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第五話  後宮・・・

ブランカ視点でのお話です

入内の支度を整えた私は、両親や兄弟姉妹、祖母と別れの挨拶を行うと、王宮から差し向けられた馬車に乗った。

王宮・・・というか、宮内庁から私を迎えに来た女官のフェロル侯爵夫人と、後宮で私の世話をしてくれる侍女のアンナも一緒だ。


あらかじめ渡されていた入内の順序によると、馬車はまっすぐ王宮に向かわず、まず、都の郊外にある離宮

『 メニーナ宮殿 』

に行き、そこで小休憩をとるらしい。


なんでも、数代前の皇帝の皇后・・・第一后妃で、『 国母 』 と、今も称えられる マルガレータ皇后が妾妃しょうひだった頃、この離宮で暮らしていたことから、皇帝の後宮に入内する娘達は必ずこの離宮に立ち寄って、小休憩をすることが慣例となったそうだ。


でも・・・

今日は、私以外にも数人の貴族令嬢が、皇太子殿下もとい新皇帝陛下の後宮に入内することになっている。

離宮とはいえ、入内する令嬢同士が同じ部屋でぱったり出会う・・・なんてことにならないといいけど


なんて思っていたら、フェロル侯爵夫人が、その疑問に答えてくれた。


離宮に到着する時間と、王宮に到着する時間は、入内する令嬢によって少しずつずらしてあるため、入内する令嬢同士が離宮で出会うことはないんだそうだ。

あ、納得。



メニーナ宮殿で、紅茶とお菓子の供応を受けたら、いよいよ王宮へと向かうこととなる。

フェロル侯爵夫人が、私が退屈しないように話しかけてくれるが、私ははっきり言ってそれどころではなかった。


だって、この馬車、やたら上下に揺れるんだもん。

いえ、揺れる原因は馬車じゃなくて。

本当は石畳の道にあるんだけどさ、がたがた上下にゆれる馬車に乗っていると、馬車に慣れている私ですら乗り物酔いしそうになってしまう。


アンナやフェロル侯爵夫人は、よく乗り物酔いしないなぁ・・・


なんて思いながら、ちらりと侯爵夫人の顔を見たら、侯爵夫人も少し青ざめていて。

「 次に令嬢のお出迎えの任を賜ったら、メニーナ宮殿から王宮までは別の道を通ってもらいましょう 」

と、小声で言っていた。



やがて、馬車は王宮に到着した。

見慣れない門から、私を乗せた馬車は、王宮の敷地内に入る。

なんでもあの門は 『 月の門 』 と言って、入内する令嬢専用の門だそうだ。


大きな建物の前で、アンナの介添えの下、馬車を降りる。

と、そこには、きっちりとした礼装の初老の男性と、黒の宮廷ドレスをまとった貴婦人が、数人の侍女とともに立っていた。

私はマンティラを脱いでアンナに渡すと、それを合図にフェロル侯爵夫人が二人の前にすすんで頭を下げ


「 ウエスカ伯爵令嬢 ブランカ様を、お連れいたしました 」


と、挨拶をした。

私も軽く頭を下げ、ドレスの裾を軽く広げた姿で挨拶する。


「 ウエスカ伯爵 パブロ・ホセ・デ・ウエスカ が長女 ブランカでございます。

このたびは皇太子殿下のお傍にお仕えいたす名誉を賜り、光栄でございます 」



「 ようこそ、ウエスカ伯爵令嬢。

私は皇太子殿下付きの女官長を務めております、イサベル・マリア・デ・クエンカと申します。

こちらは、皇太子殿下の侍従長であるアランフェス子爵。

ウエスカ伯爵令嬢の入内を、心からお喜びいたします 」



女官長の型どおりの挨拶を聞き終わると、私は女官長の先導の元、これから暮らす住まいへと案内された。



そこは、

後宮

と、言っても、女官長や上級女官といった高位の女性達が暮らす建物だった。


「 こんな所で暮らさねばならないの? 」


と、アンナは文句を言っていたが・・・

新皇帝の后妃や妾妃のための後宮の建物は、現在、改築中だとかで。

戴冠式までには整うから、それまでの間、入内した全ての令嬢達は、この後宮女官用の建物で生活することになっているのだそうだ。


その建物は、南北に貫く建物が一つあり、その建物を中心として、そこから東西に4つずつ翼のような建物が伸びていた。

私が与えられた区域は、『 王 』 に似た形をした建物 ( 正確には横棒が一本多いが ) の、南から二番目西側の翼だった。

南側は庭園に面しており、また図書室も近い。

翼の付け根の部分には、私付きの女官に任じられたフェロル侯爵夫人の住まいがあって。

私としては、少し緊張していた。


とにかく、しつらえられた部屋に入り、ドレスを脱いで普段着のドレスに着替える。


皇太子殿下に、初お目通りするのは明後日の朝。

どんな方なのだろうか???


ま、私はここで静かに暮らせればいいから、寵愛を賜ろうが賜るまいが、どうでもいいけどね。

馬車の上下振動が半端じゃないのは、実話です。

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