいると思うか、どうか」

「う、う~ん・・・どうなんだろうねー、何とも言えないよね」

「もし、魔法がホントに存在するんなら、楽しいよね!」

「そ、そうだね、うん。私もそう思うよ」

いつも明朗快活なゆかりにしては、珍しくこの時は歯切れが悪かった。その事をクラスメイト達も

疑問に思ったらしく、

「何か、ゆかりちゃん、いつもと違うね」

「え?そ、そう?」

「そーだよ・・・あっ、もしかしてぇ、ゆかりちゃんが、あの魔法少女だったりするのかな?」

「な、な、何言ってんの?違う、絶対違うよ!私は、そんな!」

「その態度、アヤシイなー、さん」

クラスメイトの女子達二、三人が、ゆかりに抱きついてくすぐりながら「尋問」を開始した。

「わ、わたし、はふっ!や、やめっ、あ、何にも、はへっ!知らな、ひゃひっ」

「ほらほら、自白しなさい、ゆかりちゃん!さん、ホントに魔法少女なの?」

「違う、私、あひっ、魔法少女なんかじゃ!ひゃふっ、ない」

精緻なくすぐりに耐えきれず、目に涙を滲ませながら笑いだしたゆかりへの尋問は

数分ほど続いたが、結局、ゆかりは「知らない」の一点張りだった。その後、ゆかりをこれ以上

いじるのは、可愛そうなので取り敢えず止めようと思ったのか、おしゃべりなクラスメイト達は

話題を変えた。

ゆかりの妙な態度が気になったけれど、無闇に詮索しても仕方がない。ここで、気分転換のために

外へ出よう、と思い幸佳は教室を出た。そして廊下を歩き、階段を降り、職員室へ向かう通路に出た。

足が竦んだ。

職員室には、真山がいる可能性が高い。あんなのと、休み時間中にまで、会いたくない。

そう思った幸佳は回れ右をして引き返そうとした。

と、その時。

「きゃっ!」

甘く澄んだ声が頭上から降ってきた。同時に、幸佳の顔が何か柔らかく弾力のあるものにぶつかり、その心地よい感触に一瞬だけ呆けた。次にその「何か」に、ぽよん、と弾き返され、幸佳は廊下に尻餅をついてしまった。

「はわっ!」

素っ頓狂な声を上げた幸佳の間抜けな姿を見て、幸佳とぶつかった人物は慌てて手を差し伸べた。

「あら、ごめんなさい!大丈夫?柴田さん」

その綺麗な声の主を見て、幸佳は自分の顔が熱くなるのを感じた。そして呟いた。

「か、かえで先生・・・」

そう、幸佳と正面衝突した人物は、一色小学校教諭・白石しらいしかえで先生だった。

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