第7話 森の木漏れ日の宿
街の片隅、小道の奥にひっそりと佇む木造の宿――
『森の木漏れ日』と書かれた看板が、揺れる木々の影に溶け込んでいた。
外観は静かだが、扉の向こうからは暖かな灯りと楽しげな笑い声がこぼれている。
――いい雰囲気の宿だな。
そう思いながら扉を開けると、明るい声が迎えてくれた。
「いらっしゃーい!」
カウンターに向かうと、若い女性がにこやかに立っていた。
「えーと、宿泊したいんだけど」
「はい。一泊二食付きで銀貨五枚(五千円相当)、一か月なら金貨一枚(十万円相当)です」
「じゃあ、一か月でお願いします」
金貨を差し出すと、彼女は受け取りながらほほ笑んだ。
「ありがとうございます。私はシーナ、よろしくね」
「俺は冒険者のテルトだ」
彼女に案内され、二階の部屋へと上がっていく。
扉を開けると、中はこぢんまりとしていながらも清潔感にあふれ、きちんと整えられていた。
「こちらがお部屋です」
「綺麗な部屋だな」
「はい、それが自慢なんです。夕食の支度ができていますので、頃合いを見て降りてきてくださいね」
荷物を置いて一息つき、ゆっくりと一階の食堂へと降りていく。
「こちらへどうぞ」
通された席に腰を下ろすと、ほどなく料理が運ばれてきた。
「さあ、召し上がれ!」
笑顔で差し出してくれたのは、恰幅の良い女性。料理人の風格が漂う。
「うまい! 特にこのシチューが絶品だ!」
「ははは、味がわかる男は好きだよ。あたしゃこの宿の女将、ジョナサンだ。困ったことがあったら何でも言ってくれ」
「それなら、いい武器防具屋を紹介してほしい」
「それならバイセンのところだね。職人気質で頑固だけど、あんたなら大丈夫さ。まあ、頑張んな」
「ああ、頑張るよ。それから――このシチュー、おかわり!」
「あいよ!」
女将の絶品料理を堪能したあと、部屋に戻ってベッドに横になる。
「ステラ。今日もいろいろあったな」
(マスター、そうですね。これまでの成長を確認するため、ステータスの確認を推奨します)
「そうだな。――ステータス」
目の前に光の画面が現れた。
テルトのステータス
闘気:三百二十
魔素:二百二十
スキル:
身体強化/自動再生/気配察知/状態異常耐性/言語理解/地図捜索/鑑定/魔素制御/高速演算/並列演算
戦技:
真空斬/鉄壁/重破斬
魔法:
なし
「闘気が三百二十……数週間前は八十だったのに。魔素もゼロだったはずが……」
(はい、マスター。これは日々の鍛錬と戦闘経験の成果です。今後は、訓練場でのことを踏まえ、更なる解析と強化、そして効率化を進めていきます。ご期待ください)
「いや、ちょっとほどほどにな……」
ステラは時々やりすぎるが、この異世界で生きていくには頼もしい存在だ。任せておけば間違いはない。
「魔法は、まだ習得してないのか」
(マスター、ご安心を。すでにスキルとして魔素制御、高速演算、並列演算を獲得しています。鑑定スキルを使って詳細を表示します)
魔素制御:
魔素の流れを感知し、適切な量と方向で制御する能力。魔法の発動、持続、威力調整、属性変換など、すべての魔法行使に関わる基本スキル。
高速演算:
魔法構築や戦術判断を一瞬で処理する思考加速型の補助スキル。脳の働きを極限まで引き上げる。
並列演算:
複数の魔法発動、感知、思考を同時に行えるスキル。一人で複数行動を並行して実行可能。
「こ、これは……魔素制御はステラの支援で得たとして、高速演算と並列演算はステラとリンクした経験から?」
(マスター、さすがです。私の解析結果と完全に一致しています)
魔法――MMORPGでは散々使い倒したが、実際に使えるとなるとやっぱりワクワクする。
そう思いながら、俺は目を閉じた。
異世界での新たな一日が、静かに幕を下ろしていく。
街の片隅、小道の奥にひっそりと佇む木造の宿――
『森の木漏れ日』と書かれた看板が、揺れる木々の影に溶け込むように静かに揺れていた。
もし少しでも楽しんでいただけたら、リアクションや★、ブックマークで
応援してもらえると励みになります。
皆さんの反応が、次話を書く原動力です。




