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風のアモール~氷雪の大陸にて~  作者: 葉月奈津・男


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19/23

第19話 それぞれの明日へ ①

神々の戦いが終わり、夜が明ける。

アモールたちは、すべてを終えて、仲間のもとへ帰ってきた。

そこにあるのは、涙と笑顔、そして新しい朝。

今回は、旅の終わりと、それぞれの“明日”へ向かう物語です。


本日はエピローグ5話を連続投稿して、完結となります。


 スラインローゼの復活、ゼナの暴走の停止、ダルトンの封印——すべての使命を果たした達成感を胸に、アモールとサラサはシレーネたちのもとへ戻ってきた。


 つらい報告を届けるために。


 そんなこととは知らず、シレーネとメモリーは歓声を上げて二人を迎えた。


 アモールは、ゼナとスラインローゼの関係、異界への旅立ち、そして別れた後の出来事をすべて話した。


「・・・そう、わかったわ。なんとなくだけど、そんな予感がしてた」


 泣き出すかと思いきや、シレーネは静かに頷いた。

 強がりかもしれない。

 でも、泣き続けるよりずっと強い。


 メモリーは、何も言わず、ただ微笑んでいた。


 一通り話し終えると、四人はマルコの待つ一階の部屋へ向かった。




 まだ夜明け前。

 起きているとは思えなかったが、もし目覚めていたら——そう思うと、居ても立ってもいられなかった。


 特に、置き去りにした負い目のあるサラサは。


「おそ〜い!!」


 部屋に入った瞬間、マルコの怒声が飛んできた。


「遅すぎるよ! 目を覚ましたら誰もいないし、お腹はすくし、寒いし、暗いし、それに、それに・・・!」


 怒り、寂しさ、心細さ、そして喜び。

 感情が入り混じって、マルコはアモールの胸に飛び込み、泣き出した。


「バカ、バカ、バカ! あたいを独りぼっちにして! 大ッ嫌い!!」


 大粒の涙を流しながら、アモールの胸を叩く。


「で、でも、それは・・・」


 言い訳を探すアモールだったが、マルコの潤んだ瞳を見て、何も言えなくなった。


「・・・ごめん、悪かったよ」


 素直に謝り、アモールはマルコを抱き上げ、肩に乗せた。


「わっ!!」


 驚いたマルコだったが、すぐにアモールの頭に優しくしがみついた。


「お詫びに街まで乗っけてってやるよ。案内を頼むぜ、船長!」


「・・・よろしい、出帆旗ヨーソロ!」


 涙を拭いたマルコの顔は、青空のように晴れやかだった。


 アモールは走り出す。

 光あふれる外界へ、無限の広がりを目指して。


 シレーネ、サラサ、メモリーの三人は、微笑みながらその背中を見送る。


 やがて顔を見合わせ、目で頷き、三人も走り出した。


 その顔には、苦しみも悲しみもなく、朝日に向かって駆けていく希望と勇気だけが輝いていた。


 塔を出て、街の廃墟を抜けた先に広がっていたのは——青と紅、紫が混ざり合う美しい空。


 雲ひとつない、澄み渡った空は、彼らの心そのものだった。


 もはや、暗黒の雲も、死の大地もない。

 《白き竜》も姿を消していた。


 荒れる風も、氷の刃も、もう飛んではいない。


 一面に広がる白銀の大地だけが、過去の名残を静かに抱いていた。


 冬が終わり、春が来る。


 すべてのものに——



「これでもう、氷世雪が起こることはないわよね」



 シレーネは、村人たちの絶望に曇った顔を思い出す。

 でも、もう悩む必要はない。


 絶望は希望に、苦しみは喜びに変わった。


 雪に閉ざされた大地が目覚め、命が芽吹く。


 白と銀の時代が終わり、青と緑の輝きが流れ始める。


 彼らは、自然と歩き出していた。


 本来あるべき場所へ。

 彼らを待つ誰かのところへ。


 吹き抜ける風に、小鳥のさえずりが聞こえたような気がした。



最後まで読んでくださって、ありがとうございます。

アモールたちは、すべてを乗り越え、ようやく“帰る場所”へとたどり着きました。

それは、ただの終わりではなく、新たな季節の始まり。

次回、彼らが選ぶそれぞれの道と、未来への一歩が描かれます。

どうか、最後の一歩まで、彼らと一緒に歩んでください。

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