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ギレイの旅 番外編  作者: 千夜
いち
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道場の昼食

団居儀礼(マドイギレイ)

 泣き虫の少年。金髪茶色の目。女の子のような顔。7歳。


獅子倉了(シシクラリョウ)

 ギレイの友達。武術の心得あり。黒髪黒目。8歳。ギレイは獅子(シシ)と呼ぶ。


玉城利香(タマシロリカ)

 ギレイの友達。了の許嫁。領主の娘。長い黒髪黒目。かわいい少女。7歳。


玉城拓タマシロタク)

 利香の兄。領主の息子。子供ながらに村の中ではばをきかせている。黒髪黒目。10歳。


獅子倉重気(シシクラジュウキ)

 村で代々続く道場の師範。了の父親。若い頃は国中で暴れていたらしい。

 二つ名『黒鬼』。冒険者ランクS。人外の扱いである。黒髪黒目2mを超える体躯。


獅子倉かなえ(シシクラカナエ)

 ジュウキの妻で了の母。道場で孤児を幾人か育てている。みんなの母親がわり。

 落ち着いて見えるが最盛期には冒険者ランクAを誇る女傑。


穴兎(アナザー)

 本名は不明。ネットに住まう情報屋。ギレイのネット仲間。色々なことを教えてくれる。


 *******


 山に囲まれるシエン村に住んでいる儀礼は、田舎らしいのんびりとした日常を、過ごしていた。


 武術を教える獅子倉の道場にはよく遊びに行っている。

 儀礼の両親と祖父は教師のためいつも学校にいて家にはいない。


 儀礼が父母を手伝おうと学校にいれば、上級生の女の子たちに絡まれ着せ替え人形にされてしまう。


「ギレイ君なら似合うよ~」

 などといいながら自分のしていたリボンをほどきギレイの髪を結う子。


「妹に小さくなったんだけど、ギレイ君なら絶対似合うから着てみて」

 と差し出されるひらひらのワンピース。


 低学年の儀礼には、高学年女子の集団に逆らう勇気はなかった。


「やめてよ~」と泣いたところで、可愛いと騒がれるだけ。

 母に似た容姿をどれほど嘆いても変わるわけでもない。


 黒髪黒目の村落に金髪天使の顔立ち。

 母の仕事復帰のため、2歳頃まで教室内に揺りかごを置いて育った。


 それはもう、手の届くところにある赤ちゃん人形(見た目は天使)……。

 女の子と勘違いしてわざわざ女の子用の服を作ってくれた誰かのおばあちゃんまでいた。


 ギレイが本気で嫌がる4、5才頃まで、両親ですら止められずにいたらしい。

自力で対抗できる高学年までの数年を祖父の研究室にこもるか、獅子倉の道場で凌いでいた。


 獅子倉の道場には重気(ジュウキ、了の父親)の連れてきた柄の悪い男が多く、女の子はあまり近寄らない。


 ギレイにとっては一種の安全地帯だった。

 その日は学校が早く終わる日で、一人で食べるんなら家においで、と昼食を了のお母さんのかなえさんに呼ばれていた。


 かなえさんもジュウキさんと同じくもと盗ぞく団ん……、あ、隠れてない、伏せ字で伏せ字。

 盗賊と言うよりは傭兵のようなものだったらしいけど、ギルドに依頼受けに行くと依頼主の方がひいちゃうような存在だったらしい。


 そうだ、ここで言っとく。獅子のうちの食事は戦場だ。弱肉強食、早い者勝ちみたいな。

 山のように乗せられた大皿のおかずが瞬く間に消えていく。

 自分の茶碗にキープしていた物も一瞬の油断で奪い取られる。


「お前ら、もっと行儀よく食えっ」

 ジュウキさんは言うけど、ジュウキさんが食べ続けてる限りそれは無理なんじゃないかな。


 一番食べてるのはジュウキさん。

 手下たち(じゃない、門下生)はジュウキさんの分には手を出さない。

 下の子達から奪っていく。奪われた方はさらに下から。

 弱いものは食べられない。


 本当に小さい赤ん坊とか4歳位までの子にはかなえさんがしっかりジュウキさんの所から取ってあげてたりする。


 小さい子は獅子の弟妹ではなくて、ジュウキさんがどっかから拾ってきた孤児。

 ジュウキさんのせいで孤児になった子の一部だって。


 一部ってなんだろう。

 ジュウキさんは豪快な人だけど、たまにはぐらかす。


 ネットでアナザーに聞いてみたら、ジュウキさんはすごい有名人なんだって。

 ランクSをつけられた化け物って。町を壊したり、人をたくさん殺したり……。


 そりゃ、見た目は大きいし、強いし、怒ったらすっごく怖いけど、ちゃんと優しいところもある、と思う。


 目の前で、次々に減っていく食べ物を見ながらギレイは考えていた。

 奪われそうになる手持ちのおかずを持ち前の素早さをいかしてかわす。


 食事はゆっくりするべきじゃないかな。

 ちらっと斜め向かいに座っている利香ちゃんを見る。

 この戦場の中、信じられないほど落ち着いて食べている。領主の娘らしく上品に。


 その両隣は獅子と拓ちゃんで、しっかり利香ちゃんを守っている。

 拓ちゃんは次期領主のはずなのに、こんなとこでも生きていけるなんて強い坊っちゃんだよ。


 そろそろ、小さい子が食いっぱぐれてきた。

 と言っても、僕らより小さい子はそんなにいないんだけどね。


 僕らが2年で、それより下だと4人。

 その中で女の子が1人。小さな女の子はさりげなくジュウキさんのそばにいる。

 ジュウキさんは小さい女の子からは無理矢理取らないから。


 だから泣いているのはちびの男の子三人。

 あと何ヵ月かすれば、自分の分の守り方とか覚えるんだろうけど。

 やっぱりちょっとかわいそうで。


「ほら、泣いてないで、早く食べて強くなるんだぞ」


 僕の持ってたおかずを一つずつ入れてやる。

 すかさず獅子が手を出してきたから取られないように隠してやる。

「小さいやつはたくさん食べて大きくならなきゃいけないんだぞ。栄養が足りなくなっちゃうだろ」


 この間読んだ「こどもの栄養」という本にバランスが重要だって書いてあった。

 僕は肉を食べ終わったちび達に野菜を入れてやる。

 量は少ないけどないよりまし。


 きっと、道場の誰かがやったら修行にならないって重気さんは怒るけど、僕は入門してないし、いつもいるわけじゃない。

 たぶん、大丈夫……。


「野菜の中のビタミンは体を元気にしてくれるからな」

「まあ、ギレイ君は物知りだね。さすがマドイさんの息子だよ」

 かなえさんが誉めてくれた。


「そうだな、小さいやつは食べて大きくならなきゃな」

 拓ちゃんが僕の茶碗におかずを入れた。

 拓ちゃんがちび達にあげたらジュウキさんは怒るけど、僕は門下生じゃなくて……。


 でも知ってる。これは拓ちゃんの意地悪だ。

 ニヤニヤした顔で拓ちゃんが口だけを動かして言った。

『ちび』と。

儀礼は泣きたくなったのだった。

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