表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移したら、世界を統治していた超AIが俺の頭の中にいた件  作者: 月詠 神路


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/61

第51話 クラン設立に向けて

 そして、ここからが本当の意味で忙しかった。


 まずはSランク冒険者登録の正式申請、クラン設立に必要な各種許可書への署名。

 目を通すだけでも骨が折れる量の書類に、ひたすらサインを重ねていく。


 次に取りかかったのが――拠点となる土地選びだった。


 カナンベールの街は王都とよく似た構造をしている。

 中央に平民街、北にはカナンベール公の宮廷。

 東は貴族街、西は商業街、南にはギルドや雑貨街が広がっている。


 既存のクラン拠点は貴族街に集中しており、ヤナックたち《逆鱗の契り》は商業街を拠点にしている。


(ステラ、どの辺りにクランを構えるのがいいと思う?)


(マスター。この街の成り立ちやギルドとの関係性を考えると、平民街が最適ですが……居住区のため、広い土地が確保できません)


(だよな。となると……その奥のスラム街か。よし、一度見てみよう)


 商業ギルドの紹介で、土地仲買人のもとを訪ねた。


「テルトさん、お待ちしておりました。この度はSランク昇格、誠におめでとうございます。クラン設立にあたり、土地選びはぜひ我々にお任せください」


「よろしくお願いします」


 数枚の書類がテーブルに並べられ、それぞれの土地について説明を受けるが――

 正直、どれもピンとこない。


「カーチスさんやヤナックさんたちと、拠点が被らない場所を希望します」


「承知しました。それでしたら……こちらはいかがでしょう」


 提示された土地は、居住区のど真ん中だった。


「……ここだと、住民に迷惑がかかりそうだな」


 そのとき、一枚の書類に目が留まる。


「ここはどうだ?」


「テルトさん、その土地はスラム街に近く、治安も良くありません。加えて、スラム側からの干渉を受ける可能性があります」


「干渉、か。でもその分、広くて安い。一度、実際に見せてもらえるかな」


(マスター、仲買人の顔色がかなり悪いです)


「は、はい……ですが、正直おすすめは……」


 現地に足を運ぶと、確かに人通りは少ないが、立地も悪くなく、拠点としては十分な広さがある。


「――おい。ここで何をしている?」


 見るからに柄の悪い男たちが声をかけてきた。


「土地を買うつもりで、下見してるだけだ」


「はぁ? 誰の許可を得て、テレロナさんの土地に手を出そうってんだ」


「許可なら、この仲介人からだ」


 振り返ると、仲介人は今にも泣き出しそうな顔をしていた。


「なるほど、商業ギルドの紹介か。だがな、購入できてもテレロナさんの許可なしに、ここは使えねぇ」


 俺は仲介人に小声で告げる。


「……もう帰っていい」


 そして男たちに向き直った。


「なら、その許可をもらおう。テレロナに会わせろ」


「会わせろだぁ? 生意気な野郎だ。少し痛い目を見せてやる」


 殴りかかってくるが、正直、相手にもならない。

 軽く身をかわす。


「……俺たちを子供扱いか。ただ者じゃねぇな」


 そのとき、一人が俺の胸元に目を留めた。


「……なに! ブラックプレートだと。そういえば、今朝、Sランクが二人誕生したって話が。一人はカーチス、もう一人が――テルトだ!」


 男たちは一斉に顔色を変え、頭を下げる。


「す、すまねぇ! まさか、Sランクのテルトさんとは知らず……」


「その言い方だと、俺がSランクじゃなきゃ、そのまま殴ってたってことだよな?」


 俺は拳を握る。


「テレロナに会わせろ。断るなら……わかってるよな?」


 男たちは観念し、奥へと案内した。


 扉を開けると、無数の視線がこちらを向く。


「……何しに来た」


「土地を買うためには、テレロナの許可が必要だと聞いた。話をしに来ただけだ。本人はいるか?」


「はぁ? 寝言は寝て言え」


 男の拳を軽く受け流し、スキル《威圧》を解放する。


 一瞬で、場の空気が凍りついた。


「……やめな。あんたたちじゃ、相手にならないよ」


 そう言って、一人の女性が前に出てきた。


「いいね、その度胸。嫌いじゃない。部下が失礼したね。《威圧》を解いてくれ。――私がテレロナだ」


「わかった。俺はテルト。この一帯の土地が欲しい」


「なるほど。《威圧》だけで部下を黙らせるとは……流石はSランク。それで、なぜ土地を」


「ここに、俺のクランを設立する」


「……本気かい? ここはスラム街だ。近衛兵が出入りするようになれば、あたいらの居場所がなくなる」


 彼女の右腕は義手。

 顔には火傷の痕。


「気づいたかい。ここにいるのは、訳ありばかりさ。犯罪者、元奴隷、障害者…… スラムだが、皆必死に生きてる」


「だからこそ、だ」


 俺は一歩前に出る。


「俺のクランで働かないか。仕事を用意する。生活も、今より良くなる」


「はは……本気で言ってるのかい」


「ああ。本気だ。俺の計画を聞いてくれ」


 クラン設立の構想。

 スラム街を巻き込んだ雇用計画。

 俺はすべてを話した。


「……本気で、ここまでの規模を?」


「本気だ」


「成功すれば、スラム街はクラン街になる。だが、皆まともに働ける身体じゃない」


「できることをやればいい。それに――皆をここに集めてくれ」


 俺の目を見て、テレロナは頷いた。


「……集めな」


 人が集まる。


「皆、聞いてくれ。これから起きることは、他言無用だ」


(ステラ、やるぞ)


(了解。全力でサポートします)


 俺は魔素を限界まで高める。


「……異常な魔力だね。あんた、一体何を」


「《オメガ・エリア・パーフェクトヒール》」


 神々しい光が、場を包み込む。


「……な…… 右腕が……戻ってる…… 顔の火傷まで……!」


「……成功だ。よかった……」


 歓喜の声が上がる中、俺の意識は、静かに闇へ落ちていった。


 ――クラン誕生は、すでに始まっていた。




 気がつくと、ベッドの上だった。

 体が少し重い。だが、心地よい疲労感だ。


「テルトさん、気がついたようだな」


 声の方を見ると、テレロナたちが床に正座していた。

 皆の顔には、涙の跡が残っている。


「見てくれ。あたいの右腕と顔を。全部、元通りさ。それに部下たちも……」


 皆がそれぞれ、自分の体の治った箇所を指さす。

 火傷、傷跡、欠損――それらがすべて消え、健康な肌が戻っていた。


「よかった。これで普通に働けるだろう」


「そんな……“普通に働ける”なんて、夢みたいだよ」


 テレロナが小さく笑う。その瞳は、うっすらと涙に濡れていた。


「テルトさん。あたいら、この礼をどうすればいい」


「さっき話しただろう。ここにクランを建てる。その手伝いをしてくれ」


「いいかい、あんたたち! これからボスはテルトさんだ。歯向かった奴は、あたいが許さないよ!」


「おおお!」


 スラムに歓声が響き、皆が涙をぬぐいながら笑っていた。

 その光景を見て、胸の奥がじんと熱くなる。


 その後、仲買人のところへ行き、テレロナの了承を得たことで正式に契約が結ばれた。

 こうして、俺は新しい仲間と、新しい拠点を手に入れた。



 さて、ここからが本番だ。


 俺が土地を手に入れたことで、商業ギルドから次々と紹介が入る。


「テルトさん、ぜひ我が商会にクラン設立のお手伝いを。材料、人員、資材の手配、すべてお任せください」


「ありがたいですが、あの土地は元スラム街でもあります。だからテレロナさんにも協力してもらう予定なんです。一緒に進めましょう」


 その言葉を聞いた商人は、途端に顔を引きつらせた。


「い、いや……それなら、我々が出る幕では……」


「何を言ってるんですか。商業ギルドからの正式な紹介ですよね? 紹介しておいて断るなんて、筋が通らないでしょう。まさかSランクの俺を軽んじてるわけじゃないですよね?」


「め、滅相もございません! そんなことすれば不敬罪になってしまいます!」


「ですよね。それと――これを」


 俺は懐から二枚の手形を取り出した。


「まさか、その印章……」


「そう。トロイダル商会とジメント商会の手形だ。もしカナンベールの商業ギルドが協力してくれないなら、王都の方に頼もうと思ってね」


 その場の空気が一気に変わる。

 後ろにいた男がゆっくりと前に出てきた。


「私は商業ギルド長のインダクトです。テルトさんもお人が悪い。こんな大仕事を王都に持っていかれては、こちらの立場がありません。ぜひ、我々にお任せください」


「そう言ってくれると助かる。それと、テレロナさんたちのことですが――安心してください、皆“普通”です」


「普通……ですか?」


「まぁ、会ってみればわかりますよ」


 俺はインダクトをテレロナたちに引き合わせ、正式にクランの建設が始まった。


 まず、ステラと一緒に描いた設計図をインダクトに見せる。


「こ、これは……す、すばらしい! ここまで細密で丁寧な図面は見たことがありません。しかし、これほどの施設を建てるとなると、費用が――」


「心配はいらない」


 アイテムボックスから白金貨百枚を取り出し、テーブルに置く。


「これが頭金です。資材と魔道具の手配を頼みます。完成したら、さらに白金貨百枚を支払います」


「……まさか、ここまで本気とは。承知しました。商業ギルド、全力で協力いたします!」


 俺とインダクトは固く握手を交わした。




もし少しでも楽しんでいただけたら、リアクションや★、ブックマークで

応援してもらえると励みになります。


皆さんの反応が、次話を書く原動力です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
前話からクラウンとなっていますがクランではないですか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ