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ギレイの旅 番外編  作者: 千夜
いち
6/52

勇者と呼ばせるために

勇者と呼ばれるために2の続きです。

 部屋を出て行こうとして、クリームは儀礼が何かを握っているのに気付く。筒のように丸まった、本よりは薄い束ねた紙。そう言えばさっきもこれを握ったままパソコンのキーを押していた。

手のひらがインクまみれになるぞ、と思い、クリームは笑いながらそれを儀礼の手から取り上げる。

そこに書かれていた文字は。


『砂神の剣 取扱説明書』。


 丁寧に、表紙と背表紙がつけられ、本のように糸で縫いこんである。書かれた文字のインクは乾いていて、紙が丸まって戻らない様子から少なくとも2、3時間はこの状態だったのではと思われる。

では、儀礼はこんなにも長時間何をしていたのか。クリームは疑問に思って、剣を入れていた機械に駆け寄り、儀礼がずっと書いていた書類を見る。


 魔力残量:異常なし、付加魔法:異常なし、刃先微細欠損:修復完了、~~の遺跡との連動なし、~~の遺跡との連動可、~~との共鳴の可能性:安全の範囲内に修正……。現存する古代遺産85%との調整を完了。残り15%……。


 そこで書類の字は止まっている。

これは、魔剣の機能についての修復と調整。

魔剣と呼ばれる物のそれは本来数週間をかけて行われると聞いたことがある。

剣の持ち主にとっては無防備となる最も危険な期間。

「儀礼、やっぱりお前は変人だな。お前の周りにはいくつのトラップがある?」


 表紙の裏には儀礼の走り書き。「逃げるのに疲れたら『砂神の勇者』を使って」

『砂神の勇者』の方がクリームのおまけのような言い方。

「逃げるってなんだ? 追っ手からか? あたしが行くのは当たり前みたいに」

くすりとクリームは笑った。


「黒獅子にこいつ回収するよう言っとかなきゃな」

クリームは外に出るために体をほぐし、最後に大きく伸びをすると、身じろぎもしない少年を見る。

「あれが居たんじゃな」

黒獅子。今の奴ならまだ戦える。自分の力をもて余した力馬鹿。しかし、成長速度が半端なかった。

遺跡の中でトラップに落ちる度にその力を増していく。クリームから吸収するように力の使い方を学んでいく。

わざとトラップにかかっていたなら恐ろしいことこの上ないが。

「ないな」

首を振ってクリームは笑う。

「全力のあいつと戦えるようになれば、お前は守ろうとせず、俺を認めるか? せめて両方Aランクにはなりたいな」

黒獅子に、管理局ランクのAを取るのは無理だろう。ならば、先にそっちを取ってやる。

「そのためにはこれ、ありがたく頂戴するぜ」

『砂神の剣 取扱説明書』なる物を握り締め、クリームはその研究室を後にした。



 その後クリームはゼラードの姿で町を出た。各地に散った追っ手を一人ずつ相手にするなら大した苦労ではない。まして、思いのままに力を貸す、古代遺産の剣を持っている。


 本物の『砂神の勇者』が現れるのにはもうしばらくの時間がかかる。しかし、必ず儀礼の力になる日が来ることだろう。

それは決して遠すぎない未来。




 クリームは知らない。『砂神の勇者』を隠れ蓑に、もう一つの隠された宝があることを。

儀礼の持つ紫の宝石。ワイバーンの瞳。

眠ったままの少年の懐で隠されたポケットの中、その石はゆっくりと輝きを消していく。

解析のために開封した砂神を押さえ続け、魔剣修復の為に分け与えた魔力を回復する為に、少年と共に眠りにつく。

 世の研究者が求めて止まない、古代遺産の力の解放。

その鍵を少年は手にしていた。


 『蜃気楼』光の屈折が見せる幻。


 誰がつけたか知らないが、今さらながらにぴったりな二つ名だ。


彼の周りの ―――― 真実はどれだ。

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