君と6月の雨
拝啓、ワタシヘ
窓を叩く雨垂れを
指でなぞりながら。
草臥れた石行燈はただ雨音を
嫌い桔梗を語る。
君と見た6月の愁いに沿って
夏が嫌いな君は、いつも
『今日は暑いなぁ…』
って繰り返してたね。
愛してるという言葉を使うには
まだ早いと悟ってた。
何度も繰り返す6月の中で
君と見た紫陽花を、淡い空を
あの時は、永遠に続くと信じ
それが、
軽率に綴られたシナリオだと
今更気がついたんだ
『馬鹿だよなぁ…君も、私も…』
好きの反対が嫌いじゃない事も、
会いたい君に会うことはもうない事も
わかってた。わかってるつもりだった。
『外に出よう』
雨は嫌いじゃなかった。
傘を差し街を歩く。
あの日と変わらない街。
あの日と変わらない空。
あの日と変わらない夢。
ただ一つ、あの日を境に
消えた君を除いて、この街の時計は私の中で止まったままだ。
段々褪せていく思い出の中で
君だけが未だに一人静かに揺らいでる。
どれだけ歩いただろう。
君と歩いた遊歩道はすでに霞み
ただ懐かしいばかりの夜景を
眺めていた事に気づいた。
浅い夜の裾に項垂れた
夜光虫が滲む
それは遠くから眺めると
静かな星空のようであり
近づく一つ一つが輝く細い糸のようだった。
繋がっていた糸がほどけたのなら
それを私は手繰り寄せれば
いいのだろうか?
彼に届くことはないと知っていながら、きっと私はそれを手繰り寄せるのだろうな。
『君がくれた歌。懐かしいなぁ』
少し高めの優しい声が耳に蘇る。
16のあの日、君が私にくれた歌を
今も忘れずに覚えてるよ。
滲む夏夜にただ一人
歌う私に近くで寄り添ってくれる
誰かが確かにいたように思えて。
それは、まだ浅い夏の夜の夢だったのかもしれない。
本家様を是非聞いて下さい!!
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