Bランクの遺跡で
もうしわけありません。現在執筆中の「ギレイの旅」10章より少し先の話しになるので、ネタバレを含みます。
それでもよいという方は読んでくださると嬉しいです。
思いつきなので、こちらに。
登場人物と、この時点でのランク。
【儀礼】
管理局ランクS、冒険者ランクD。
主人公。マップや建物から、秘密部屋を見付けてしまう特技がある。二つ名は『蜃気楼』。
【アーデス】
管理局ランクA、冒険者ランクD。
回転の速い頭脳と、高い戦闘能力。数々の遺跡を攻略してきた男。
儀礼の護衛であり、友人。『双璧』の二つ名を持つ。
【獅子】
管理局ランクC、冒険者ランクA。
儀礼の友人で、光の剣という伝説の剣の守護者。
武の腕前は相当なものだが、頭脳に関しては小学生と張れる。まだ、九九を覚えていない。
二つ名は『黒獅子』。
【クリーム】
管理局ランクA、冒険者ランクB。
元暗殺者の少女。儀礼によって救われたと本人は思っている。
恩返しを、と思うのだが、どういうわけか恩ばかりが増えていくことに悩む。
儀礼の助けとなるために、トラップ解除などを覚えた。
儀礼の影からの援護者であり、友人。二つ名は『砂神の勇者』。
【ワルツ】
管理局ランクA、冒険者ランクA。
大きなハンマーを振り回す戦士。鎧だけしか着ていないように見える服装。
アーデスのパーティメンバー。
儀礼に恩を感じ、命を賭けて守ると約束した護衛でもあり友人。
二つ名は『翼竜の狩人』。
【精霊 朝月】
儀礼の名付けた光の精霊。人の理解を超えるほど長く生きた精霊らしい。
【精霊 トーラ】
紫色の宝石に宿る精霊。幕でできたドラゴンの翼を持っている。
『ワイバーンの瞳』という宝石として、古代の遺跡の封印を解く能力を持っている。
また、強力な結界と障壁を張ることができる。属性は不明。
【精霊 火王】
儀礼の周囲に昔からいたらしい火の精霊。
元は王都の学院で遊び暮らしていたのを、儀礼の母が発見し、面白がってシエンにまでついて来たという。
【精霊 風祇】
風の精霊。風の神という意味で儀礼が名を付けた。
普段は儀礼の銃に宿っていたらしい。強力な風を操る精霊。
+++ 本編 +++
その日、あるBランクの遺跡のマップを見ていた儀礼は、怪しい箇所に気付いた。
マップに記されている部屋と部屋の間にある分厚い壁。
人が一人通れる程の、通路のような狭い空間のある可能性があった。
Bランクの遺跡に行くのに、儀礼は一人でも十分と、すぐに出発しようとしたのに、たまたま居合わせたアーデスに見つかり後ろから襟首を掴まれ、引き止められた。
「待ってください、一人で行くとかやめてください。以前見つけたBランクの遺跡、Aランクに塗り替えたこと、忘れたとは言わせませんよ。」
それは、偶然の出来事だったというのに、引き合いに出されても困る。
しかし、アーデス(子守)が行くのなら、獅子も連れて行くか、と誘ってみれば、そばにクリームがいたらしく、当然のようについて来て、気付けば参加者にワルツが加わっていた。
総合Aランク以上のパーティだ。
そしてすぐに、獅子・儀礼・ワルツ・アーデス・クリームというメンバーでその遺跡の探索に出発することになった。
アーデス達が正式に表に出る護衛となった後、儀礼はもう彼らの存在を隠す必要はなかった。
自分が狙われる存在であることを認め、一人で全てを守りきれないことを儀礼は受け入れた。
遺跡自体はBランクで、マップも作成済みの攻略されたもの。
特に苦労もなくメンバーは内部の探索を進めていた。
主に、アーデスと儀礼がマップも見ずに先を争うようにして目的の場所へと疾走した。
「アーデスずるい! 僕が見つけたのに、大人気ないっ。」
「いえ、これでも加減してますが?」
全力疾走する儀礼の隣りを、魔物を倒しながら涼しい顔で進むアーデスを、儀礼は本気で睨みつけた。
そのマップ上で怪しいと思われる部分で、儀礼は迷いなく遺跡の仕掛けに踏み込んだ。
目の前で開かれる壁。
トラップが起動し、その通路へと滑り落とすような形で、床が大きく口を開いた。
5人を待っていたのはとても長い落下だった。
気付けば、儀礼は暗い通路に寝そべっていた。
下はごつごつとした岩だった。
着地の衝撃は覚えている。
腕輪が白く光り、地面が見えて、瞬間的に白い精霊朝月の魔力で強化したワイヤーを使って、落ちる速度を緩めたはずだった。
しかしその後、気を失ったのか、真っ暗なせいで目が見えないだけなのか、いまいちはっきりとしなかった。
儀礼は持っていた手持ちのランプに火をつけた。
周囲の壁は、岩を四角く切り抜いて作られたブロックが積み上げられていて、遺跡本体と変わらない造りのようだった。
懐中時計を確認するが、時間は何分も経っていない。
儀礼が意識を絶っていたとしても、ほんの一瞬のことだろう。
歩き出せば、すぐに前方にもう一つの明かりが見えて、儀礼はアーデスと出会った。
しかし、他のメンバーの姿はない。
「この道に落ちたのは、私と儀礼様だけのようですね。少し先まで見てきましたが、一本道の行き止まりです。」
儀礼の進もうとしていた道の、前方を示しアーデスが言う。
「着地点が別れちゃったのか。まいったな。早く合流しないと心配だよ。」
そう言いながらも二人とも手元で遺跡の地図を更新していく。
誰も入ったことのない、トラップの先の地下空間。
現代の人類には未開の地。儀礼の興奮は鎮まる気配がなかった。
二人は儀礼の来た後方の道へと進み始める。
「実はね、アーデス。遺跡の探索で、獅子にはまだ緑のブロックに触るなとしか教えてないんだ。」
心配そうに儀礼は言う。
人が入り、解明された遺跡のトラップの発動場所には、暗くても分かる蛍光の緑色の塗料が塗られている。
そのブロック、または蜀台であったりもするのだが、それにさえ手を出さなければ、比較的安全に遺跡を探索できるのだ。
しかし、ここは人類未踏の地。
まだ、だれもトラップを解明してはいない。
もちろん、トラップの発動箇所に親切に緑色の塗料が塗られているはずがなかった。
「大丈夫ですよ、彼ならそう簡単に死ぬことはありません。無事でいます。」
儀礼を安心させるためというよりは、むしろそれが当然のこととしてアーデスは言う。
「違うんだよ、アーデス。頭脳派が二人ともこっちなんて、早く見つけ出さないと、貴重な遺跡を壊されちゃうよ!!」
本気で心配顔の儀礼。アーデスの言った意味とは違う心配をしていた。
「そっちですか……。」
呆れたようにアーデスは頭をかいた。
「大丈夫ですよ。ワルツだって無駄に管理局でAランクなわけじゃありませんから。」
言われて儀礼は、護衛であり友人でもあるワルツを思い浮かべる。
魅力的な女性らしい体型、特徴的な大きなハンマー、強い力、快活な性格。
「いや、いやいや。今、ワルツと獅子が戦ってるシーンが思い浮かんだんだけど……っ?」
考えを振り払うように儀礼は大きく頭を振った。
「ワルツはそんなに馬鹿ではないですって。」
口を押さえ、可笑しそうにアーデスが笑う。その姿は余裕を伺わせる。
「ワルツは――獅子の、挑発に乗ったりはしない?」
顔色を青くして儀礼は縋るような瞳でアーデスを見上げた。
「……少し心配になってきましたね。」
真っ直ぐに続く遺跡地下の一本道、マップを記しつつも、二人は歩く速度を速めた。
*************
一方、儀礼に心配されていた獅子たちの方。
「おい、お前らだけか?」
先に合流していたワルツとクリームの元に獅子が歩み寄る。
「ああ、お前は一人か?」
周りを確認するように探り、ワルツが聞いた。
「ああ。儀礼達はバラけたのか。どっちかこの遺跡の全容分かるか?」
獅子がワルツとクリームに聞く。
「だいたいの方角ならな。上の階の構造は頭に入ってる。ただ、この地下だけが広かったりしたらお手上げだ。」
肩をすくめるようにして、クリームが言った。
「早く儀礼の奴を見つけねぇと、やばいな。」
獅子が声を低くし、心配するように言う。
「なんでだ? こっちのが危ないだろ。お前、トラップの解除できんのかよ。」
そんな獅子をからかうように、ワルツは笑った。
「罠の解除はあたしがやる。それより何がやばいって?」
にらみ合う二人の間に、割り込むように身を滑らせて、クリームは獅子に問いかける。
クリームは暗殺業をやめてからすぐに上級トラップ解除などの技術を覚えた。
もともと暗器などの、仕掛けのある特殊な武器の扱いに慣れていただけに、習得は速かった。
行動箇所のマップ状況などを記憶しておくことも、もはや習慣と言える程に慣れていた。
この三人の中では頼もしい限りだ。
「だって、ここは今まで誰も入ってないエリアなんだろ? 儀礼の奴が夢中にならないわけがねぇ。俺らのことなんか忘れて、飯も食わず、無心でマップ作成に集中するに決まってる。遺跡地下がどんな所か知んねぇけど、もし魔物がいるなら儀礼は危ない。」
その場にいた三人の脳裏には、ペンと地図を手に瞳を輝かせる少年と、その背後から瞳を光らせ悠々と狙いを定める凶悪な魔物の姿が思い浮かんだ。
「行こう。」
低い声で言い、ワルツが歩き出す。
「アホだが、ありえるな。」
額を押さえ、笑うようにしてから、クリームも足を踏み出す。
獅子は光の剣を抜き放ち、一瞬瞳を閉じると、馬鹿みたいに遺跡に夢中になりそうな友人の無事を願い、人類未踏と言われる地の、牙を剥く全ての敵を討ち払う覚悟を決めて、二人の後を追って走り出した。
儀礼の予想に反し、協力し合う三人だった。
************
広めの道を歩いていた獅子たち三人は、前方に儀礼とアーデスの姿を発見した。
しかし――、
「来るなっ!」
低く鋭い声が通路に響いた。
三人の接近に気付き、真剣な様子でアーデスが叫んだのだ。
儀礼は何かに向かい、素早い手の動きで作業をしている。
「アーデス、第一解除した。魔物が出る!」
速い口調で儀礼が言う。その手先の作業はまだ止まってはいない。
「了解です。ワルツ、クリーム、黒獅子、魔物の方は任せたぞ。こちらに近付けるな!」
離れた位置にいる三人に、アーデスが言った。
そのアーデスの手元には、魔法陣が現れている。何かの魔法を発動させているらしかった。
「わかった。」「まかせろ!」
ワルツと獅子が答え、三人は構える。
すぐに、遺跡の壁をすり抜けるようにして、大量の魔物が現れた。
天井を埋め尽くすような数の、Cランクのこうもり型魔獣。
中型のライオンのような姿をした、Bランクの肉食魔獣が2体。
そしてAランクの肉体を持たない、精神型と呼ばれる魔物が1体。
獅子たちの戦闘が始まった。
儀礼とアーデスの前方では一つの石の扉が開いた。
しかし、その先に現れたのはまた扉。
「アーデス、時限の方たのむ。僕は実物。」
アーデスに向かい、何かの指示をしながらも、儀礼はすでに次の作業を開始している。
一方、落ち着いた様子で魔物と対峙する獅子たち三人は、一瞬も止まることなく動いてはいるが、苦戦している様子はない。
それぞれの武器で、次々に魔物を粉砕していく。
さすがに、戦闘慣れしているようだった。
ガコンと何かの外れる音がして、儀礼の目の前で扉の仕掛けは効果を失った。
「よし、解除だ。ツールBoxがあればもっと楽なのにぃ……。」
眉をしかめるようにして儀礼は呟く。
「こちらも解除した。次は魔法壁か、ヤンがいれば――」
「白がいれば――」
楽勝なのにと、溜息のような二人の声が重なり、アーデスと儀礼は顔を合わせて苦笑した。
互いのパーティの魔法使い。今、この場にはいない。
「言っても仕方ないよね。」
次の作業に向き合い、にやりと笑う儀礼。
アーデスが魔法陣の描かれた紙を扉に貼りつける。
「何枚ある?」
「20だ。」
儀礼の問いにアーデスが答えた。
「扉、三重だね。どうする?」
「まかせる。」
「分かった。」
作業をしながら互いに相手も見ずに、短い言葉で意思疎通する二人。
辺りが静かになった。
離れた所で戦っていた獅子達が、魔物を倒し終えたようだった。
間もなく魔法壁も解除し、儀礼たちの前で、二つ目の扉が開かれた。
内側からAランク相当の精神型の魔物が2体、襲い掛かるようにして飛び出してきた。
アーデスが剣を抜き、儀礼の前へ出て払うようにしてこれを防いだ。
儀礼は周囲に、大雑把な文様を描くようにして、ワイヤーを伸ばした。
精神型の魔物に有効な聖水を伝わせたもの。
これで、魔物を寄せ付けにくい結界の変わりになることが分かっていた。
儀礼たちを襲うのを諦め、散開した二体の魔物を、獅子達三人が相手をする。
氷の魔法を使い、吹雪のようなものを起こす魔物だった。
獅子の持つ『光の剣』と、クリームの双剣、『砂神の剣』。
魔法をはじき、肉体を持たない体にさえダメージを与える、二本の神剣。
二対二でも余裕を持って戦える相手だった。
「なんだこれ、あたし暇じゃないか。」
そう言いながらも、退屈そうな顔もせずに、ワルツは笑みを浮かべて二人の戦いを見守っていた。
「これも後輩の育成ってやつか? なんだかな。大人になった気分だ。」
くすくすと笑いながら、ワルツは汗ばんだ赤茶色の髪をかき上げる。
そう時間も掛けずに、獅子とクリームはそれぞれに魔物を倒した。
第三の扉を開ける直前に、儀礼が手を止めた。
「う~ん、嫌な感じしかしないんだけど……。」
真っ直ぐに扉を見たまま、儀礼は呟いた。
「同感だな。下がってろ。」
前に出て、剣を持たない手で儀礼に下がれと制するアーデス。
「冗談っ。」
笑うようにその手をくぐり抜け、儀礼はその扉の前に立った。
二人のもとへ戦闘を終えた三人が合流した。
「これは一体、どういうことなんだ?」
扉に向かい戦闘態勢のアーデスを見て、愛用のハンマーを構え、ワルツは問いかける。
「あの仕掛けの通路に入った時点で、この遺跡や地下そのものを起動してしまったようだ。」
真剣な顔でアーデスは説明する。
儀礼はさりげなく視線を逸らし、封印解除の力を持つ魔宝石、トーラのことは黙っておく。
獅子が何か言いたげに儀礼を見てくるが、やっぱり儀礼はしっかり黙っておく。
クリームがすっごく疑うような視線で儀礼を見てくるがやっぱり静かに儀礼は黙っておく。
「遺跡機能の解除装置はこの扉の奥にある。しかし、魔物を使って守っていたのが気になる。この先、何の魔物がいると思う?」
どこか楽しげに、アーデスは問う。
「Aランクってのは間違いなさそうだな。」
Bランクの遺跡にいると言うのに、先程の戦闘の手ごたえを考え、クリームはそう答える。
「何だろうと相手してやるさ。」
剣に闘気を纏わせて、待ちきれないというように獅子は笑った。
その気持ちに呼応するように薄暗い通路の中、光の剣は白い光を強く輝かせる。
「Sランクだったりして♪」
やたらと楽しそうに、儀礼は言った。もちろん冗談だ。
「「お前が言うな!」シャレにならん!」
クリームと獅子の声が重なった。
「冗談なのに。」
儀礼は口を尖らせる。
そして、重たい扉が開いて姿を現したものは、巨大な白い虎だった。
虎と言っても、普通の虎とその姿は異なり、全身の白い毛皮には所々に黄色い縦縞が走り、背には黄金に輝く翼を持っている。
その額には短いけれど、硬そうな一本の大きな黄色い角があった。
両開きの扉の奥に立ち塞がり、開いた通路をその巨体でめいっぱいにふさいでいる。
侵入しようとする者を威嚇するように一声嘶けば、雷(イカヅチ)のような電気の柱が何本も扉の前に立ち塞がった。
電気でできた柵に入り口を塞がれてしまった形になる。
大虎の向こう、通路の奥には広い空間が見えていた。
「僕は遺跡の解除に行く、そいつ頼む。」
ひるむことなくイカズチの壁を突き抜け、虎の大きな足の間をスライディングですり抜けて、儀礼が行く。
儀礼の体にイカズチが触れる一瞬、トーラが障壁を張ったのが見て分かった。
そして、地面をすべる儀礼の体は、背中にタイヤが付いているのではと思えるほど勢をつけて滑っていった。
いまさら儀礼の白衣に、タイヤの一つが仕掛けられていたとしても、残されたメンバーはすでに驚きはしない。
驚くどころか、Dランク冒険者に、出遅れている場合ではない。
獅子、ワルツ、クリームが大虎に向かう。
アーデスはマントで身を覆い、イカズチの柵を潜り抜け、一人で突っ込んでいった儀礼を追った。
「火王、風祇、頼むよ。」
儀礼は見えない精霊たちへと呼びかける。
見えなくとも、儀礼は精霊たちの力を感じていた。いつも、儀礼の声に耳を貸し、助けてくれる小さな友人達。
火王は儀礼の生まれる前から父と母と知り合いだったという火の精霊。
幼い頃から、儀礼のそばにいてくれた精霊らしい。
儀礼はその名を、白に出会うことで知ることができた。
白は今、儀礼の生まれた国、ドルエドにいる。
精霊を見る瞳を持つ、儀礼の大切な友人の一人。
風の精霊風祇は儀礼が名付けた。
儀礼に力を貸してくれる風の精霊で、普段は儀礼の銃に宿っている、攻撃的な精霊らしい。
フィオも風祇も、朝月には及ばないが、かなり長生きな精霊で、二人とも強い力を持っている。
儀礼は後方での戦闘を気にしながらも、障壁の張られた操作盤へと手を伸ばした。
近づける儀礼の腕を、障壁が侵入物を弾こうと強い力で押し返す。
バチバチと火花が散り、押し返されそうになりながらも、儀礼はその腕を引くことはしない。
そして、長い時間をかけずに、バリンとガラスの割れるような音がして、精霊たちがその障壁を破壊した。
急いで操作パネルを操り始める儀礼。
同時に、アーデスが別の機械に手をかけていた。
儀礼とアーデスが時をかけずに成していく作業、その一つ一つが普通の冒険者には数時間かかるものだった。
儀礼とアーデスの前で大きなモニターが起動し、遺跡全体のマップが現れた。
遺跡全体の地図自体と、現在遺跡内部にいる儀礼たちとは無関係の探索者を確認し、まずその安全を確保した。
次に、地下遺跡が発動したことにより起動した上級トラップを解除する。
これでこの遺跡の地上部分のランクはB相当に戻ったはずだった。
「後は頼みます」
アーデスはそう儀礼に言うと、大きな白い虎へと向かう。
四人で大虎と戦闘を続ける。
アーデスが加わり、戦闘組みは段々と大虎を押し始めた。
雷の技は速さがあるが、正確性には欠けていた。
当たりそうなものにだけ防御をすれば、戦えない相手ではなかったようだ。
額の角が黄色く輝くたびに、背中の翼から大量のイカヅチが放たれていた。
その黄金の翼は、空を飛ぶためではなく、イカヅチを放つためにある物のようだった。
A級守護獣対 Aランク冒険者(アーデス、ワルツ、獅子)三人、Bランク(クリーム)一人。
「楽勝だね」
そんな四人を見て、軽く言う儀礼。
手はパネルを操作し続けている。
難しい暗号に彩られた地下遺跡を操作するための解除記号。
解除のために儀礼はたくさんの言葉を移動し続ける。
そしてついに、遺跡地下は解除され起動される前の姿へと戻った。
「やった!」
儀礼の声から間もなく、大きな白虎は倒された。
はぁ。と息をつき汗を拭う戦闘員四名。
ようやく操作室の安全は確保されたのだ。
「さぁ、マッピングだ!!♪」
そんな戦闘員を尻目に、ペンと地図を持ち、楽しそうに非戦闘員の儀礼が言った。
何かを言おうとし、結局、呆れて口を閉ざす戦闘員の四人だった。
2013/4/14、誤字修正しました。




