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sweet edge ~ この胸の永遠  作者: 真織
降り積もる花
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 誕生日には花束を。

 クリスマスも、ちゃんと約束をしてくれた。

 ―――二十四日は、ハルくんと一緒に過ごせる。

 


「プレゼント、って、どうしたらいいかな?」

迷ったあげくに、結局友達に聞いてみた。

 千裕もさっちーも、明日菜までもが顔を見合わせる。

 すっかり寒くなったので、生協のカフェの中。しばらくぶりの四人でのランチだった。

「千裕は、どうするの?」

「うーん。無難なところで、手袋とかマフラーとかかな。とりあえず」

夏合宿の後くらいから、りょーすけと付き合いだした千裕。

「アクセとかするタイプじゃないし、皮小物もなーって」

「就活応援グッズとかは?」

さっちーが言うと、

「いかにも過ぎて、プレッシャーでしょ」

と、千裕は苦笑い。

「藤崎なら、アクセサリーとかでも良さげだよね?」

明日菜は軽く言うけど、気持ちを確認したばかりで、そういうのはまだハードルが高いような……。

 ふう、とため息をつくと、

「贅沢な悩みだよね」

明日菜に言われてしまった。

「美緒には切実でしょ。なにせ誕生日にバラの花束くれるようなのが相手だし」

さっちーが例によって明日菜をいなしてくれる。

「そう、それが似合いそうっていうのがね。いっそクリスマスプレゼントは、私! とか」

できないできないできない!

「ハルは喜ぶかもだけど、美緒には無理」

「だよねー」

うう……。勝手に結論付けられてるし。

「美緒!」

急に思い立ったように、千裕が言う。

「この後、買いに行こう」

「え? 今日?」

「うん。講義入ってないでしょ」

千裕とはかぶっている選択が多いので、お見通し。とはいえ、急すぎるような。

「なんか、悔しくなってきた。アクセサリー、見に行こう」

だから、ハードル高いって……。

 急いで食べだした千裕は本気モードだ。付き合うしかなさそう、と私は観念したのだった。


 明日菜とさっちーに見送られて、大学を出て、駅に向かう。

「ほんとに行くの?」

「うん。都香駅まで出よう」

千裕に押し切られ、そのまま二人で師走の街へ繰り出した。

 クリスマス前ということもあってか、お店にも、手の届く範囲でプレゼントにしやすそうなものが多くディスプレイされている。

「どうして急にアクセサリー?」

千裕に聞いてみた。可愛いものや綺麗なものを見るのは、もちろん楽しくて、眺めているだけでも気分は上がるんだけど。

「いや、きっと、自分では絶対買わなさそうかな、って思って」

ああ、りょーすけは、確かに。

「ペアリングとかいいかもとか」

「……サイズわかるの?」

「美緒にしては冷静な意見をありがとう」

どうやら千裕も、彼のリングサイズまでは知らないみたい。

「一緒に、買いに来ようかな」

そうしてるカップルいるのも、目の当たりにして。

「それも、いいかも」

と返事はしたんだけど。

 やっぱり私的には、それだとおねだりしてるようで気が引けちゃったりする。いつか、そういうことが自然にできるようになったら嬉しいけど。そんなことを思いながら、売り場を見ていたら。

 あ……。

 これ……。

 シンプルなシルバーのバングルに目が行った。表面に少しづつ角度を変えた加工がしてあって、きらきらしすぎずにお洒落な感じで。

「美緒。来てよかったでしょ?」

してやったりという顔の千裕。強引に買い物に連れ出されたのは、私のため、だったのかな?



 今年最後の合同ゼミは、四回生とのお別れ会を兼ねていた。

 それぞれの進路が決まって卒業していく先輩たち。いつもの居酒屋も、来年からは違うメンバーで来ることになる。

 今日は、さすがにハルくんも少しくらいは飲んでもいいと緩めてくれた。もともと、そんなに飲む方でもないけど、なんだかずっとソフトドリンクって言うのも物足りない。

 ハルくんは、頻繁に会えない分を埋めようとでもするかのように、基本的に隣にいてくれる。

「私って、甘やかされてる?」

聞いてみたら、ハルくんは、

「じゃなくて、俺が単に自分に忠実なだけだから」

と何でもないことのように言った。

 そんなハルくんが、先輩に呼ばれて私のそばを離れたとき。さりげなく隣に割り込んだのは、確か、松林ゼミの四回生の柊斗さん。

「ハルのガードが固いから、なかなか美緒ちゃんと話せないしね」

と苦笑いしつつ。今までだって、それほど話したことはなかったはずなんだけど……。

「最後かもしれないから、言っておこうと思って」

柊斗さんは言葉を切って、いぶかしむ私を見つめた。

「あんまり接点も作れなかったけど……美緒ちゃんのこと、好きだった」

「あ、の……」

「いいよ。ハルが好きなのは、わかってたし。だから、動けなかったってとこもあるから。でも、まあ、困らせるだけかもしれないけど、記憶にくらいは残したくてさ」

淡々とした告白だった。それだけ言うと、柊斗さんは離れていった。

 何の返事もできないまま。

 どうしようもない、よね。柊斗さんは自己完結してる感じだったし。




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