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とある転生者、殺されそうになったお嬢様を助けるためモブキャラ執事をやめることにした-1-

 ☆



 それはいわゆる乙女ゲーである。


 ━━『永久とわ彼方かなた



 ありふれた逆ハーレムのゲームだ。

 俺は中2の妹がやる【それ】をいつもそばで見ていた。

 主人公である乙女が逆ハーレムを構成し、八方美人を駆使して攻略対象である守護騎士たちを籠絡させて、玉の輿にのる物語。

 そのゲームには当然、主人公の乙女のライバルでもある令嬢が登場する。

 彼女は一途で守護騎士の一人を想っていていつも主人公の乙女に食って掛かっていた。

 時には意地悪をしたり、よからぬ噂を流したり。

 その行為のすべては慕っている守護騎士に振り向いてもらいたいがために。

 だが行きすぎた行動が彼女の首をしめることになる。

 愛しい守護騎士が主人公の乙女のことが好きになり、婚約していた令嬢の彼女との婚約破棄を告げた。

 一方的に。

 彼女の行いに怒り、激しく罵倒したのだ。

 それに絶望した令嬢の彼女は悪魔と契約し、守護騎士が護っている王都を混乱させた。

 しかし王都の中を恐怖に陥れた悪魔は守護騎士に倒され、悪魔の主人である令嬢の彼女を守護騎士たちは拘束した。

 そして守護騎士たちは彼女を死刑台へと送ったのである。


 その乙女ゲーを妹は笑いながらやっているので令嬢の彼女より妹のほうが恐ろしく思えた。

 そして彼女に同情した。

 主人公の乙女に出会わなければ、守護騎士に恋心を抱かなければ令嬢の彼女はバッドエンディングを迎えなくてもよかったはずた。


 俺は主人公の乙女よりも令嬢の彼女に感情移入をしてしまった。

 願うことなら、彼女に祝福を。


 乙女ゲーの彼女のバッドエンディングはループだ。

 主人公の乙女がとっかえひっかえ攻略対象である守護騎士をかえても、令嬢の彼女の運命がかわるわけはない。

 だが、それはゲームの中でだ。

 もしもから何らかの力をくわえることができれば、彼女の運命はいくらか改善されるかもしれない。


 悪役令嬢・・・・そう呼ばれる彼女の名前は紅蘭こうらん


 紅蘭が悪魔の力によって王国転覆寸前まで引き起こした事件。

 それが冤罪・・によって起こった事件だということは続編で知ることになる。


 ☆



 王都にあるアマミ学園の体育館にて。

 全校生徒たちが見つめる前で、紅蘭は憎々しげに一人の少女を、そして王都を守護する立場にある五人の騎士を睨んだ。

 彼女が慕っていた守護騎士が平民の娘を庇うようにし、いきなり婚約破棄をしてきたからだ。

 親同士が決めたこととはいえ紅蘭は結婚するつもりでいたのだが彼の気持ちは自分にはなかった。

 長い金髪を揺らし、紅蘭は血を吐くような感じで、


「アタシは許さないわよ。アンタたちのことを。アタシを裏切った学園の連中を、アタシをはめ辱しめた奴らも。みんな殺してやるから」


 それだけ叫んで、紅蘭は王都から出た。

 激しい恨みを抱いたまま。



 ☆


れん!煉!?いないの!?」



 ヒステリックな呼び声に俺はゆっくりと目を開けた。

 ここはとある屋敷の中庭だ。

 ぽかぽか陽気で俺は寝ていたが大きな声で覚醒・・した。

 俺の名前は煉。

 いわゆる転生者というやつだ。

 前世の記憶はない。

 ただわかっているのだ。


 俺は何のためにこの世界に転生したのか。



「煉!いるなら返事をしなさい!」

「はい。紅蘭お嬢様。ここにいますよ」



 俺が返事をすると紅蘭お嬢様が顔を出した。

 最近あったのは二ヶ月前だ。

 その時より紅蘭お嬢様は痩せているように見えた。



「いるならさっさと返事をしなさい」

「申し訳ありません」

「敬語はなし。お嬢様もつけなくていい。アタシとアナタは幼馴染みなんだから」

「ですが俺は使用人ですから」

「使用人が昼寝をしてていいの?」

「ついうといとと」


 俺は頬を掻いた。

 俺は紅蘭お嬢様の幼なじみだ。

 俺の家は代々お嬢様の家に仕えており、俺はお嬢様の執事をつとめている。



「それよりお嬢様。学園はどうしたのです?」

「辞めた」

「えっ?」

「退学したのよ! 文句ある!?」

「文句はありませんが、学園で何かありました?」

「……」

「もしかしてマルス様と?」

「言うな、馬鹿!」


 足を蹴られた。


「確か煉は魔法使いよね?」

「まあ。北の魔女に少しばかり魔法を扱う力を教えてもらいましたが」

「その魔法に悪魔召喚というものはある?」

「ありますが、何をするつもりです? まさかマルス様をふくめて裏切った奴等に復讐を?」

「!? どうして知っているの!?」

「俺は魔法使いですよ? お嬢様のことはなんでも知ってます」



 このあとの結末も。



「煉はアタシのストーカー?」

「違います」

「まあいいわ。煉はアタシの幼馴染みであり使用人よね? そして執事」

「お嬢様がそう認めているなら」

「そう。なら命令するわ。煉、アタシのために悪魔を召喚しなさい!」



 紅蘭お嬢様は俺を見て強く命令してきた。

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