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第二十八話 第二王女


 納得していないセリアとマチルダを帰した後は皇帝主催の晩餐会ばんさんかいへの参加と相成った。

 さすがは本家本元の帝国の王城で開かれる催しだ。

 ミレットとしても聞いたことのあるような有名な楽団の生演奏に、帝都で名高いシェフが実演で料理を作り――立食パーティ方式のテーブルに振舞っていた。



(「あのエビチリおいしそう……でも、食べられそうになさそうね」と心の中で嘆く私。


 私は偽カインの姿で第二王女の隣に立たされ、長蛇ちょうだの列になった私たちへ挨拶しにくる貴族の相手をしていた。

 ちなみに今の私はドレスコードありのパーティなので、黒いタキシードを着ている。


 第二王女は真紅のドレスに豪奢なさまざまな宝石を散りばめた宝石ティアラをしていて、スカーレットと同じく金髪碧眼である。

 スカーレットと同じ血を引いているだけあって――生まれながらの王家のロイヤルブラッドは伊達ではない。

 きっと、ミレットの姿の私が傍にいたら引き立て役にしかなれないだろう。

 いわく品があり、曰く華があるのだ。

 傍にいるだけで別空間。

 スカーレットもやればできるがすぐにメッキがはがれるので、第二王女はこういうことに向いているのだろう。



――♪〜♪〜と今まで流れていた華やか演奏が変わり、どこか落ち着いた川のせせらぎを彷彿ほうふつさせる演奏に代わり、一時会場の歓談が止まる。



 その隙に、第二王女が「ふぅ。ごめんなさい、カインさま……疲れているでしょうに……皆様も遠慮してくださればいいのに――」と小声で私にだけ聞こえるようにいたわった言葉を投げかける。


 私も小声で「そうだな……出来れば今夜、姫さんの部屋で疲れをいやしてくれないか?」と言いながら右目でウィンク。


「……わ、わかりました。晩餐会が終わったのち、案内の者をつかわせますので――」と顔を下に向け、赤くなった顔を見られないようにする第二王女。


(「まあ……初心うぶな反応ね」


 どこかうわの空になった第二王女と退屈な私は再び長蛇の列の挨拶に来る貴族をさばき、わりとどこにでもいそうな皇帝の挨拶を聞き、晩餐会を過ごすのだった。







「お、お待ちしておりました」


 今日は満月――時間はかろうじて日付が変わらないであろう時間。

 第二王女の私室に備え付けられているバルコニーで――第二王女は待っていた。

 ここまで案内してくれたメイドは頭を下げて音もなく去っていく。


 柵が白く、天ではなく下をみれば――ここは四階なので明かりのない帝都の町並みが見える。

 これで明かりでもあれば、あの光一つ一つがここで暮らす人の息吹を感じるなり何なりと言えるのでしょうね。


(「そんなことよりも……」


 私の目の前にいる第二王女さまは気丈な表情をしながらも無意識か……身体を抱きしめている。

 それは彼女の豊満な胸を強調させる結果となっており、男なら劣情をもよおすことはかたくない。


 私は無言で第二王女に近づき、晩餐会とは違い、薄化粧をしているその頬に右手で包み込む。


「あ……」


 薄化粧しかほどこしていない第二王女の頬がまるで頬紅ほおべにったかのように赤みをびる。



――そして、私の両眼に薄い青い光がともる。







「さて、スカーレットのところに行きましょうか」


 私はベットの上で身悶みもだえている第二王女を放置して、偽カインの偽装を解き、ミレットの姿でこの部屋を出ようとする。


「お、おじさま! もっとわたくしを壊して〜!!」とつやのある第二王女のみだらな声が聞こえてくる。


 別に大したことはしていないのだが――怠惰の能力を使って彼女の理想の夢をみせているだけだ。


(「この女は強い男が好きな訳ではなく――好きになった男がたまたま強い男だった……というだけね」


 これで第二王女が素直になるかはわからないし、これ以上特に干渉する気もない。

 まあ、王城になんなく進入出来たお礼のようなものだ。


「良い悪夢を――第二王女さま……」


 私はドアを開けてこの場を後にした。



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