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第十一話 下僕トーク


 町が起き出したといっても過言ではない時間、ミレットは宿屋の自分のベットですやすやと寝息を立てながら眠っていた。


 一晩中、人体を解体しては治癒魔法で治させるという悪魔の所業をした彼女の表情はまるで純真無垢な乙女のようであり、長く手入れされた銀髪は日の光によってきらきらと輝いてみえる。



 その隣では、もう一つしかないベットの横で二人の少女が所在なさげに立っていた。


 一人はショートポニーのくすんだ茶髪、真新しい神官服は初々(ういうい)しい好印象あたえるだろう素朴な少女――レティシアは先程までトイレの人になっていたため、表情がまことに残念になっている。


 対するもう一人の少女は黒髪の長髪に黒い瞳を持ち、一般市民の格好をしている。体格はスレンダーで女性らしい象徴の胸は皆無に等しいが、まるで作られた芸術品のような美しさを持っている少女――エクセリアは血が足りないためふらつきそうになりながらも意地でも立っている。そして顔色が土気色である。


「ね、ねえ、セリア」とレティシアは沈黙に耐えられずに先程仲間に加わった少女に話しかける。


「……なんでしょうか? レティシアさま」と淡々に答えるエクセリア……若干いわゆるレイプ目状態なのは朝までの”解体ショー”の主役をはっていた影響であろう。


「いやいや」とレティシアは大仰に右手を振って、「わたし奴隷だしー、対等だよー。わたしたちなかーまだよ?」といわゆるモンキーポーズをするが……スルー気味に「そう」と言ったエクセリアはレティシアを空いていたベットに両手で突き飛ばす。



「うわあ?!」と”ぼすん”と仰向けに倒れたレティシアの上にエクセリアはマウントポジションをとって――いわゆる立ち膝の状態でレティシアを見下ろす。


「対等なわけない……人間ごとき家畜と、お姉さまとあたし――優良種族である魔族を一緒にしないで」と辛そうな表情で上下関係は最初が肝心とばかり、脂汗をかきながらも平気ですよアピールをするエクセリア。


「え、えーと。仲良くしようよー。そんな軍じゃあるまいしー」となんとか説得しようにも弁が立たないレティシアはどう言おうか非常に困っていた。


「そ・れ・に」とエクセリアの視線がレティシアの胸にいく。「まるで淫魔いんま彷彿ほうふつさせるような胸!! どうして奇乳の淫魔いんまは胸が垂れないのかしら……このこの」と――うつべしうつべし! とレティシアの胸をまるでサンドバックのように拳を握り締め叩くエクセリアはある意味正気を失っていた。


「ちょ、ちょっと痛い、痛いよー?! 最近、成長痛で痛いんだからやめてよー」とレティシアは孤児院でいたずら小僧に胸を鷲掴わしづかみされたり、同じ年齢くらいの少女と着替えているときに無遠慮に触られることを思い出し、胸が大きくて嫌な思いばかりだーと心の中で嘆く。


「あ……」無理やり動いていたためだろう。エクセリアはまるで電池が切れたように倒れ――そのまま顔をレティシアの胸にうずめる形になる。慌てたレティシアは「大丈夫?!」と聞くが、「だ、大丈夫。情け無用〜」と虫の息のごとく答えるエクセリアに彼女は心配になる。


「どうして……あたしを助けたの? 別にお姉さまはあたしが死んでもよかったみたいだったけど?」


「ど、どうしてって、大変な人がいたら助けるのが普通だよー。それにこれからは仲間だからねー。助け合おうよー。わたしたちはもう家族みたいなものなんだからさ」とまるで花が咲いたような笑顔でレティシアは微笑む。


 レティシアの微笑みが見えてはいないが言葉だけで意図を悟ったエクセリアは「かぞく……ならあたしが次女で、レティは三女……」となにかをかみ締めるように答える。


「ええー? ミレィは長女でいいけど、次女はわたしだよー」



 二人の小さな争いは二人の寝息が聞こえるまで続いた。ちなみにミレットは深い眠りについていた。

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