表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移したら、世界を統治していた超AIが俺の頭の中にいた件  作者: 月詠 神路


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/46

第33話 王国騎士団長ドルガンと、その手形

「ガハハハ!」


 ひときわ大きな笑い声が訓練場に響き渡った。

 思わずそちらへ視線を向けると、圧倒的な存在感を放つ大男が、こちらへ歩いてくる。


「オルディンの《絶対守護陣》を破る冒険者を見るのは、実に久しぶりだ」


 低く、腹の底から響くような声だった。


「俺は王国騎士団長、ドルガンだ。その若さでこの攻撃力――気に入ったぞ。

 王国騎士団に入れ!」


 ……いきなりだな。


 近づいてきたドルガンは、二メートルを優に超える巨体だった。

 思わず見上げながら、俺は正直に答える。


「俺は冒険者です。悪いですけど、王国騎士団には興味がありません」


「ガハハハ! これは愉快だ!」


 豪快に笑い、ドルガンは俺の背中を叩く……寸前でやめた。

 本気で叩かれたら、冗談では済まなかっただろう。


「隊長である俺に向かって“興味がない”とはな。ますます気に入ったぞ。

 だが、このまま手ぶらで帰すのは騎士団の恥だ。これを持っていけ」


 そう言って差し出されたのは、一枚の手形だった。


「これは……?」


「それは、テルトくんが王国騎士団の“客人”であることを示す手形だ」


 説明したのは、横に立っていたオルディンだった。


「これさえあれば、貴族――そうだな、侯爵クラスであっても君に手出しはできない。

 つまり、君は王国騎士団の庇護下にあるという証だ」


 ……とんでもないものを渡されてしまった。


「いや、こんな物騒なもの、受け取れませんよ」


「駄目だ」


 即答だった。


「これを受け取ることが、王国騎士団に入らないための条件だ」


「条件って……」


 何度か押し問答をしたが、最後には、


「受け取らないなら、国王命令で強制的に騎士団に入れるぞ」


 と、満面の笑みで脅されてしまった。

 ……脅しの内容が重すぎる。


 結局、俺は渋々その手形を受け取るしかなかった。

 横で見ていたオルディンが、申し訳なさそうに肩をすくめていたのが妙に印象に残った。


 その後、部屋に戻り、騎士団との模擬戦について意見交換が行われた。

 ステラが張り切りすぎたせいもあり、気がつけば外はすっかり夕暮れだ。


 今回の模擬戦の締めくくりとして、オルディンが一歩前に出て声を張り上げる。


「王国騎士団の諸君、聞いてくれ。

 テルトくんは、まだ二十五歳だそうだ」


 場がざわめく。


「それに比べ、我々は実に多くを学ばされた。

 今日のことを胸に刻み、鍛錬に精を出し、これからの糧としてほしい!」


 騎士団の面々が、一斉に力強く頷いた。


「それから、今日の出来事は他言無用とする。

 この条件は、模擬戦を実施する際にハルドラン侯爵から出されたものだ。

 肝に命じておけ!」


 そして、オルディンは深く息を吸い――。


「それでは最後に。

 テルトくんに、敬礼!」


 号令とともに、王国騎士団全員が剣を胸に当て、深く頭を垂れる。

 俺もそれにならい、刀を胸に抱えて一礼した。


 正直、かなり居心地が悪かった。


 帰り際、オルディンが穏やかな笑顔で声をかけてくる。


「テルトくん。今日は、私にとっても、騎士団にとっても、実に有意義な一日だった。

 君と交わした意見は、団員たちに大きな刺激になっただろう」


 そして、真剣な眼差しで続ける。


「王国騎士団は、いつでも君を歓迎する。

 気が向いたら、また来てくれ」


「……わかりました」


 オルディンと固く握手を交わし、

 俺たちは馬車に乗り込み、屋敷へと帰路についた。



 屋敷に戻ってからも、オルディンやバックスたちと模擬戦の話で大いに盛り上がった。

 戦技の応酬、判断の分岐、あの一瞬の駆け引き――話題は尽きず、気づけば時計代わりの魔道具が深夜を告げていた。


 結局、床に就いたのはかなり遅い時間だった。


 翌朝――。


「テルトさま、朝食のご用意ができております」


 マルシアが、いつもの穏やかな笑顔で声をかけてくれる。

 俺は慌てて身支度を整え、少し急ぎ足で食堂へ向かった。


 すでに皆は揃っており、席に着くなり昨日の模擬戦の話題が飛び交っている。

 どうやら、昨夜の興奮はまだ冷めていないらしい。


 ダリオスが、どこか感心した様子で口を開いた。


「昨日の模擬戦には驚かされたよ。

 まさか、兄さんにテルトくんが勝つとはな。

 ……どおりで、バックスたちがあれほど強くなっているわけだ」


 その言葉に、オルディンが肩をすくめ、苦笑交じりに応じる。


「ダリオス。我々も、まだまだ精進が必要ということだな」


 場の空気は終始和やかで、昨日までの緊張が嘘のようだった。


 そうして朝食を終えると――

 いよいよ、バックスたちとの別れの時が訪れる。


「俺たちはロンダリアに向かって、さらに見聞を広めるつもりだ」


 バックスがそう切り出し、こちらを見る。


「テルト、一緒に来ないか?」


 少しだけ迷ったが、俺は首を横に振った。


「いや、遠慮しておくよ。

 俺は王都を少し見学したら、カナンベールに戻るつもりだ」


「そうか……」


 バックスは一瞬だけ寂しそうに目を細め、すぐに笑った。


「それなら、ここで一度お別れだな」


 俺は頷き、バックス、ポルト、アリッシュ、ディアナと順に固く握手を交わす。

 それぞれが、それぞれの道を歩むための別れだ。


 最後に、ハルドラン侯爵へ改めて挨拶を済ませ、 俺は静かに屋敷を後にした。




もし少しでも楽しんでいただけたら、リアクションや★、ブックマークで

応援してもらえると励みになります。


皆さんの反応が、次話を書く原動力です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ