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とある転生者、殺されそうになったお嬢様を助けるためモブキャラ執事をやめることにした-4-

 ☆



 お嬢様は目を丸くしている。

 かりにも令嬢なのだからもう少し慎ましい表情をしてもらいたい。



「それならアナタはなんだって言うの?」

「秘密、といったらお嬢様は怒ります?」

「ぶっ殺すわよ」



 物騒な言葉を言わないで欲しい。



「はは、お嬢様に殺されるのは嫌ですね」



 笑っていた俺をめがけて一直線に閃光が走った。

 聖なる光。

 聖剣が持つ力。

 それに酷似した能力。

 それが誰が放ったものか確認せずに俺は右手でそれを弾いた。


「!?なっ・・・・聖剣の光を弾いた!?」



 マルス様━━マルスは聖剣をふり下ろした格好で目を見開く。



「あいにくと俺はそういった力はきかないんですよ」

「悪魔の下僕なのに?」



 本気でそう思っているならマルスもすくえない頭の持ち主か。



「マルス様。俺は悪魔の下僕ではありませんよ」

「悪魔を召喚しようとした娘に仕える貴様の言葉を信じられるか!」



 この学園のヤツらすべてが俺を敵視している。



「お嬢様。よくこんな学園に通ってましたね。あれらは根本的にお嬢様と違いますよ」

「私もよく我慢していたと思うわ」



 ここの生徒は上級貴族などの息子や娘、世間知らずもいいところだ。

 誰が自分たちの脅威・・なのか、分かっていない。

 俺はお嬢様を抱えたまま地上におりた。

 マルスたちは得物を構えても警戒してか、襲ってこない。

 俺は唇の両断をつり上げた。



「何がおかしい?」

「マルス様。アナタは紅蘭お嬢様が魔に魅いられているみたいなことを言いましたよね?」

「それがどうした?」

「果たして魔に隷属しているのはどちらでしょうかね?」

「マルス様を侮辱するな!」



 マルスの部下が飛びかかってきた。

 聖剣の類いではないがなかなか業物の剣だ。

 鉄くらいなら簡単に斬れそうである。

 が、俺を斬るには粗末すぎる。

 俺に届く前にマルスの部下の剣があっさりとへし折れた。

 不可視の防壁━━第3者が見、感じることもできない壁。


 実際、何が起こったのか理解しているヤツはいないだろう。



「関係ないヤツは引っ込め」



 言葉にに魔力を上乗せするとマルスの部下は吹き飛んだ。

 それにしてもあまり力をこめてないんだからマルスの部下Aよ、少しは耐えてくれよ。



 ☆



「何を言うかと思えば俺が魔に魅いられている?俺はこの国を守護する騎士━━聖騎士だ。たとえ魔眼の持ち主がいようと惑わされることはない」

「やっぱり自覚なしか。自覚がないからこそ自分が何を仕出かしたことさえ分からない」

「何を言って」

「よく思い出してください。アナタが何をしたのか」

「俺は何も」



 そう答えるマルスは表情を歪め、頭に手をやった。



「マルス様だけではない。ここにいる連中も」



 俺が見回すと生徒や教師、マルスの部下も険しい顔になった。

 心当たりがあるのだろう、ここにいる全員が。

 学園に通いながらもお嬢様だけが知らない事実を。



「俺たちが何をしたと言う?」

「マルス様。

 今、この国が混乱していることを知ってますよね?」

「何者かが内乱をおこし、総騎士団長━━俺の父上は何者かの手によって負傷した」



 マルスは苦虫を噛んだような顔をした。

 怒りがこみ上げてきたのかも知れない。



「煉。内乱があったなんてはじめて知ったわよ?」

「一瞬で鎮圧されたらしいですから知らなくても当然ですよ。国は傷ついてませんし、秘密裏に処理されたようですが首謀者は逃亡した」


 俺の言葉にお嬢様は眉をひそめてあたりを見回す。

 お嬢様も感じたようだ。

 まわりからの視線に殺意があることに。



「それと俺たちのことと何の関係がある?」

「逃亡した首謀者とその部下たちはある場所に潜伏していたんですよ。この国においてもっとも安全な場所。まさか堂々と━━なんて誰も思わないでしょうね。一般人にも開放され、あらゆる貴族も出入り自由。まさにうってつけの場所だから」

「だから何が言いたい?」



 俺もお嬢様も気づいた。

 マルスの苛立った声と表情に。

 最後まで告げなくても自分が何をしたのか━━漠然と胸中に浮かんだのかもしれない。



「その首謀者はアナタだ」

「━━なっ━━」



 驚いた声をもらしたのはお嬢様だ。

 俺の顔を見て震えている。

 まあ、それが当然の反応だ。

 マルスといえば国の守護者の立場にいる存在だ。

 それが国を転覆、そんな大それはことをするとは思えない。

 それに、そんなことをしても意味はない。

 マルスはこの国での地位は築いている。


 お嬢様は素直に驚愕しているようだが、この学園の生徒や教師はまったく衝撃を受けてないようだった。

 マルスの部下の騎士はわずかな動揺を見せ、



「そんなデタラメを誰が信じるか!」



 騎士剣を引き抜き、俺を睨んだ。



「煉。それは本当なの?」

「俺はお嬢様に嘘はつきませんよ」

「嘘だらけのくせに」



 お嬢様が文句を言ってきた。



「俺が首謀者。はは・・・・冗談も休みやすみに言えよ、紅蘭の召し使い」

「冗談かどうかはマルス様も分かってますよね?

 残っているはずた。アナタの剣が誰を斬ったのか。それにアナタの持つ聖剣━━それは今も聖剣だと思っているのか?」

「何を━━」


 そこでマルスは言葉を途切れさせた。

 自分が手にしている得物を見、ゆっくりと目を見開く。

 聖騎士の称号を持つヤツの聖剣は白銀の光沢を放っている。

 しかし今のマルスのそれは・・・・



「赤い光?まさか━━」



 赤い光の刀身が意味するものは誰もが知っている。



「魔に魅いられたのはお嬢様ではなく、アンタだ。マガイモノの黒騎士」



 俺が指摘するとマルスは薄い笑みを浮かべた。

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