PHANTOM
中田英二と申します。
あまりにも悪趣味で、くだらなくて、幼稚な駄文の塊のような作品ですが、気が向いたら
読んでやってください。
ここに、一人の少女がいる。
彼女は、自分の容姿が同年代の他の少女達と比べて、かなり美しいものだということを
正確に理解している人間だった。
自分の容姿を駆使して金を稼げないか、そう思案した彼女が辿り着いた答は、売春するという単純で
分かり易いものだった。
彼女の人見知りしない性格や抜きん出て美しい容姿に惹きつけられる浅ましく愚かなオスどもは大勢
この世に存在しており、彼女は数ヶ月で十代の少女が所有するには多すぎるほどの大金を獲得していた。
金持ちになれたのだ。
彼女の羽振りがやたら良かったので、その噂を耳にした一人の男が彼女に接触し
一つの提案を持ち掛けてきた。
株をやらないか、と。
好奇心と若さゆえの軽率さに任せて彼女は、彼の提案に乗った。そして、更なる大金を
手に入れたため、気を良くして株にひとしきり熱中していたら、その銘柄はあっという間に
暴落してしまい、トータルとしては大幅なマイナスになってしまったのだ。
敗北者になってしまったのだ。
彼と彼女は大喧嘩し、決別した。
激しく怒りながら、彼女は仕方なく、自分の取り柄である美貌を駆使して
中断していた売春業を再スタートした。その努力の甲斐あって、どうにか金銭面で持ち直して
一安心したのだったが、ずっと避妊を怠っていた彼女は遂に重大なミスをしでかした。
母親になってしまったのだ。
関係を持った客の男達の内の、誰かの子を妊娠してしまったのである。父親が誰なのかは分からない。
何故なら、彼女がセックスした男達の数があまりにも多すぎて、見当もつかなかったからだ。
極端に放任主義で、無関心な彼女の実家の連中は、別居している娘の所業の数々について
全く把握しておらず、彼女が株で大損していたことも、売春して妊娠してしまい
困っていることすらも知らなかった。
普通なら、病院に行って堕胎手術を受ける所なのだが、重度の拝金主義である彼女は
医者どもに払う金を惜しんでおり、また株で大失敗した経験から、自分の金を失うのは絶対嫌だと
思っており、どうにかして自分の胎内にある邪魔者を無料で除去できないかと
そればっかり考えており、やがて堕胎できない時期を迎えてしまい、遂に医者に頼らずに
自分で処理することにしたのだった。
自宅からも学校からも遠く遠く離れた公園の、草むらの中で。
自分のおかげで楽しい思いをしたくせに、自分にこんな厄介な荷物を押し付けた、どこかにいる父親を呪いながら、少女は地獄のような苦痛に耐えて嬰児を産み落とす。
一応、少女は出産した我が子の性別を確認した。
女の子だった。
そして母親となった少女は、生まれて間もない娘をあっさりと殺害した。
ハイヒールを履いた足、その踵の部分で容赦無く踏みつぶしたのだ。全力で何度も何度も何度も。
まるで、無邪気な子供が遊び半分で、足下の蟻達を蹂躙し圧殺していくかのように。
娘の絶叫のような産声は、まもなく途絶えた。異様な音と共に。
嬰児の返り血が付着したハイヒールは重圧と衝撃に耐えられず踵の部分が折れてしまい、彼女はそれを
ゴミ箱に捨てた。息絶えた娘の、原型すらとどめていない肉塊となった遺体も、ついでにゴミ箱に捨てた。
ただの少女から金持ち、金持ちから敗北者、敗北者から母親、そして母親から嬰児殺しの殺人犯へと
次々に早変わりした彼女は、晴れ晴れとした気分で一息ついた。
あー、スッキリした、と心の底から思った。実に気持ち良かった。
そして、たくましく生きている自分の、電光石火の行動を肯定し、賢明な己を誇る。
自分は、強い女だ!と。
他者に対する愛、というものを一片たりとも持ち合わせていない、冷酷な鬼畜の如き、恐るべき少女。
伊藤愛。
皮肉なことに、それが彼女の名前だった。
物語はここから始まる。
この作品には、主人公が三人います。
伊藤愛、という女性キャラクターは、その内の一人です。
彼女が本格的に活躍(?)して大暴れするのは、しばらく後の事ですが
どうか、それまで付き合ってやってください。