プロローグ
(キーーーーーーッ…ドン!!!!)
……
私は【アイデル・ホーリール】!
私は今日、王立魔法学園【ユーリル・アルーヌ】の高等部1年生になる!
じつは色々あって、平民の私はありがたいことにこの名門校に入学することになったの…!
私はこれから3年間、一体どんな人たちに出会って、どんなことを知って、どんな人生を送るんだろう…
いきなりの貴族生活になれるんだろうか…
そんなちょっぴりの不安もあるけど……
…でもとっても楽しみ!
……
…と、いうのがこのゲームのあらすじだ。
私は【藍沢 琴美】。いわゆる限界社畜だ。
これと言ってなにも努力をせず、失敗と死を極度に恐れ、安定した道を何も考えず生きてきた人間。そういう人間は必ずと言っていいほど、会社の駒としていいように扱われてしまう。絶対嫌だけど、こんな人間は過労死がオチだ。
私もそのうちの一人。
しかし、そんな私にも楽しみの一つはあった。
唯一の楽しみ。趣味。生きがい。
それが『ゲーム』。とくにRPG。
その中でもこの、『王立魔法学園 ユーリル・アルーヌ』、略して『ユーアル』は、相当ハマった。
洗練されたゲームシステム、BGM、作画、どれをとっても一級品。
……めんどくさいのはギャルゲー要素だが…
しかし、それでも私はこれを生きがいにしていた。
様々なタイプの魔法の中から一つか二つ選び、組み合わせて別のタイプの魔法に進化させたり、
周回プレイをして女性主人公とは思えない脳筋ぶりで無双したり、
様々な楽しみ方ができて、それも全て緻密に調整され、程よい難易度で遊べる…
もうほんっと最高。
時間どろぼうという言葉がよく似合う神ゲーなのだ!
断言しよう。
私は『ユーアル』をやり込みまくった。プレイ時間はゆうに数万時間は超えている。
私はこのゲームが大好きだ。
…そんな大好きなゲームの世界に転生してしまった。
よりにもよってラスボスの悪役令嬢である、
【セリオーレ・アルーヌ】に…
……
と、いうのがこのマンガのあらすじ。
僕は【赤羽 玲】。普通の大学生だ。
僕は最近悪役令嬢モノにハマっていて、この
【私のラスボス日記〜ラスボスの悪役令嬢に転生した私、主人公と妹から処されないように立ち回る〜】
略して【ワタラス】にハマってる。
よくある悪役令嬢モノで、王道な展開が好きな僕にとってちょうどいい王道さで、小説版も買った。
しかも、こういうタイプのマンガや小説の表紙は、ちょっとキャピキャピしてて、明るい表紙が多くて、外に持ち運ぶにはハードルが高い。そうなるとブックカバーをまた新しく買わないといけない。
でも、【ワタラス】は落ち着いてる表紙で、普通の小説の表紙の雰囲気のまま。だから持ち運びのハードルも低い。何気にそこも、オタクを隠したい僕にとって都合がいい。
僕はこのマンガが好きだ。
……なんか、【ワタラス】のあらすじみたいだな。
僕はこのマンガが好きだ
なんて…
【ワタラス】ならこのまま転生しちゃうんだけどね。
ほんとに転生しちゃったりして。
もしそうなったら…
…んー
へへ…………
いや、まあそんなわけないかー。さすがにね?
(キーーーーーーッ…ドン!!!!)
────────────────────
1270年6月3日、名家であるアルーヌ家に、一人の少女が誕生する。のちにこのオーデェング国に大きな影響を与える、【セリオーレ・アルーヌ】である。
彼女はアルーヌ家第12代目当主であり、王立魔法学園[ユーリル・アルーヌ]学園長でもあったバンダル伯爵の娘の一人として生まれた。逸話によると、なんと生後2カ月で簡単な会話を交わすようになったという。
そんな天才児として生まれた彼女に、人々は様々な期待を寄せていた。
…がしかし、成長するにつれわかっていく。
━彼女の髪色は、忌まわしいとされている黒髪だったのだ━
人々の期待はだんだんと、畏怖へと変わる。
それは、幼い彼女でもわかってしまう、悲しい変化であった。
しかし、伯爵は黒髪だからと差別はせず、むしろ高等教育を彼女が幼い頃から行う。
伯爵はわかっていたのだ。
『偏見とは、無知から生まれる。』と。
『何事も圧倒的な知識で説き伏せばいい』と。
セリオーレは、あまり武芸の才には恵まれなかった。しかしその圧倒的な知識を活かしながらも、絶え間ない様々な努力の末に、闇魔法の復活と応用開発を大成する。
のちに人々は彼女をこう評する。
『賢者 セリオーレ』と。
……なぜ彼女がここまで努力できたのか。
彼女はこう語った。
「レイリィに殺されたくないからよ!!」
────────────────────
1273年7月10日、アルーヌ家にまた一人、少女が誕生する。【レイリィ・アルーヌ】である。
バンダル伯爵の愛娘の一人であり、アルーヌ家の次女として生まれた。
彼女は昔から、5つ離れた優秀な姉と比べられ生きてきた。
物心ついたときにはもうすでに武芸に励み、剣術と魔術を磨き続けた。その技術は、姉をも凌ぐと言われている。
王立魔法学園[ユーリル・アルーヌ]では、首席の姉に次いで次席で入学し、毎年行われる『男女混合トーナメント制模擬戦試合』で毎年王者に輝くほどであった。
対峙した選手たちからは、『凍てつく目のレイリィ』として恐れられた。
姉のセリオーレ曰く、全てを達観した見方をしており、ときに姉の自分を見てとても冷たそうな表情をしていたと言う。
しかし、そんな異名にもなるほどのレイリィが持つ冷たい目は、先頭に立つ軍人として、また外交の大使館として、とても役に立ち、彼女がテロや戦争を止めていたとも、セリオーレは語る。
また、冷たすぎて命を狙われていると何度も思ったとも語る。
『賢者 セリオーレ』を震え上がらせた妹のレイリィはのちにこう語られる。
『武者 レイリィ』と。
……なぜ、彼女はそれほどまで強かったのか。
彼女はこう語る。
「…平和を守りたいから。」
────────────────────
玲は目が覚めると、巨人メイドたちに囲まれていた。目の前に巨人が表れ、頬を濡らしながらも大声でこう叫ぼうとした。
「助けて!!!」
しかし、だんだんとあることに気がつく。
メイドたちが巨人なのではない…自分が小さくなっている…
……まさか
あ、赤ちゃんになってる!!??
そうわかったのと同時に、ある少女にこう呼ばれる。
「おはよう。レイリィ。私の妹ちゃん。」
そう彼はなんと、【ワタラス】のラスボスである、
【レイリィ・アルーヌ】に転生してしまったのである。
うそ………
……セーちゃん(セリオーレの愛称)の少女姿まじかっわいいっ!
玲はセリオーレの限界オタクだった。
ラスボスの姿になり、性別すらも変わったとしても、それは変わらなかったのである。
これは、大好きな悪役令嬢モノのマンガに転生した人間の物語である。




