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第十三話 もうすぐ収穫祭

収穫祭前のお話。

ブランカ視点です

私が入内して2ヶ月近くが過ぎ、秋は深まっていった。

庭園に咲く花々も、コスモスや萩は既に終わり、金木犀が芳香を放っている。


アンナやファナが時折教えてくれる後宮内の噂話は、半月後に迫った

収穫祭

の、話が多くなった。


収穫祭


皇帝陛下が祭主となり、皇帝陛下をはじめとした国中の貴族やその名代が、王宮内の西の神殿に赴いて。

今年の収穫の恵みを、秋の女神・ハリーフに報告し、感謝する

と、いう、十日間にわたって行われる、秋、最大のイベントだ。


この収穫祭の中の、いくつかの儀式には、召使以外の後宮の女人たち・・・后妃候補を含む、后妃・妾妃と女官、侍女、近習の参加が義務付けられている。

特に、私達后妃候補にとって重要になるのは、3日目の昼間に行われる


女神・ハリーフへの拝礼


と、


8日目の夜に、表御殿にて行われる皇帝主催の、


収穫感謝の舞踏会。


そして、最終日の夜に、秋の神殿の奥深くで行われる


皇帝と女神の秘め事


だ。


女神・ハリーフへの拝礼は、拝礼する順序が、今後の後宮内の地位を示すようなものだし、

舞踏会の最後に皇帝とダンスを踊る方は、第一后妃・・・日の妃( ソル・レイナ ) と決まっていて。

今は、ソル・レイナはおいでにならないため

『 どなたが皇太子殿下の最後のダンスのお相手に選ばれるか 』

で、戴冠式の時に、ソル・レイナとして戴冠する可能性がグンと上がる。

そして、皇帝と女神の秘め事 にて、女神の代わりとして皇帝と交わるのは、第二后妃・・・月の妃 ( ルナ・レイナ ) と、決まっているが、こちらも今はおいでにならないため、

『 どなたが皇太子殿下の夜のお相手をするのか 』

が、話題になっているのだ。


ま、私は・・・そんなことどうでもいいけどね。


なんて思いながら、今日も、

皇太子殿下のお迎え

の、時刻を迎えた。



いつものように、濃い目のドレスに身を包み、フェロル侯爵夫人とともに廊下の所定の場所で待っていると、見かけない一人の女性が現れた。


その女性は、シンプルだが質のいい衣装をまとい、黒真珠の髪飾りをつけている。

胸に光るのは、大粒の真珠だ。

品のいい・・・それでいて、どこか高貴な雰囲気をまとった方だ。


神殿の方角から現れたその方は、困惑しているような表情の女官達が居並ぶ中を、私達后妃候補が並ぶ場所においでになられ、ヘタフェ男爵令嬢のソフィア様の前で立ち止まると


「 ねぇ、そこのあなた。 その衣装、着替えてきたら?  そのピンク色のドレス、あなたにちっとも似合っていないし、皇族たちは服喪中なんだよ? 何がなんでも、その色はないでしょ? 」


と、口走ったのだ。


「 なんですって? 」


ソフィア様が、驚いた声を上げたときには、既にその方はローサ様の前に立っていて。


「 あなた・・・よね? お金にしか興味がない吝嗇な子爵の令嬢は? 」

「 はぁ???? 」

「 もっといい物、着たら? その宝石も、質のいいものに見えないわ 」


と、笑顔で口走ったのだ。


私たちが、ある者は怒りを露にし、ある者は泣き出しそうな顔を見せる中、その方は涼しげな顔で。


「 あ・・・変わり者で知られる伯爵令嬢って、あなたよね。 もっとも、ドレスや宝石の選択は見事だけど 」


私の前に来たその方は、そんなことを口走られた。

変わり者なのは本当の事だし、私自身も認めていることだから、私は腹が立たないばかりか、却っておかしかったけれど。


その方が、カロリーナ様の前に行かれたとき。

フェロル侯爵夫人が、そっと私に耳打ちしてくれた。


その方 は、皇太子殿下の姉上である

エウヘニア皇女様

で、あると。



「 あの方が・・・エウヘニア皇女様 」

「 はい。御年25歳になられます 」

「 え?? フェロル侯爵夫人、皇女様は25歳になったら後宮から出て。 皇帝陛下から賜った離宮なり、後見人のお屋敷なりに移らなければならないのでは? 」

「 確かに・・・そうでございます。 実は、エウヘニア皇女様は、今年の初めに隣国の王妃として嫁がれることになっていたのでございますが・・・先帝陛下が御崩御なされたため、婚礼は来年の初夏まで延ばされることとなりまして。 本来でしたら、その間も、王宮から離れた離宮でお過ごしになられるのが慣例なのでございますが、皇太子殿下のたってのお望みで、こうして留まっておいでなのでございます 」

「 そうだったんだ・・・ 」


高貴な雰囲気をまといながら、毒舌を吐いていく皇女様。

その皇女様の後姿を、私は何気なく眺めていたが・・・


神殿の鐘の音とともに、私は、ドレスのスカートを広げ、頭を下げました。



やがて・・・皇太子殿下が、クエンカ侯爵夫人とともにおいでになられました。

いつもと違って、皇太子殿下は、私たちに


「 みな、頭を上げるように 」


と、申されたのでございます。

私達・・・勿論、私もですが、頭を上げると、女官長のクエンカ侯爵夫人様はこう語られました。



「 みな、既に知っていると思いますが、半月後に 収穫祭 が広かれます。 今年は、皇太子殿下がご即位前の収穫祭と言うこともあり、本来でしたら皇帝陛下とともに祭主を勤められるルナ・レイナ様が任命されておられません。 つきましては、今年の収穫祭は、ルナ・レイナ様の代わりを、こちらにおいでのエウヘニア皇女様が務められることとなりました。 また、舞踏会 と、秘め事の儀式 に置いて、皇太子殿下のお相手を務める方は、後ほどお知らせいたしますので、よろしくお願いいたします。 最後に、后妃候補の方々は、全員が拝礼と舞踏会の為に、ドレスをそれぞれ一着、新調することになっております。 一両日中に、衣装部の女官が皆様方の下を訪れる手はずになっておりますので、お支度を整えてお待ちくださいませ 」



また・・・ドレスですか。

まぁ、収穫祭は楽しみですから、それまでのんびり出来るといいのですが・・・

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