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ギレイの旅 番外編  作者: 千夜
いち
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儀礼という少年

 シエン村の住人はみな、黒髪黒目の人種だ。

 そんな中で、金髪茶色い瞳の団居儀礼マドイギレイは目立つ存在だった。

 女神と称される美貌の母親、田舎の一教師とは思えないほど物知りの父親。

 両親の特徴を受け継いで育った儀礼は、シエン村では特殊な子供として扱われることになった。


 シエンの住民が戦士になるべく幼い頃から武術に励む中、儀礼は祖父と父親の持つ書斎の本を漁っていた。


 シエンの歴史は知れば知るほど興味深いものだった。歴史の中で幾度も繰り返される戦。その戦いの中で必ず活躍する黒髪黒目のシエンの戦士達。

 誇り高く強い者たち。儀礼は強い憧れと、その戦士の育つ村で暮らすことに誇りを持っていた。


 村に一つしかない学校へシエンの子供達は通っている。もちろん、儀礼もその学校の生徒だ。


「やっぱり儀礼君に似合う〜」


 授業の合間の休み時間、油断したすきにクラスの女子が儀礼の金色の髪に触れた。


「ちょっと」


 儀礼は椅子から立とうとして集まってきた少女たちに阻まれる。


 キャーッ、と上がる悲鳴のような高い声。


「これもこれもっ」


 儀礼の頭の上にのせられていたレースのリボンがどかされ、花飾りのついたカチューシャが儀礼の頭に刺される。


(痛いから、刺さってるから)


 儀礼は涙を溜めて、奥歯を噛みしめる。


「こっちのリボンは、結んであげるぅ」


 ピンク色の長いリボンを持った少女が儀礼の正面へと立つ。

 短く切った儀礼の髪に、リボンを結ぶ場所などないと思っていれば、首の後ろから巻かれ、頭の上に蝶々結びのリボンが出来上がる。

 儀礼が涙目で少女達を見上げれば、再び上がる悲鳴のような高い声。


「「「儀礼君、かわいい~! 」」」


「もう先生くるから席にもどってよ!」


 やめてと言って聞いてくれる相手でないことを、儀礼は身に染みて分かっていた。

 溢れてきた涙を拭き取り、机の中から教科書を取り出して、乱暴に机の上に置いた。

 少女たちはようやく、残念そうに去って行く。


 リボンを頭につけたまま行かれたので儀礼はため息と共に外し、机越しに回して持ち主に返してもらう。


 これは歴史で活躍するシエンの戦士の生活ではない。儀礼の憧れる戦士とは絶対に違う、とリボンを頭に付け涙を浮かべる自分の姿を想像し、儀礼は頭を抱える。

 儀礼にとっては本気でなんとかしたい生活だった。


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