澁谷
私の名前は時代。14歳の中学3年生。
今回は太平洋側の主要都市である東京、名古屋、大阪を襲う未曾有の大災害を抑えるために国に依頼されて東京に上京してきた。
私は学校が大大大好きだから夏休み中にその依頼が来て良かった。
私は東京に派遣されたんだけど、何故だか1人きりでお付きの人がいない。
未曾有の大災害だ。田舎もんの私が独りで大都会へ。
バスや電車を乗り継いで目的地の澁谷を目指さなければいけない。
私の実家は長野と群馬の県境辺り。標高の高い山に囲まれたド田舎にある集落だ。
そんな辺鄙な地形だが日本地理としては大きな意味を持つ。
日本を中央付近で東西に分けるフォッサマグナの中でも更にそのド真ん中。
このフォッサマグナは曲者で、日本を隙あらば崩壊させようとしてくる。
左右に引き裂こうとしたり、上下に割ろうとしたり、
そうはいくもんかと私達の一族で安定させるということを
先祖代々やっているのだ。
100年に1度くらいの頻度で、我々の仕事を詐欺師だ、ペテンだと喚く勢力が出てくる。
その度にじゃあ勝手にすれば。1日後に見ておけよ。と
わぁぁぁぁぁ!!!すんませんでしたぁぁぁぁぁ!!
信じさせることは簡単。仕事をしなくなるととたんに各地で不具合が出るからだ。
ここは預言者や占い師とは違うところであろう。
常時仕事をし続けているのだ。
災害の予知も可能ではあるのだが、世間を混乱に陥れてはいけないので、
その内容に関しては、政府高官にのみ伝えてある。
今回は南海トラフ地震。私のお婆やお母はずっと政府に訴えかけてきたのだが、太平洋側の津波に対する備えをしてくれなかった。私達が伝えたことを信じていない訳で無いのは分かっているのだが、聞き入れてくれない。決定権が無いからと言われてはどうしようもないのか。
東日本大震災においては忠告すら信じてもらえずに津波被害を大きく受けた。10年かけて9m~15m程の防波堤を作ったのだが、この規模のものを今度は太平洋側に作らねばならない。
日本の三大都市である東京、大阪、名古屋。この三都市ともに港区が存在する。東京、名古屋はみなとく、大阪はこうくと読む。港とつくだけあって海が近い。東京の港区にはアクアパーク品川とかアクアリウムGA☆KYOという水族館がある。名古屋には港区水族館が、大阪には海遊館がある。いずれも海抜で言えば0〜2m台である。どの港区も海抜3mもいかない。大都市の中といっても埋め立て地や地盤沈下もあり海抜がマイナスの地点すら存在し、地下街などは軒並み···である。大阪USJなども埋め立て地に建てられている。
南海トラフ地震の津波予想を3mとしているがこれは論理が逆ではないのだろうか?備えられるのが3mまでなのである。東北の沿岸部のように15mの津波に耐えられるとするには予算がかかり過ぎて、公約にかかげても当選は不可能であろう。任期の間に大津波が来ることが無いように祈っている。まぁそんなところだろう。
もちろん予算とリスクのバランスではあるだろうが、東日本大震災の津波を各種メディアの媒体で見て、南海トラフ地震の津波を3mと想定するという事にそこで暮らしている多くの人はどう思っているのだろうか?
もしくは最初から私達に頼る心算でいるのか?
地震を抑え、津波を止める。そういう訓練を積んできている。
名古屋には奈子さん(18)。大阪には浪花姉さん(19)が向かった。
奈子さんも浪花姉さんも修行を共にした私の親戚だ。
私の事をとても可愛がってくれる。
奈子さんは鬼ギャル。髪を真っ金にしてメイクやネイルもばっちり。制服の着こなしに命をかけている。
今回の遠征にも東京に行きたいとかなりゴネていたが、お婆の決定は絶対。何となく地域と名前の響きでどこに行くかを決めた感じもするけど、裏を返せば私達が産まれた頃から既に予知されていたとも読んでしまう。適当に決めた方が濃厚だけど。
浪花姉さんは凄く綺麗な落ち着いた感じの美人さん。とても優しい。大阪のイメージは全くないのだが、一番被害が大きくなるのは大阪なのだそうで、浪花姉さんが向かってくれるなら何となく安心だ。
私がなぜ東京なのか…。奈子さんとできれば変わって欲しいんだけど…。
高級住宅街なんて言われている港区から洪水被害が拡大して、東京中が押し流されるようなので、
私は港区の西側にある澁谷に向かう。水を止める止める止める。
思えば遠くに来たもんだ。
澁谷にある明治神宮の神主さんを何とか訪ねて協力を仰ぐ。巫女さんもやってきて全員で整列して頭を下げてお出迎えをしてくれる。ほんと恥ずかしいです。朝のラジオ体操やってからスタンプもらってからいやいや来たぐらいなんです。災害の抑止が終わったらお付きの人がやってきて観光できる。クレープおごってくれるらしいので頑張る!お付きの人が来るのが遅い理由は聞かされていない。
本日は8月4日の月曜日。南海トラフ地震の予定日。最近話題になった「たっき涼」さんって凄いね。私達の言い方で言うとあの人は預言者じゃなくて呪言師なのよね。未来にある事を予知するんじゃなくて、予知する事でその未来を引き寄せる力。別に悪い事ばかりじゃなくて、エネルギーが溜まる前に、早めに発散させたり、皆の注目を浴びさせて、力を空回りさせる事もできるから使いようによっては大きなメリットがあるの。私達の住んでいる山では、人を襲うことになるはずだった熊を幼体で早めに駆除したりとかのために言霊を行使してたよ。
南海トラフ地震をこれまで抑えてきたけど、あまりにも準備が整わないから起こさざるを得ない状態になったそう。20歳未満の私達3人が津波を抑える。
物凄い事大変な事なんじゃ…?
と思われるかもしれないけれど、フォッサマグナの大暴れ具合を思えば10m程の津波のエネルギーは簡単に抑えられるだろう。
気象庁の観測ではM7.9までしか速報で出せない。東日本大震災においても、5日前のカムチャッカ半島の地震においても、速報はマグニチュードがそのぐらいであった。そのエネルギーから津波の高さ予想を出すのは間違いだ。そこだけは早めに改善して欲しいのにずっと直ってない。M7.9やM8.0が出されれば実際はそれ以上である可能性が高いので高くへ逃げる。その心意気が必要である。
ただし今回は逆である。地震が起こった際の揺れや津波は私達が抑えるので報道ではMの大きさや津波の高さは偽装し低くするよう政府高官から報道への通達がなされている。東京では大の大人が数千人規模で今回の事態に備えているが、私にとっては朝飯前である。夏休み課題がまだ全く進んでいない方が深刻である。東京救うから、自由研究だけでも誰かやってくれないかな?
そして災害の時刻。浪花姉さん、奈子さん、私の順で被害を抑える。最大震度は7から6弱へ。Mは8.5から7.5へ。津波高は7mから2.5mへ。あまり抑えすぎても再発が近くなるので、被害は抑えつつ、エネルギーは発散させられる程度の揺れに調整する。
私達3人はグループ通話を開始。
「おっつー、浪花姉!時代っち!」
「はい。お疲れ様です!奈子さん、浪花姉さん。」
「うふふ。お疲れ。2人とも。どうだった?」
「別に何てことねーっすよ。」
「そうですね。東京という都会にはなんだか敗北感がありますけど。」
「都会ってだけで凄いエネルギーだものね。でもそれだけの多くの人達を守れたんだから、私達の一生の誇りになるわ。」
「うん。きっと忘れないと思うわ。」
「私も!」
「…、、、ちょっと待って、、、」
「北朝鮮が日本に核を撃ってきたらしいわ。」
「人災か…。ウチらの弱点を突いてきたね。」
「観光してる場合じゃないわね。すぐ集落に戻りましょう。向こうの能力者はフォッサマグナを突いてくるでしょうからね。」
「あぁ、私のクレープ…。私の夏休み…。」
「はっはっはっ!一番の大物は時代だな!」
このような日本を襲う様々な不思議な力は波のようにやってきます。
それらは人の持つ不思議な力によっていつの世も跳ねのけてきたのです。
今後も彼女達一族の助けもあり何だかんだうまく乗り越えてくれることでしょう。