目が覚めたら魚介系とんこつスープの中にいた
タイトルの通りだった。
まぁ、でも、説明しないと意味はわかってもらえないだろう。
私の名前は椎川このみ。
仕事の拘束時間はとても長いがお給料はとても少ないブラック企業に勤めるOLだ。
給料日前はいつも小麦粉を食べてしのいでいる。
毎月の赤字で作った借金は300万円ちょっとある。
意識を失う前、私は職場にいた。
残業36時間、終わりの見えない仕事の中で、仕事をしながら夢を見ていた。
見る夢はとんこつラーメンだった。
「ラーメン……」
もう3ヶ月以上も口にしていない、大好物のとんこつラーメンを夢に見ながら、家に帰れないため小麦粉で飢えをしのぐこともできず、それでもなんとか保っていた意識が、
切れた。
目が覚めたら私は白濁したお風呂の中にいた。
ぐつぐつと沸騰しているので、いやお風呂じゃないな、これとすぐわかった。
そしてまた、匂いですぐにわかった。ここがどこなのかが──
「とんこつスープの中だ!」
私は大喜びでスープを飲もうとした。
しかし、飲めなかった。
私には口がなかったのだ。
いや、正確には、口はあるものの、カラカラに干からびていて、それを動かすことができなかった。
私は、煮干しだったのだ。
私は、煮込まれていたのだ、豚の骨さんと一緒に。
つまりこれは魚介系とんこつスープなのだ!
好きだ!
飲みたい!
ここにコシのある白い中細縮れ麺を入れて、啜りたい!
ずぞぞぞぞと音を立て、心ゆくまで味わいたい!
うああああ!
しかし、私には、口がない!
それどころか人間ですらない! ただの煮干しだ!
涙を流すこともできない!
今度産まれてくる時は──
どうかラーメンを食べられる口がありますように──
そう願いながら──
私の意識はとんこつスープに溶けていった。
……と、いう夢を見た。




