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無法地帯キンダーガーデン  作者: &むう
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第一話 鋼の肉体を持つ園児

ギャグアクション格闘バトル小説らしいです。

先の方になると下ネタが固まってでてくるので注意してください。

現代格闘技風なバトルシーンが出たりします(?)


カテゴリに幼稚園児はないのか……

少女少年にチェック入れようかどうしようか

一応学園には入れてます(TOT)

 とある街。高層マンションが並ぶ中、ぽっかりと余り物のように立つ幼稚園。そこから、人々の耳をつらぬくような子供の悲鳴が響いてきた。幼稚園の庭で、一人の園児が女の子に仰向けに担ぎあげられ、背中をくの字にへし曲げられていたのだ。

「ぎえええええええっ」

 金に染めた髪をトゲトゲに立ているその園児は、時が立つともに声量が上がっていった。

残忍な処刑は他の園児達に公開されていた。野次馬園児が集まり、彼の心配をしている。

「今度は死ぬんじゃないか」

「後遺症とか残るかも知れないよ」

「大丈夫だぜ。パイルドライバー(相手を逆さまにし、体重をかけて頭から地面に落とす技) を食らったときも、正晴はタンコブだけですんだし」

 園児達は被技者、正晴の頑丈さに期待していたが、その大きな悲鳴は「ぎゃああ」から「びゃあああ」、「じびゅゃあああ」と徐々に凄惨になっていく。園児達に緊張が走るようになると、ようやく少女は正晴を投げ捨てて、言った。

「今日はこのぐらいで勘弁してやるけど、次やったら背骨をへし折って、この幼稚園の屋根に 輝くシャチホコにしてやるよ」


 正晴はぴくりとも動かない。周りの園児達はがやがやからひそひそ話になった。それは午前八時前のさくら幼稚園、園庭における出来事であった。



 その約三十分後の園長室内――――


「あー、君が新任の先生かね。まあ適当によろしく」

「は、はい! よろしくお願いします!」

 この危険な幼稚園に新しくやってきた保育士、石津早織。まっすぐな長い黒髪と大きな胸が母性を感じさせる美人だが、ここの悲惨さを知るものならば誰もに場違いな職場に来たと思われるだろう。

「ま、何日持つかわからないが適当に頑張ってくれ。私はこれからお昼寝タイムにするから」

 そういうと園長は机に突っ伏してすぐさま、ぐおー、といびきをかき始めた。



 この「さくら幼稚園」は明治時代から続く名門幼稚園を自称している。周辺のベッドタウン化が進み、マンションだらけのコンクリート・ジャングルに埋もれてしまったが、子供をのびのびかつ知性あふれるよう育てることをモットーにしている。


 新任保育士・石津早織は大手製薬会社の社長令嬢であるのだが、予ねてからの夢であった保育士になり、父親の親友が園長であるこの幼稚園に推薦されてきたのだ。


 早織先生は廊下に待たせていた男の子に手を差し伸べた。

「行きましょう。修くん」

 早織先生の赴任と同時に新しく幼稚園に転園してきた中村修だ。恥ずかしがっているのか、彼は無言のままだ。しかし、早織先生が手をつないで歩き出すとついてきた。




 早織先生の担当する教室。

「私は今日からみんなの先生になる石津早織です。石津先生って呼んでね!」

「さおりせんせー!」

「さおりせんせ、さおりせんせー!」

「名前の方が呼びやすいのかな……」

 早織先生はそう呟きながら、席を立って暖かく迎えてくれる園児に答えていた。横に立っていた修は表情一つ変えず、先生の横に立っていた。次に、早織先生は彼の紹介をしようとした。

「この子は今日から新しくみんなのお友達になる……」


「日岳ッ!!」

 突然教室の扉が開いて金髪を逆立てたツンツン頭の男の子が入ってきた。さくら幼稚園の制服は着ていない。先ほど背骨を折られかけた男子園児、田中正晴だ。

「うちの糞保険医の話によると! 俺の背骨にヒビが入ってるそうじゃねえか! どうしてくれるんじゃこの筋肉ダルマ! これじゃあ一生車椅子生活だぜ!」


 そう言いながら、彼は一人の園児、アルゼンチンバックブリーカーをかけたあの園児が座る席へずんずんと力強く歩いていった。早織先生はこの機会な状況に呆然としていた。他の園児達はひそひそ話を始める。

「あのとげとげ頭、やっぱり生きてたよ」

「死んで欲しかったのに」

「また給食と牛乳キャップかつあげされちゃうよ」


「ばかじゃねーの。背骨にひびが入ってたらそんなにずんずん歩けるわけないだろ」

 正晴に睨まれながら真っ当な突っ込みをした少女、日岳美幸は立ち上がった。二人の距離が縮まると共に、このような場に不慣れな早織先生も、危険な空気を感じた。

「あの、席について! 君、お名前は?」

「うるせえ!」

 しゅっ、という音と共に早織先生の右の頬をかすめ、後ろの黒板に何か刺さった。ナイフだった。

「――――!」

 右の頬の焼けるような痛みが伝わるに連れ、早織先生は恐怖を感じ始めた。


「なんてことすんのよ!」

 突如今まで目を丸くして眺めているだけだった、ポニーテールの女の子が立ち上がって構えた。

「ああ!? てめえも刺されたいのか?」

 正晴はそういって懐に手を入れ、二本目を手に取った。

「あ、危ない……」

 早織先生の声は恐怖でか細くなり、届かない。しかし他の園児たちは緊張している子も多いが、大体は壁際に避難して落ち着いてる。一方で、ポニーテールの女の子、木崎ありさは正晴のナイフを見て固まってしまった。

「ヒャアヒャヒャヒャアア! 怪我したくなかったら動くんじゃねえぞ! 俺様は今から日岳の顔をこのナイフでドブスに整形してやる! 今でも十分ブスだけどな!」

「そんなナイフで切れるのはカステラぐらいだぜ正晴」

 ナイフを光らせる正晴に対して日岳美幸はひるむ様子もなかった。

「んだと!? じゃあてめえの顔で試し切りさせろ!」

 正晴は美幸に向かって走り出し、滑らせるように手からナイフを発射した。が、同時に美幸は自慢の豪腕で椅子を片手で投げ、ナイフをはじいた。

「ぶぎゃっ」

 美幸の投げた椅子がぶつかり、正晴は情けない声を上げた。美幸は追い討ちをかけるために走り出す。正晴が目を開けたときに見た物は、美幸の巨大な掌だったに違いない。美幸は正晴の頭をつかんで、頭突き、膝蹴り、チョップの嵐を浴びせ、首を右脇に引き寄せ、左手で頭抑えて前方に飛び上がった。


――――二人の身体が宙に浮く


「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 園児達から歓声があがる。二人はドシンと音を立てて床に落下していた。美幸はなお正晴の頭を掴み、無理やり立たせる。後頭部から落ちた正晴はフラフラだった。

「また先生を辞めさせる気? これで三人目なんだけど」

 低い声でそういって頭を揺り動かす。正晴は答えられない。

「ちょ、ちょっと……」

 早織先生は腰を抜かしていたが、なんとか立ち上がろうとする。

「ありさ」

 そういって美幸はありさに目配せした。ありさは意を解して、大きなくまちゃんのアップリケがついた自分のカバンを開け、何かを探し始めた。そのあと美幸はよろよろ立ち上がろうとする早織先生の元に歩み寄った。




 恐怖の渦にいた早織先生に新たな衝撃が走る。

「先生、大丈夫?」

「あ、あ……あふっ!」

 早織先生は美幸の姿を間近に見てまた腰が抜けそうになった。


――筋肉!


 まさに筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉!


 制服の肩の部分が盛り上がっている。

 大根もびっくりな太さのフトモモ。

 はちきれそうな制服の袖。


――そして胸! 幼稚園児にしてもう胸が膨らんでいるというのか!

 しかし一見して分かる。それは所謂乳房ではない! それは胸筋! 筋肉! マッスル!


 美幸の威圧感溢れる……というより異様なマッスルを間近で見て、早織先生は声にならない悲鳴を上げてしまった。

「しっかりしてよ。私達の先生でしょ?」

 そうだ、私は幼稚園の先生、しっかりしなきゃ!

 早織先生がしっかり立ち上がって見れば、美幸も園児の中では大きい方とはいえ、ちびっ子の一人だ。そして早織先生はそのちびっ子の向こうにまたも驚愕の光景を見る。

「あんた、まだナイフ隠してんじゃないの?」

 ありさがのびてしまったを脱がせてズル剥けにしていたのだ。便乗して彼の乳首にマジックで毛を書いたり、顔にアホと書いたり、オマタにゾウさんを描いている園児もいる。

「て、てめーら覚えてろよ!」

「黙ってなさい!」

「ぎゅぽう!」

 正晴はようやく気がついたのだが、ありさにすぐさま殴られて再び眠りについたのだった。

「あ、あんな乱暴しちゃだめだよ……」

 早織先生は力なく注意した。

「あんなんじゃ全然足りないよあいつには」

「でも……」

 横から声がした。

「先生怪我してるよ」

 隣に立っていた修にそう言われて、早織先生はナイフが作った右の頬の傷を撫でてみた。指にべったり血がついた。血は肩のところまで流れ出して止まっていた。次に修を見返すと、心配そうな顔でこちらを見ている。

「私は平気だよ。すぐ治るよ、こんなの。修くんは大丈夫?」

 恐がっている様子はない。修は横を向いて美幸と目を合わせた。

「……?」

 美幸は一瞬怪訝な表情をしたが、すぐに笑顔になった。

「今日からここに通うんだよね? 初めまして! 私はたんぽぽ組の組長、日岳美幸。うちは危ない人ばっかりだけどよろしくね」

 修も笑顔になった。早織先生もなんとか笑顔になった。他の園児たちも笑顔になっているが、それは正晴の醜態か、いつもは鬼のような美幸が笑顔で自己紹介しているのが可笑しいのだ。一方ありさは正晴をカバンから出した縄でぐるぐる巻きにして、教室の庭側の扉から外に引きずりだしていった。




「この幼稚園、いつもこうなんですか?」

「いつもこうですよ。だから私がいるんです」

 早織先生はやけににやけた白衣のおっさんに絆創膏を貼って貰っていた。

 さくら幼稚園は街中の幼稚園にしては割と大きいが、特徴的なのは保健室。保健室などない幼稚園もあるが、ここはちゃんと保健医がいる上、子供用ベッドが二十台もある。

「これでも足りませんねえ。クラスひとつふたつ全滅する日もありますからね」


 あれから、早織先生は修の紹介を無事終わらせ、みんなと一緒に歌を歌った。かえるの歌、大きな古時計など。以前聞いていたイメージより皆ずっと真面目だった。足を開いて胸を張り、応援団のように声を張り上げて歌う園児多かったことには驚いたが。

 正晴は庭の倉庫にぶちこまれたらしい。生命を脅かされた早織先生は最早文句をいえなかったが、小さい頃から優しい保母さんにあこがれていたため、暴力で問題児を押さえつけることに納得できないでいた。


 早織先生が保健室から出ると、美幸が待ち構えていた。

「見回りに行くなら私と一緒の方が良い。休み時間は戦争だよ」

 幼稚園児に身を守ってもらうなんて。

「心配してくれるのは嬉しいけど、みゆきちゃんはみんなと遊ばなくていいの?」

「私が遊んでいたら皆が遊べなくなるじゃない」

「……ねえ、美幸ちゃんはいったい……?」

「私はさくら幼稚園第八十七代生徒会長日岳美幸。園児達の生命と遊び場を守ることが私の使命さ」

 ヒーローごっこの一種かと早織先生は考えたが、先んじて美幸が答えた。

「遊びでやってんじゃないんだよ。つまり、さくら幼稚園生徒会は歴代園長公認の組織。この幼稚園には昔から園児間の問題は園児同士で解決する習慣がある。生徒会はその中心なんだ」




 生徒会の仕事は園児同士の揉め事の解決や不良園児の始末、園内の戦闘による破損物を把握することが主である。ようするに、さくら幼稚園の園児達は凶暴すぎるので安全のために保育士が直接指導せずに済ませるための仕組みなのだ。なんのための保育士だか。

 これが行き過ぎて、生徒会の最近の活動は園長により雑用係の役も担うようになった。そのこともあって、四月の時点で十数人いた会員は現在ほとんど活動していない。いまだにしつこく不良園児を追い回しているのはこの日岳美幸と、




「ありさちゃん?」

「そう。あいつ」

「でも、やっぱり危ないよ。ナイフ持ってる子とかいたら、おまわりさんに言ったほうが……」

「警察呼んでどうにかなるならこんな幼稚園とっくにつぶれてるよ! あの糞ジジイ(園長)のやつ警察と何か繋がりがあるんだよ! 前警察呼んでみたらなぜか蕎麦屋がピザ300個持ってきたしね!」

「うーん……」

「私は40個食べたけどね」


 結局早織先生は忠告通り美幸と園内を見回ることにした。普段彼女がどんなことをしているのか気になったからだ。


 さくら幼稚園の敷地はそれほど広くはなかった。半分近くがマンションの影に隠れて暗くなっているのだが、すぐに全体を見渡せた。

「喧嘩とか、ないみたいだね」

「今のところはね」

 美幸は自分達の様子を窺っている男の子二人を観察していたが、それを止めて早織先生に教室にいくことを提案した。




「修くん。一緒に遊ぼう?」

 教室ではありさが溶け込めないでいる修に声をかけていた。それでも修は黙っている。うつむいている彼に、ありさは顔近づけて話しかけた。

「修くんは何が好きなの?」

「……メイトマン」


 友情戦隊メイトマンは子供に大人気の特撮ヒーローだ。彼等は悪のチャリンコ団と戦う正義の五人組だが、普段は全員ニートや引きこもりなどダメ人間なので、その手の人々にも大人気だ。

「じゃあ、メイトマンごっこしよ!」

 修は女の子が特撮ヒーローごっこをすると言い出したことが意外だったようだ。そのとき早織先生と美幸が外から帰って来た。

「良かった修くん、早速お友達ができたのね。おとなしそうな子だったから不安だったけど。」

「ありさは気が利くからね」

「じゃあ、メイトマンごっこしよ!」

 早織先生と美幸は修くんの様子をみて会話している。

「私も毎週みてるんだよ!外にいってやろう!」

 ありさは、しゅっ、しゅっ、とシャドーボクシングをしてみせた。そして修の腕を掴むと、

驚いて叫んだ。

「わっ、腕太い!!」

その声を聞いて教室にいた園児たちが修に注目する。

「ねえ、みゆちゃん、修くんねー」

 しかし、美幸はありさの言葉を遮り、窓の方を向いた。

「ありさ、あの二人見てて」

 ありさは不思議な顔をしたが、すぐに立ち上がった。

「あー。はいはい、分かりました。ごめん、修くん。またあとでね。」

 ありさはロッカーから木の棒を取り出して、外に出ていった。

「心配しなくてもありさは無闇に暴れたりしないよ」

 怪訝な顔している早織先生に美幸はそういった。

「でも、修くん1人にしちゃ可哀想じゃない。」

「私がいるでしょ?」

 美幸が口を尖らせた。修も答えた。

「いいよ。僕もちょうど話したいことがあって。」

 修は美幸の膨らんだ胸を観察していた。

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