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ギレイの旅 番外編  作者: 千夜
いち
38/52

儀礼が攫われた 護衛たちの奮闘?

思いつきの設定不足なのでこちらに。

ストーリーがスムーズにいかなかった。

 儀礼がさらわれたというのに、儀礼の護衛たちはのんきなものだった。

攫っていった相手すら分からないというのに。

もちろん、獅子だって、そこまで心配はしていなかった。

あの儀礼が、そうそう、どうにかなるとは思えなかった。

むしろ、自分から付いていったという可能性すらある。そうなると、攫われたとすら言えなくなる。


 しかし、儀礼の行方がわからなくなり、何の連絡もなく五日が経った。


 その日、獅子の耳にどこからか儀礼の声が聞えてきた。

機械を通したような硬い声だったが、間違いなく儀礼の声だと獅子は確信した。


「おい、お前、コレなんて言ってるか分かるか?」

獅子には分からない言葉を話す機械の儀礼の声に、獅子は近くにいた物知りな男に尋ねる。

頭がいい上に強いとは、この男はなんというずるい男だろうか、と獅子は少しばかり思う。


「食べものの話ですね。いろいろな食べ物の名を挙げています。どうやら、お腹が空いているらしいですね。」

くすりと、その男は笑った。

「あの儀礼がか? ほっとくと何日でも飯を忘れるようなやつがそんな大量の料理を欲しがるって?」

眉間にしわを寄せ、獅子はその言葉をいぶかしむ。


「……そうですね、間違ってました。」

獅子がその声を発する機械をにらめば、ようやく事態を重く見たらしいその『男たち』が動き出した。

その機械の告げる難しい言葉の最後は、『帰りたい』と締めくくられていたそうだ。


 それからは驚くほど速かった。

本当にあっという間だったのだ。

儀礼のいる場所を突き止め、背景や、関わった人物を探り当て、分担して儀礼救出に向かった。

獅子のつれてこられた場所は何かの宗教の本拠地らしく、大勢の人間が詰め掛けていて、歩いて通ることさえ難しい状況だった。

やれ「教主様を守れ」だの、「天子様を守れ」だの、「生き神様を奪われるな」だの、うるさいのが大勢いて、儀礼のいるらしい場所にたどり着くのはとても難しい状況だった。

いっそ、全員を切って捨てたい気分になったのだが、隣りの金髪緑目の男が先にそれをやりそうになったので、獅子は止めることに必死になった。


「儀礼なら、自分のせいで人が死んだって、絶対に言う。だから、殺すな!」

その男を止めるのは本当に大変だった。

父親以外に、こんなに苦労する相手がいるとは、旅をするまで獅子は、まったく思いもしなかった


「おい、お前。アーデス。っつったか。先に行けるなら、行け。これ以上儀礼を一人にするな。」

人を、切らずに進むのは難しい。完全に人が団子状態の壁になっていたのだ。人の上を進んでいくにしても、儀礼の居場所がよく分からない。

とりあえず、一人ずつぶん殴って、儀礼の居所を聞くが、知らない奴ばっかだ。

神殿だの、特別室だの、だからそれがどこだってんだ。


「わかった。飛ぶ。」

一言告げると、アーデスは白い光を放ち、獅子と共に、その塔の下にまで移転魔法で辿り着いた。

その塔には厳重な結界が張ってあり、アーデスでもそのまま入ることは難しかった。

ひとまず儀礼がいるとわかったその塔の下で、アーデスは結界を解きにかかる。

と、獅子が暴れ始めた。

また、近くにいる者を片っ端から殴り倒し、儀礼の居場所を聞いている。

この塔の中だというのに。


 その時、塔の上から何かが降ってきた。

何かではない、それは人であり、アーデスや獅子が迎えに来た儀礼自身だった。

獅子は、周りの人を蹴散らし、降って来た儀礼をそのまま背中へと受け止めた。

周囲の警備らしい男達と戦うために一瞬たりと、両手をふさぐのは危険と判断したのだろう。


「ただいま。ごめん、獅子。動けないから、おんぶして。」

高い塔の上から降って来て言うセリフではない。

しかし、その体はあまりに軽かった。鎧のような白衣がないからではない。

人としての重さを保っていない気がした。


「白衣取られちゃって。探せるかな?」

獅子の心配などよそに、儀礼はアーデスへと問いかける。

「コルロとワルツがすぐに見つける。心配するな。」


「軽い。」

ぽつりと言った獅子の言葉が聞えたらしい、ばつが悪そうに儀礼が耳元で答えた。

「血、抜かれちゃってさ。研究者の血は毒消しとか、特別な効果を作り出せるんだ。でも、僕なんかより、アーデスの血のがいろいろ効果ありそうだよね。」

「できるなら私の血をわけてさしあげたいですね。」

そう言うアーデスも、今の儀礼の状況を普通ではないと判断したらしい。

いつもの、覇気のような物がない。

周囲の信者達への殺気はまがまがしいものへと変化したが、それには儀礼は気付いていないようだ。

周りへ気が行かないほど、本気で弱っているのだろう。


「血液のタイプが違うと貰っても大変なことになるけどね。アーデス何型?」

笑うように儀礼は問いかける。

なぜ、こいつはいつでも笑うのだろうか。こんな時にでさえ。


「型……私の血は赤色ですが。」

当然のことを、当然の様にアーデスが言った。

それを聞いた瞬間に、儀礼がくすりと息を吐き、本気で笑ったのが分かった。

獅子の背中の上で、儀礼の張り詰めていた気が消え、安心しきったかのように身体から力が抜けていった。


「よかった。僕の血の色も赤だよ。」

また、当たり前のことを儀礼が言う。

そして、そのまま、儀礼は眠ってしまったようだった。

深い深い眠り。ちらと見たその表情は、とても穏やかなものだった。

作者の採血中に、最後の儀礼とアーデスの血の色のやり取りが浮かんだ。


誤字修正しました。

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