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1.なんでもない日常

※この作品は「WOAへようこそ! ~殺し屋と女子高生」の主人公を男子高校生に置き換えたバージョンです。


 時計が午前八時を指すと同時に小さなデジタル音が流れる。部屋の電子機器がスリープモードから復帰する合図だ。

 シーツ越しに部屋の中が明るくなってきたのがわかる。出窓にはめ込まれた真っ黒にしか見えない偏光ガラスが透明度を上げたようだ。スクリーンカーテンが巻き上げられていく音。眩しい光が差し込んでくる。

『祐介、腹減った』

 部屋の中で飼ってるデジタルペット――通称ディグトの黒い犬がベッドに飛び乗ってきた。

「おまえの飯は電気だろーが。適当に充電しとけよぉ」

『もう八時だ。飯の時間だ』

「うがっ、もうそんな時間かよっ」

 がばっと起き上がる。ベッドの上に放ったままの制服を慌てて着こむと、寝間着を部屋の隅のかごに放り込む。

「じいちゃんは?」

『もう下でご飯ご飯食べてる』

「やっべ、怒られる」

 じいちゃんより先に起きないとお小言食らうんだよなぁ。昼飯抜きの計にされることもあるし。

 生徒手帳兼教科書の九インチタブレットPC――通称POTEP、呼びにくいからポテって皆呼んでる――をつかむと上着のポケットに放り込む。

 階段を降りるとテレビを見ながらじいちゃんはもう食後のお茶をすすっていた。あちゃー。

「じいちゃん、おはよう」

「祐介、今何時じゃと思っとる」

 あーやっぱり、お小言モード。

「許してくれよぉ。昨日の山登りが響いて、クタクタなんだよぉ」

「何を言うか、若いモンが。こんくらいで音を上げてどうする。わしの若いころはのう……」

 入ったーっ、わしの若いころモード。ああ、今日も朝飯抜き確定。

 七十を越えたじいちゃんはピンピンしてる。毎日の鍛錬の賜物ぢゃと耳にタコが出来るくらい聞かされてる。

「さて、わしゃもう行くぞ」

「あ、じいちゃん、おれの昼飯……」

「そこにあるじゃろ」

 食卓の上には五百円玉が一個。これじゃ育ち盛りの高校男子にゃ足らないって。今どき調理パンがいくらするのか知ってんのかよっ。あー、また自腹かよ。

「足りるかよっ!」

「寝坊したのが悪いんぢゃ。とっとと行け、バカモンが」

「ちぇっ」

 五百円玉でもないよりマシだ。引っ掴むと玄関に向かった。

「ああ、そうじゃ、祐介。昨日採取した花、おまえも見たかろう? 学校終わったら研究所に来い。門番には話つけておくからの」

「へいへい。んじゃ帰りに寄るよ。行ってきまーす」

「気をつけての」

 俺は自転車を引っ張りだすといつもの道を走りだした。


 街頭モニタからは宇宙生命体の保護条約についてのニュースが流れてくる。

 宇宙人が地球にやってきたのは今から十三年前。俺はまだ四歳だったからなんにも覚えてねえけど、じいちゃんとこに預けられたのはちょうどその頃らしい。まだばあちゃんも生きてたし、今みたいに朝飯に困ることはなかったよな。

 それから、地球政府とかいうのができて、地球には多くの宇宙人がやってくるようになった。観光目当ての奴もいれば、商売に来る奴もいる。うちの隣にもアルファウリから移住してきたって人が住んでるし、町中でも時々それらしい観光客を見かける。

 もちろん、それだけじゃない。悪い宇宙人もいっぱいいる。いわゆる宇宙マフィアとか海賊とか、密輸業者とか。

 宇宙人による被害が出始めてから、地球政府は「宇宙生命体の保護条約」ってもんの批准を検討し始めた。

 これ、宇宙の生命体連合とかって組織が政府に提唱してる条約で、なんてったっけ。WOA? 要するにこの条約を批准している種族や星系に属する生命体同士の犯罪を取り締まるための基礎になる条約だそうだ。

 とはいえ、地球政府も一枚岩じゃねえ。宇宙人が来る前後から関係だとか宗教的うんたらかんたらで、すんなり行かない。オヤジもお袋もそれ関係の仕事らしくて、俺をじいちゃんに預けてからほとんど帰ってこない。

 生きてるのはたまにメールが来るから知ってるんだけどさ。今ごろどこでどうしてんだか。

 

※本作品は実験投稿となります。主人公が女性か男性かを入れ替えて、主なストーリーはそのままで作っていこうかと思っています。

よければ両作品をお読みいただき、ご意見いただけますと幸いです。

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