表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移したら、世界を統治していた超AIが俺の頭の中にいた件  作者: 月詠 神路


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/50

第50話 Sランクの重み、クラウンの始まり

 俺たちは宿へ戻り、それぞれの部屋でしばし休憩を取ることになった。

 扉を閉めた途端、張りつめていた緊張が一気に抜ける。


(ステラ、謁見では色々あったが……俺がSランク冒険者で、クラウンを設立、か)


(マスターであれば当然の結果です。しかし……これからが大変になるかと)


(だよな。Bランクから一気にSランク。ファイアドラゴンを単独討伐。そのうえクラウン設立……そりゃ、噂が広まらないわけがない)


(はい。しかし、それ以上に重大な点があります)


(重大な点?)


(マスターはSランクに昇格したことで、男爵と同等の地位が与えられます)


(……えええっ!? 本当か?)


(はい。領地はありませんが、名誉貴族としての扱いになります)


 名誉貴族、か。

 正直、喜ぶ余裕なんてない。


 参ったな……今さら断れる話でもないし、

 なんだか陛下に上手く“はめられた”気分だ。


 それに、勢いで

「クラウンを設立します」

 なんて言ってしまったものの――


 実際、何から始めればいいんだ?


 そんなことを考えていると、部屋の扉がノックされ、皆が揃って訪ねてきた。


 最初に口を開いたのはクリフトだ。


「君のことだ。これからのことで悩んでいるだろうと思ってね。皆で様子を見に来たんだ」


「……はい。まさに、その通りです」


 俺がそう切り出すと、自然と全員の視線が集まる。


「陛下からクラウン設立の許可はもらいました。でも正直……どう動けばいいのか、さっぱりで」


 セリーナが、くすりと笑う。


「テルトくんらしいわね。Sランクになっても、そこは全然変わらないんだから」


「クラウンってのはな――」


 ヤナックが腕を組み、低い声で続ける。


「冒険者の組織みたいなもんだ。依頼をまとめて受けられるし、ギルドや領主とも直接取引できる。だが、運営には金と人手が必要だ。気軽に作れるもんじゃねぇ」


「なるほど……拠点と、仲間を集める必要があるってことか」


「そういうことだ」


 ――この感覚、どこか懐かしい。

 元の世界でやっていたゲームと、よく似ている。


 クリフトが頷きながら、改めて口を開いた。


「だが、テルトくん。君ほどの冒険者がクラウンを立ち上げるなら、ギルドとしても全面的に支援しよう。資金の手配や登録手続きは、私が引き受ける」


「……ありがとうございます」


 クリフトは穏やかな笑みを浮かべる。


「クラウンは、信頼で成り立つ組織だ。君のような人物が率いるなら、多くの冒険者が自然と集まるだろう。焦らず、まずは形を整えるといい」


 ロゼッタが、そっと微笑んだ。


「テルトさんなら、きっと――誰もが安心して身を預けられる、素敵なクラウンになりますよ」


「……ありがとう。みんながいてくれるなら、なんとかやれそうな気がする」


 クリフトとカーチスが、同時に頷いた。


 俺たちは王宮を出たあと、それぞれ別行動を取ることになった。


 俺とロゼッタは、王都でも名高いトロイダル商会へ向かう。

 店に足を踏み入れると、店主のトロイダルと、ジメント商会のジメントが揃って出迎えてくれた。


 トロイダルが、いつものにこやかな笑みで口を開く。


「聞きましたぞ、テルトさん。Sランク昇格、まことにおめでとうございます」


「ありがとうございます。……相変わらず、情報が早いですね」


「商人にとって情報は命ですからな」


 俺はアイテムボックスから、社交界用のドレスコード一式とアクセサリーを取り出し、二人の前に差し出した。


「トロイダルさん、ジメントさん。お借りしていた品を返しに来ました」


 トロイダルは楽しそうに目を細める。


「社交界は大成功だったそうですな。洋服店の店主が、わざわざ礼を言いに来ましたぞ。陛下から直々にお褒めの言葉を頂いたとかで、今や貴族からの注文が殺到しているそうです」


「そうなんですか……」


「そこで店主からです。このドレスは、礼を兼ねてテルトさんに差し上げたいとのこと。必ずお伝えするよう頼まれましたので、どうぞお受け取りください」


「えっ!? これ、相当高価な品では……」


「お気になさらず。テルトさんは、もはやSランク冒険者。王都のみならず、各地の社交界へ招かれる立場です。その際、このドレスが話題になれば――宣伝効果は計り知れません。損して得を取る。それが商人の心得ですな」


 俺とロゼッタは思わず顔を見合わせ、同時に苦笑した。


 トロイダルとの話が一段落したところで、ジメントが一歩前に出る。


「テルトさん。アクセサリーについても同じです。我がジメント商会にも、すでに注文が殺到しております」


「いや……こちらはドレス以上に高価でしょう。

 さすがに受け取れません」


「確かに高価です。ですが、我々が受けた恩は、その比ではありません。どうか、遠慮なさらずお納めください」


 しばらく押し問答が続いたが――相手は百戦錬磨の商人。結局、俺が根負けした。


「……参りました。そこまで言われたら、大切に使わせてもらいます」


 ジメントは満面の笑みで頷いた。


 そしてトロイダルが、ふと思い出したように切り出す。


「ところでテルトさん。クラウンを設立されると伺いましたが、資金のご予定は?もしお困りでしたら、我々が力になりますぞ」


「それなら、ぜひ我がジメント商会にも」


(ステラ、確かにクラウン設立には金がかかるな。元の世界のMMORPGでも、ギルド拠点を作るのは大変だった。白金貨十枚じゃ、正直心もとない)


(マスター、ファイアドラゴンの素材はどうでしょう)


(……ああ、そうか。その手があったな)


「それなら――これを売れば問題なさそうですね」


 俺はアイテムボックスから、ファイアドラゴンの素材を次々とテーブルに並べていく。


 火竜の瞳石かりゅうのとうせき――溶岩のような深紅の輝きを放つ宝石。


 サラマンドライト

 ――火精霊を宿した宝石。炎耐性装備の加工に最適。


 フレイムクリスタル

 ――体内で生成された炎の結晶。魔道具の核に用いられる。


 火竜の骨粉

 ――薬品触媒。生命力を活性化させる効果を持つ。


 竜焔のりゅうえんのつめ

 ――火口をも切り裂く硬度。刀剣・槍の穂先素材に最適。


 灼熱竜翼膜しゃくねつりゅうよくまく

 ――魔力を通すと発火する特殊な翼膜。飛竜装備や高級マントの素材。


 素材を並べ終えた瞬間、ロゼッタが息を呑む。


「テルトさん……ちょっと待ってください。この素材……まさか……」


「ああ、ファイアドラゴンの素材だよ。他にもあるけど、装備用だから、売るのはこれくらいかな」


「これくらい、じゃありません!全部オメガ級――いえ、物によってはエターナル級、伝説級です!」


「さすがロゼッタさん。俺の鑑定でも同じ結果だった。……よかった」


「よくありません!それだけファイアドラゴンが脅威だった証拠なんですよ!?それを単独で討伐するなんて……本当に無茶するんですから!」


「す、すみません……」


 トロイダルが朗らかに笑う。


「まぁまぁ、ロゼッタさん。テルトさんの性格と実力を考えれば、成し遂げられない話ではありませんぞ。それにしても……これほどの最上級素材が次々と出てくるとは、実にテルトさんらしい」


「それで……売れますか?」


「もちろんです。火竜の骨粉、竜焔の爪、灼熱竜翼膜は我がトロイダル商会が。鉱石類――火竜の瞳石、サラマンドライト、フレイムクリスタルはジメント商会さんが扱うのが最善でしょう」


 二人は素材を一つずつ鑑定し、何度も頷き合う。


 やがて、トロイダルが満足げに告げた。


「トロイダル商会分で白金貨百枚。ジメント商会さんからは白金貨百五十枚ですな」


「……白金貨二百五十枚?二十五億円相当、ってことですか?」


「その通り。市場価格での提示です。オークションにかければ、さらに跳ね上がるでしょう。この手の素材は、欲しくてもまず手に入りませんからな」


 確かに――ファイアドラゴンを討伐できる冒険者など、滅多にいない。

 素材が希少になるのも当然だ。


「……わかりました」


「では、代金は冒険者ギルドの口座へ振り込みましょう。……ジメントさん、これから忙しくなりますな」


「ええ。お互いの息子に、この取引を任せましょう」


「うむ。これほどの素材、商人人生でも滅多に扱えません。良い経験になるでしょうな」


 二人は固く握手を交わした。


 俺はロゼッタに視線を向ける。


「ロゼッタさん。カナンベールへ戻ろう」


「はい、テルトさん」


 ――こうして、クラウン設立に必要な資金は、一気に現実のものとなった。

 次に待つのは、拠点と仲間集めだ。



もし少しでも楽しんでいただけたら、リアクションや★評価、ブックマークで

応援してもらえると励みになります。


皆さんの反応が、次話を書く原動力です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ