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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

イヤホンから聞こえる音

作者: 西山景山
掲載日:2026/08/27


 出勤のため駅で電車を待っていると、突然音が聞こえなくなった。


「おい聞いてんのか!! イヤホンしたまま突っ立ってたら危ねえつってんだろうが!!」


 振り向くと、額に青筋を立てた男性が俺を睨みつけている。男性の手には、俺の耳から奪い取ったワイヤレスイヤホンが握られていた。

 すいません、と謝り男性の手からイヤホンを返して貰う。居心地が悪くなった俺はすぐにその場を後にした。


 男性が見えなくなる位置まで離れてから再びイヤホンを両耳に着ける。流れてくるお気に入りのロックをBGMに別の列に並び直した。


 自分の中で勝手なルールを決めて、それに背く者は徹底的に排除する。そんな人間がこの世界には少なからず存在する。

 音楽を聴きながら電車を待っているだけで、誰に迷惑をかけるでもない。それでも誰かのルールに背いてしまったら敵意を向けられる。

 そういう時の最善の対処法は一つ。できる限り関わらないことだ。


 会社へ行くために家から最寄り駅まで五分ほど歩いて、更に電車の中で五分ほど揺られて、極めつけに駅から会社まで5分ほど歩く。短いようで長い、憂鬱な出勤時間。

 その時間をできる限り楽しい気分で過ごすために思いついたのが、家から会社まで音楽を聴きながら歩くことだった。


 しかし、最近どうもイヤホンの調子が悪い。いつも決まった時間に耳をつんざくようなノイズが聞こえてくる。何か大きな物どうしがぶつかるような衝撃音で、それは一週間ほど続いている。最近買ったばかりでかなり高額のイヤホンのため、新しいものに変えるのも勿体無かった。


 音が鳴るタイミングはいつも、駅のホームで電車を待っている時。


 ああ、またか。


 今日も衝撃音が耳を貫く。

 気のせいかもしれないけど、今日は耳だけじゃなく身体全体に響くほどの衝撃音だった。


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