表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移したら、世界を統治していた超AIが俺の頭の中にいた件  作者: 月詠 神路


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/50

第47話 王前にて示される疑念

 翌朝――

 俺とロゼッタさんは、王都から迎えに来た馬車に乗り込み、王宮へ向かっていた。


「久しぶりの王宮だわ」


 窓の外を眺めながら、ロゼッタさんが懐かしむように言う。

 馬車の中で彼女は、王宮での立ち居振る舞いや、注意すべき点をいくつか丁寧に教えてくれた。


 一方の俺はというと――正装の窮屈さに少し辟易していた。

 だが、不思議と体に馴染み、動きにくさは感じない。

 さすがトロイダル商会が用意してくれた最高級品だと、内心感心する。


 ふとロゼッタさんに目を向けると、そのドレス姿に思わず言葉を失った。


「……どうしたの? そんなに見つめて」


「いや……とても似合っている。ロゼッタさん、本当に綺麗だ」


「ふふ……ありがとう」


 わずかに頬を染める彼女を見て、胸の奥がじんわりと熱くなる。


 王宮に到着し、案内された部屋でカーチスたちと合流した。

 だが、その空気を壊すように、ヤナックが不快な笑みを浮かべて声をかけてくる。


「テルト、ロゼッタさんに恥をかかせるなよ。お前みたいな田舎者、王宮の豪華さに腰が抜けてるんじゃないか?」


「確かに豪華だが……一度来ているから、もう慣れている」


「はぁ? 見栄を張るなよ。ロゼッタさんの前だからって、嘘までつくのか?」


(ステラ……こいつ、何なんだ)


(おそらく、ロゼッタさんに気があるか、マスターが貢献者に選ばれたことが気に入らないのでしょう。ここは大人の対応を)


「嘘じゃない。それに、初対面の人間に対しては、随分と無礼な物言いだな」


 そう言い返した、その時だった。


 扉が開き、一人の騎士が入ってくる。


「見ろよ、テルト!」


 ヤナックが声を張り上げる。


「あれが王国騎士団副隊長のオルディン様だ。俺はカナンベールで一度、挨拶を交わしているから、お前に格の違いを見せてやる」


 勢いよく駆け寄ったヤナックは、オルディンに手を差し出した。


「オルディンさん! お久しぶりです。カナンベールでお会いして以来ですね」


「……そうだったか」


 オルディンは軽くうなずいただけだった。

 次の瞬間――彼は俺の方へ歩み寄り、肩を叩いて朗らかに笑った。


「おお、久しぶりだな、テルトくん。貢献者の名簿に君の名を見たときは驚いたが……なるほど、君らしい」


「テルトさん……やはり、すごい方だ」


 横でダリオスまで感嘆の声を漏らす。


 その光景に、ヤナックは信じられないという顔をし、

 カーチスたちも言葉を失っていた。


 オルディンは一同を見渡し、改めて口を開く。


「名乗りが遅れたな。王国騎士団副隊長、オルディンだ。実はテルトくんは、我がブリジアント家の客人でね。今日はその挨拶に来たのだ」


「オルディンさん……その件は控えていただけると助かります」


「はは、そうだったな。君は目立つことを好まなかったか。だが――パートナーへの挨拶だけはさせてもらおう」


 そう言われ、紹介しようとした瞬間――ロゼッタさんが俺の隣に立ち、優雅にドレスの裾を持ち上げて一礼した。


「お久しぶりです、オルディンさん」


「……まさか、ロゼッタさん!?」


「はい。その節は、大変お世話になりました」


「これは驚いた……まさか君がテルトくんのパートナーとは。ご家族の件、心よりお悔やみ申し上げる」


「お気遣い、ありがとうございます。けれど……今はテルトさんがそばにいてくれますから、私は大丈夫です」


 その言葉に、思わず息を呑んだ。


 だがオルディンは感嘆の声を上げ、俺の肩を強く叩く。


「ははっ、やるなテルトくん。『社交界の白百合』とまで称されたロゼッタさんを射止めるとはな。君には本当に驚かされる」


 ――社交界の白百合。

 そんな呼び名があったのか。


「オルディンさんは、ロゼッタさんをご存じだったんですか?」


「もちろんだ。我がブリジアント家は代々、騎士団の任を担っている。そしてロゼッタさんのワグナート家は、王都の厩舎を預かり、馬や魔獣を育ててきた名家だ。戦場において馬は命を預ける存在。ゆえに、両家は長く友好関係を結んできた」


「……そういうことでしたか」


「さあ、立ち話も何だ。向こうで腰を落ち着けて話そう」


 そう言って歩き出すオルディン。

 その背後で――ヤナックが悔しさを押し殺し、顔を歪めながら部屋を後にする姿があった。


 しばらくオルディンさんたちと話していると、王宮の案内役が静かに姿を現した。

 いよいよ――謁見の間へ向かう時が来たのだ。


 王宮の奥へと進むにつれ、空気が張り詰めていく。

 高い天井には黄金の装飾が施され、床には深紅の絨毯が敷き詰められている。

 足音すら吸い込まれるような静寂の中、俺たちは一歩ずつ進んでいった。


 謁見の間には、すでにクリフトさんの姿があった。

 そういえば、彼も王都へ来ると言っていたな。


 やがて――壮大なファンファーレが鳴り響く。


 その音に合わせて、グランバール国王が高座に姿を現した。

 圧倒的な存在感に、思わず背筋が伸びる。


「皆の者。この度のカナンベールにおけるダンジョンラッシュにおいて、見事に魔獣を退け、街を守った功績――まことに見事である。グランバール・テイゼンハイムの名において、その働きを讃えよう」


 最初に呼ばれたのは、クリフトさんだった。


「カナンベール冒険者ギルド長、クリフト。其方は一人の犠牲も出すことなく街を守った。その指揮と決断、大義であった」


 陛下から表彰楯を受け取るクリフトさんの姿に、会場から拍手が沸き起こる。続いてカーチスが呼ばれ、同様に表彰を受けた。


(ステラ……なんだか、緊張してきた)


(マスター、深呼吸を。堂々と立っていれば大丈夫です)


 ステラの声に背中を押され、ついに俺の名が呼ばれる。


 胸の奥が高鳴る中、一歩前へ進み、陛下から表彰楯を受け取った。


 ――その瞬間だった。


 後方から、小さく「チッ」という舌打ちの音が聞こえた。


 国王の傍らに控えていた年配の貴族――宰相と思しき人物が、低い声で告げる。


「陛下の御前である。舌打ちをした無礼者がいる。名乗り出よ」


 ざわめきが広がる中、後方から一人の男が一歩前へ出た。

 ヤナックだ。顔を引きつらせている。


「し、失礼いたしました。……私です」


「ヤナック、と申したな。

 其方、なぜそのような無礼を働いた。理由を述べよ」


 陛下の声が、謁見の間に低く響く。


「……祝いの席であるゆえ、即座に咎めはせぬ。だが、その理由は聞かせてもらおう」


 ヤナックは一度息をのみ、ゆっくりと口を開いた。


「恐れながら申し上げます。私は、テルトくんの功績に疑問を感じております。確かに彼は、最初のサイクロプス討伐で功を立てました。しかし――ファイアドラゴンとアースドラゴンが出現した際、彼の姿を見た者は一人もおりません」


「ふむ……。それゆえ、其方は彼の功績に疑念を抱いたということか」


「はい、陛下。その通りでございます」


 謁見の間に、ぴんと張り詰めた空気が走る。

 だが――クリフトさんが一歩前へ出て、深く頭を下げた。


「恐れながら、陛下。発言をお許しください」


「許す。申せ」


「確かにヤナックくんの言う通り、テルトくんはアースドラゴンとの戦いには加わっておりません。

 しかし、彼は我々が戦闘に集中できるよう、森に潜む魔獣を殲滅しておりました。その証拠に、彼の装備は返り血に染まっていたのです」


「ほう……」


 ざわめきが再び広がる。


 しかしヤナックは、なおも食い下がった。


「そこなのです、クリフトさん!我々《逆鱗の契り》も森の援護を担当していました。ですが、誰ひとりテルトくんの姿を見ていないのです!」


 国王の視線が、まっすぐ俺に向けられる。


「テルトよ。今の話、真であるか?」


(ステラ、どうする……?確かに誰にも見られていないが……)


(マスター、正直に。堂々と語る方が、結果的に信頼を得られます)


(……そうだな)


「はい。

 私は、森に潜む魔獣を討伐しておりました」


「ならば、なぜ誰も其方の姿を見なかった。説明できるか?」


「はい。私はエキストラスキル《絶影》と《神速》を使用していました。そのため、視認されなかったのだと思われます」


「……なんと。エキストラスキル持ちか。それならば、確かに納得がいく」


 ヤナックが歯噛みし、唇を強く噛み締める。その場の空気が、わずかに和らいだ――かに見えた、その時。


 一人の大柄な騎士が、前へと進み出た。


「恐れながら陛下。このドルガン、発言をお許しいただきたい」


「許す。申せ」


「テルトくん、久しぶりだな。……君が貢献者名簿に名を連ねたと知った時、再び王国騎士団へ誘うつもりだった。だが残念だ。なぜ、嘘をつく?」


「嘘、ですか?」


「そうだ。アースドラゴンと戦っていた時、君の姿を見た者はいない――それは事実だ。そして、森で魔獣を討伐していたのも事実。だが問題は、“何を倒したか”だ。違うか?」


「それは……」


「ははっ。やはり君らしい。重要な場面で、嘘を突き通せない性格だな。ずばり言おう――君が倒したのは、ファイアドラゴンだな?」


 その一言に、謁見の間がどよめいた。

 無数の視線が、俺に突き刺さる。


「私は……魔獣を倒しました」


 曖昧な返答に、ヤナックが食い気味に叫ぶ。


「そんな馬鹿な!たった一人でSランクのファイアドラゴンを倒せるはずがない!こいつは、冒険者になって一年も経っていないんだぞ!」


「控えよ、ヤナック!」


 ドルガンの声が響く。


「陛下の御前で騒ぐな。王国騎士団隊長として、私の推測には明確な根拠がある」


 国王が身を乗り出す。


「ドルガン殿。その根拠とは?」


「簡単なことです――テルトくん、装備を見せてもらえますかな?」


 俺は困惑しつつも、アイテムボックスから装備を取り出した。

 それを見つめるドルガンの瞳が、鋭い光を帯びる。



ブックマークやポイントを入れて、応援をよろしくね~♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ