表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

ひまわり畑の秘密

作者: 萩乃 玲
掲載日:2026/06/15

※コミティア156で出した本に掲載した作品の全文です。

 まるで黄色の絨毯を敷いたような、辺り一面にひまわり畑が広がっている。

 子どもの私たちよりも背は高く、中へ踏み入ると方角も分からなくなってしまう。

 夏の間だけ出現する迷宮。

 誰も知らない、私と彼だけの秘密の場所。

 私たちのはしゃぐ声は青空に吸い込まれ、誰にも聞かれることはない。

 このままずっと二人だけでいられたらなんて素敵なことだろう。

 そんな考えに囚われてしまったのはきっと夏のせいだ。

 私の気持ちを伝えると彼も笑って頷いてくれた。

 私たちの心はぴったりと寄り添っていた。


 ひぐらしの鳴き声が寂しげに響く夕暮れ、彼が行方不明だと大人たちが騒ぎ出した。

 あちこちを探し回るけれど何の手掛かりも見つからない。

 神隠しのようだと誰かが言った。そんなわけはないのに。

 私だけが、彼がどこにいるのか知っている。その優越感が私の心を満たしていた。


 みんなが寝静まった真夜中、こっそり家を抜け出した。

 月明かりを頼りに鼻歌混じりにあの場所へ向かう。彼が私を待っている。

 二人だけの秘密。甘美な響きに自然と笑みが溢れた。


 風が黄色の絨毯を撫でつけてさらさらと鳴った。

 薄闇に浮かぶ無数のひまわりは、星空を観察するように思い思いの方向を見上げている。

 夏の夜の静けさを虫の音が引き立てる。

 目を凝らすと、ひまわり畑の中でぼんやりと光る白い手が飛び出ていて、位置を知らせるようにゆっくりと振られているのが見えた。彼がここだよと、私に教えてくれている。

 ひまわりをかき分けて、彼の元へ向かう。

 辿り着くと足元の土の色が他の場所と比べて違っていて、少し盛り上がっている。

「おまたせ」私が声をかけても、彼の返事はない。

 それでも全く構わない。だって彼はここにいるのだから。

 誰にも教えない。私と彼だけの秘密。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ