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ギレイの旅 番外編  作者: 千夜
いち
10/52

盗賊ギルドのおまけの一言

「あーあ、盗賊ギルドなくなっちゃったね」

若い女性の声が薄暗い宿の部屋の中に響く。

残念そうな言葉の雰囲気とは違い、その声は溌剌としていて女性の活発な雰囲気を現している。


「そうだな、残念だな」

今度の声は低い男の声で、腹の底から出ているような発声の良さを感じる。

「わざわざこんな町まで来たのにね。あー、残念っ! 私の物になるはずだった宝石ーぃ」

女性はベッドに倒れるように寝転がり、盗賊ギルドの保管庫にあったはずの宝石リストを眺める。


「トラの目、猫の目、鳩の血までっ! うぅ~、恨むわよ黒獅子君」

女性は涙目になって黒獅子の名を口にする。


「でも、俺達が入り込む前でまだ良かったじゃないか。俺達の名前がリストに載ってたら逃げられなかったかもしれないだろ。なんせ、剣術大会2位の腕前だからな」

男は慣れた様子で荷物をまとめている。


「そこはほら、顔見知りの特権で逃がしてもらうとか」

女性は変わらぬ明るい声で言い、人差し指を回す。

「知ってるからこそ逃げられないんだろ。俺は捕まる時にはきっぱり捕まる」

男は今まさに、捕まったかのようにピンと背筋を伸ばした。


「兄さんは頭が固い。せっかく盗った物だって売って人にあげちゃうし。知ってる? 義賊も犯罪なんだよ」

女性が真っ直ぐに男の顔を指差す。

「泥棒がまず犯罪だからな」

当たり前のことを当たり前のように男は言った。


「その犯罪者から奪った物なら罪も半分よ。その人の物じゃないんだもの。ね」

はぁ、と兄と呼ばれた男は深い息を吐く。

けっして犯罪に足を染めたかったわけではない。生きるために仕方なくだった。

それがいつの間にか仕事のようになって。どこからか、依頼まで来るようになっていた。


「仕方ないから、兄さん。今回はストーフィムに戻りましょ」

「そうだな」

二人は次の朝に住み慣れた町へと帰って行ったのだった。



ストーフィムに住む宝石好きの兄妹でした。武術大会の町まで来てたんですね。

というか、お前ら、いつの間に何をしている。……いや、怪しかったけどな。ずっと、言動が。特に妹。

盗賊ギルドを書き終わった後に、「あーあ、盗賊ギルドなくなっちゃったね」という声が聞こえてきました。

間違いなく、ストーフィムの遺跡に響いたあの声でした。

剣術大会での受付番号は15(トッコ)番と16(イム)番でした。

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