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間近で見るスカイブルーの瞳は、食堂の窓から照らされる光に透けて透明感があり、神秘的な湖のようだった。
私はハッと我に返り、顔を逸らし下を向いた。
危ない……。こんな間近で見ちゃった。気持ち悪がれちゃうかな……。
私は落ち着かずソワソワしていた。
「あ、あの……。秘書官……。ターラさんがご飯を作ってくれるそうですし。座りませんか?」
マティアスは少し身をかがめて、オリビアの耳元で囁いた。
「結婚相手は、私が紹介してあげよう」
「へ……?」
それは耳元に吐息がかかる距離だった。私は耳が熱くなり、やがて顔全体に広がっていった。
ますます、顔を上げられない。マティアス様は私の身の上を心配して下さっているだけなのに……。
こんなことで動揺して、いい歳して恥ずかしい……。
早く返事をしなければいけないのに……。上手く言葉が出ない。
仕事の仮面がガラガラと崩れ落ちていく。
「あ、ありがとうございます。しかし、私の事で秘書官のお手を煩わせる訳にはいかないです。秘書官はとてもお忙しいですし……」
私はなんとか平静を装いながら、言葉を絞り出した。心臓は早鐘を打って、マティアス様に聞こえてしまうのではないかと、冷や汗が出る。
「秘書官……ね。オリビアさんとは、もう2年の付き合いなのに、いつまでも秘書官と呼ぶんだね。他の者は皆、名前で呼んでくれるよ」
「あ、え……?お名前……?」
「そう……、名前で呼んでくれる?」
いまだに近い距離に、私は限界を迎えていた。頭の中は真っ白になって、何も考えられなくなっていた。
私は長い髪を横に一つにまとめて、前に垂らしていた。その髪の毛の一房をマティアス様は手に取った。
そして、マティアス様の形の良い唇が触れた。
ひぃ!!えっ!今何がおこったの~!?
「そう、マティアスと呼んで欲しい……」
恐る恐る目を上に向けると、熱のこもった瞳と目が合った。
「…………っ!!」
私は全身が心臓になったかのようになり、さらに鼓動が早まった。
マティアス様にこの気持ちがバレてしまうのではないかと心配になり、距離をとろうと後ろにさがった。
ガタン!
「わっ!!」
足元にあった椅子に足をとられ、椅子ごと倒れるところだった。
そう、倒れるところだった……。
マティアス様の金髪の美しい髪が顔にかかる程、二人の距離は近くにあり、彼の力強い手が私の背中を支えていた。
「急に動いたら危ないよ……」
そう言ってマティアス様が立たせてくださった。
「あ……、ありがとうございます……」
恥ずかしい!動揺して椅子にぶつかって倒れそうになるとか!
もう早くこの場から逃げ出したい!そこへ助け舟がやってきた。
「マティアス様、お待たせいたしました!あまり材料が残っていなくて、まかない料理になってしまいますが……」
ターラさんは申し訳なさそうに言う。
「とんでもないよ。こんな時間に働かせてしまってすまないね。あとで菓子とお茶を届けよう」
マティアス様はターラさんに微笑みかけた。
国でも有数のアークライト公爵家。その嫡男がマティアス様。本来ならもっと偉ぶっても良いはずなのに、彼は身分に関係なく公平に接することで有名だ。
ターラさんの身分は平民。でも彼は一度も横柄な態度を取ったことがない。
貴族でも位が高くなるほど、食堂を利用せずお抱えのシェフの料理を持参する方も多い中、マティアス様はいつも同僚と食堂に来ていた。
侍女たちや、女性文官は彼に熱い視線を送っていた。彼はそんなことはお構いなしに、いつも男性の同僚と食事を楽しんでいた。
仕事の時とは違い、少し砕けた表情や笑顔に、私も釘付けになっていた。
でも、こんな行き遅れの冴えない文官に見られているなど、噂になったら迷惑がかかるので。私はいつも食堂の端の目立たないところから、彼をみていた。
まじめに仕事をしても、同僚や上司から差別的な発言を受ける事は日常茶飯事。男社会だから仕方がないとあきらめていても、大丈夫なわけではない。
そんな殺伐とした生活の中で、お昼食堂で彼を眺めるという習慣は、私にとってこの上ないご褒美だった。また午後から頑張ろうと思えた。
そんな彼が上司になってしまった。
秘書官は数名おり、皆身分の高い方ばかりで、秘書官補佐はその秘書官を補佐する文官だ。
私はマティアス様の秘書官補佐。他にも4名おり、皆ベテランばかりだ。
秘書官補佐になる初日、担当秘書官を集め私を紹介してくれた。
そして、「女性だからと軽視する発言が見られたものは、即座に厳罰に処すから覚えておくように」と、他の秘書官補佐にくぎを刺してくれた。
私は驚いてマティアス様を見た。マティアス様は美しい笑顔を向けてくれた。
「君が文官として頑張ってきて、優秀だからここにいるんだ。自信をもって業務にあたってほしい。何か不便なことがあったらいつでも言ってほしい」
心に熱いものが込みあげてきたが、ぐっとこらえて返答した。
「はい!ご期待に応えられるよう、精一杯務めさせていただきます。皆さま、どうぞよろしくお願いいたします」
こんなにも美しい方で、紳士的で正義感の強い方を、皆が好きになってしまうのは当たり前だ。マティアス様は純粋な気持ちで私を守って下さった。
私も良い仕事をして、マティアス様に恩返ししたいと思った。その日、私の不純な気持ちは箱にしまった。
私は脳内で振り返りながら、二人のやり取りをみていた。
「いつもありがとうございます。マティアス様!私どもにまで、気を使ってくださって」
ターラさんがマティアス様に頭を下げた。
「頭を上げて。ターラさんたちがいなかったら、私たちは倒れてしまうからね。本当にいつも、おいしい食事をありがとう」
「もったいないお言葉です……。うれしいです。皆にも伝えさせていただきます!」
ターラさんは目元の涙をハンカチで拭って、調理場に戻っていった。私はほほえましくその様子を見守っていた。
「さあ、いただこう!オリビアさんもまだ食べるよね?一人は寂しいから」
マティアスは笑顔だが、少し強引に言った。
「あ、はい……」
私とマティアス様は向かい合って座り、食べ始めた。
「キミのは冷めてしまって申し訳なかったね」
「いえ、大丈夫です……」
「ところで、明後日は何か用事あるかな?」
「いえ、何もありませんが……」
「そう……。じゃあ、その日に紹介するよ」
「え……?何をですか……?」
「結婚相手……」
マティアス様の形の良い唇が弧を描いた。
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