第19話 それぞれの明日へ ①
神々の戦いが終わり、夜が明ける。
アモールたちは、すべてを終えて、仲間のもとへ帰ってきた。
そこにあるのは、涙と笑顔、そして新しい朝。
今回は、旅の終わりと、それぞれの“明日”へ向かう物語です。
本日はエピローグ5話を連続投稿して、完結となります。
スラインローゼの復活、ゼナの暴走の停止、ダルトンの封印——すべての使命を果たした達成感を胸に、アモールとサラサはシレーネたちのもとへ戻ってきた。
つらい報告を届けるために。
そんなこととは知らず、シレーネとメモリーは歓声を上げて二人を迎えた。
アモールは、ゼナとスラインローゼの関係、異界への旅立ち、そして別れた後の出来事をすべて話した。
「・・・そう、わかったわ。なんとなくだけど、そんな予感がしてた」
泣き出すかと思いきや、シレーネは静かに頷いた。
強がりかもしれない。
でも、泣き続けるよりずっと強い。
メモリーは、何も言わず、ただ微笑んでいた。
一通り話し終えると、四人はマルコの待つ一階の部屋へ向かった。
まだ夜明け前。
起きているとは思えなかったが、もし目覚めていたら——そう思うと、居ても立ってもいられなかった。
特に、置き去りにした負い目のあるサラサは。
「おそ〜い!!」
部屋に入った瞬間、マルコの怒声が飛んできた。
「遅すぎるよ! 目を覚ましたら誰もいないし、お腹はすくし、寒いし、暗いし、それに、それに・・・!」
怒り、寂しさ、心細さ、そして喜び。
感情が入り混じって、マルコはアモールの胸に飛び込み、泣き出した。
「バカ、バカ、バカ! あたいを独りぼっちにして! 大ッ嫌い!!」
大粒の涙を流しながら、アモールの胸を叩く。
「で、でも、それは・・・」
言い訳を探すアモールだったが、マルコの潤んだ瞳を見て、何も言えなくなった。
「・・・ごめん、悪かったよ」
素直に謝り、アモールはマルコを抱き上げ、肩に乗せた。
「わっ!!」
驚いたマルコだったが、すぐにアモールの頭に優しくしがみついた。
「お詫びに街まで乗っけてってやるよ。案内を頼むぜ、船長!」
「・・・よろしい、出帆旗ヨーソロ!」
涙を拭いたマルコの顔は、青空のように晴れやかだった。
アモールは走り出す。
光あふれる外界へ、無限の広がりを目指して。
シレーネ、サラサ、メモリーの三人は、微笑みながらその背中を見送る。
やがて顔を見合わせ、目で頷き、三人も走り出した。
その顔には、苦しみも悲しみもなく、朝日に向かって駆けていく希望と勇気だけが輝いていた。
塔を出て、街の廃墟を抜けた先に広がっていたのは——青と紅、紫が混ざり合う美しい空。
雲ひとつない、澄み渡った空は、彼らの心そのものだった。
もはや、暗黒の雲も、死の大地もない。
《白き竜》も姿を消していた。
荒れる風も、氷の刃も、もう飛んではいない。
一面に広がる白銀の大地だけが、過去の名残を静かに抱いていた。
冬が終わり、春が来る。
すべてのものに——
「これでもう、氷世雪が起こることはないわよね」
シレーネは、村人たちの絶望に曇った顔を思い出す。
でも、もう悩む必要はない。
絶望は希望に、苦しみは喜びに変わった。
雪に閉ざされた大地が目覚め、命が芽吹く。
白と銀の時代が終わり、青と緑の輝きが流れ始める。
彼らは、自然と歩き出していた。
本来あるべき場所へ。
彼らを待つ誰かのところへ。
吹き抜ける風に、小鳥のさえずりが聞こえたような気がした。
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
アモールたちは、すべてを乗り越え、ようやく“帰る場所”へとたどり着きました。
それは、ただの終わりではなく、新たな季節の始まり。
次回、彼らが選ぶそれぞれの道と、未来への一歩が描かれます。
どうか、最後の一歩まで、彼らと一緒に歩んでください。




