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異世界転移したら、世界を統治していた超AIが俺の頭の中にいた件  作者: 月詠 神路


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第30話 いざ、王都へ

 久しぶりに宿へ戻り、女将さんと夕食をとりながら、これまでの出来事を話した。


「あんたには、本当に驚かされることばかりだね。でもね、無理はしないこと。それと……必ず、ここに帰ってくるんだよ」


 女将さんの料理をゆっくりと味わい、その夜はベッドへ身を沈めた。

 ……やっぱり、ここが一番落ち着く。


 翌朝、シーナさんに元気よく起こされ、朝食を済ませてから王都へ向かう準備を整えた。

 約束の待ち合わせ場所へ向かうと、そこには真新しい武器と防具を身に着けたバックスが立っていた。


 俺を見つけるなり、バックスが声を上げる。


「よう、テルト。どうだ、これ。ダンジョンで手に入れた素材を売って、バイセンの店で新調したんだ。テルトからの紹介だって言ったら、色々と見繕ってくれたよ」


「似合ってるじゃないか」


 そんな話をしていると、一台の立派な馬車が俺たちの前に止まった。


「待たせたな、バックス」


 顔を上げると、御者台にはポルトが座っていた。


「テルト、乗るぞ」


 促されて馬車に乗り込むと、中は広い部屋のようになっていて、ベッドやソファ、テーブルまで置かれている。


「驚いただろ、テルト。これが貴族の馬車だ。魔道具で空間を拡張してるんだとよ。アイテムバッグと同じ技術らしいが、俺にはよくわからん」


 馬車が走り出す。

 ダンジョン行きの馬車とは違い、ほとんど揺れを感じない。


 感心していると、アリッシュが飲み物を運んできた。


「テルトさん、どうぞ」


「ありがとう」


 バックスが俺の正面に腰を下ろし、表情を引き締めた。


「テルト、これから俺たちのことを話す」


 話を聞くと、バックスは伯爵家ブリジアン家の三男で、ポルト、アリッシュ、ディアナは男爵家出身だという。

 しかも三人とも、ブリジアン家と縁のある家系らしい。


「みんな、貴族だったのか」


「まあな。貴族と言っても、俺以外は没落貴族で、家名もほとんど残ってないが」


「それで、家に行く理由は?」


 バックスは少し目を伏せ、言葉を選びながら語り始めた。


「ブリジアン家は代々、王国騎士団の家系だ。父上は引退してるが、元王都騎士団隊長。長男は副隊長、次男は現役の騎士団員。だが、三男の俺に順番は回ってこない。……所詮、兄貴たちのスペアだ」


 そこで一度、言葉を切る。


「だから冒険者になって、見返してやろうと思った。でも結果は……あの通りだ」


「なるほどな。貴族も楽じゃないんだな」


「それを知った父上が、来月までに結果を出さなければ援助を打ち切ると言い出した。だから護衛依頼を出したってわけだ。俺たちがCランクになれば、父上の口利きで近衛兵になれる。そうすれば、ポルトたちも生活に困らない」


「だからポルトたちも一緒に冒険者をやってたのか。意外と仲間思いじゃないか。それで、これからどうするつもりだ?」


「皆で話し合った結果、冒険者を続けることにした。ただ……兄貴たちはプライドが高くてな。冒険者を毛嫌いしてる。いざ問題になったとき、仲裁に入ってほしい。……最悪、実力を示すために模擬戦になるかもしれない」


(ステラ、王都騎士団と模擬戦だって。なんだか面白そうだな)


(マスター、データ的には貴重ですが……できれば争いは避けましょう)


「わかった。その時は手を貸そう」


「助かるよ。俺だけじゃなく、ポルトたちの人生もかかってるからな」


 その後、馬車は順調に進み、予定よりも早く王都へと到着した。



 王都――テイゼンハイム。

 カナンベールの三倍はあるだろうか。


 中央には平民街、北には王宮、東には貴族街、西には商業街、南にはギルドや雑貨街が広がっている。

 俺たちの馬車は、その中でも東に位置する貴族街へと向かった。


 途中、近衛兵たちによる検問所があったが、バックスが貴族証を提示すると、兵たちは即座に敬礼し、そのまま馬車を通した。


「テルト、着いたぞ」


 馬車が止まった先には、広い庭に面した三階建ての立派な建物が建っていた。


「バックス……もしかして、結構なお坊ちゃんなんじゃないか?」


「よしてくれよ、テルト。これでも伯爵家としては小さいほうだ。王族の血筋もないしな」


 確かに、周囲の屋敷と比べれば控えめに見えなくもない。

 だが、窓の数を数えてみると、軽く三十は超えている。


 屋敷の前では、執事や使用人たちがずらりと並び、整然とした様子で出迎えていた。


「バックス様、おかえりなさいませ」


 バックスが軽く合図すると、執事が一歩前に進み出る。


「テルト、執事のデビットだ」


「テルトです。よろしくお願いします」


「執事のデビットでございます。バックス様からのお手紙で、あなた様のことは伺っております。この度は大変お世話になったとのことで、ぜひ丁重にもてなさせていただきたく存じます」


「いえ、俺は平民で、しがない冒険者です。どうぞお気遣いなく」


 デビットは、少し驚いたように目を見開いた。


「これは……失礼ながら驚きました。このように腰の低い冒険者の方は、初めてお会いします」


 そう言いながら、デビットはじっと俺を値踏みするように見つめてくる。


(マスター、デビットにより《鑑定》を受けています)

(ああ、ステラ。俺も感じてる。もう魔素で鑑定は弾いてある)


「デビットさん。初対面で鑑定するのは、あまり感心しませんね。……俺も同じことをするので、気持ちは分かりますが」


 デビットの眉が、一瞬だけぴくりと動いた。


「これは大変失礼いたしました。長年、執事をしておりますと、つい職業病が出てしまいまして」


 その様子を見ていたバックスが、楽しそうに笑う。


「ははは。だから手紙に書いただろう? テルトを鑑定しても無駄だって」


「バックス様、面目ございません」


「テルトは俺が信用している人物だ。ポルトたちと同じように扱ってくれ」


「かしこまりました」


 デビットは一礼し、続けて言う。


「さあ、皆さま。長旅でお疲れでしょう。夕食まで、どうぞお部屋でお休みください」


 そう言って、使用人たちに手際よく指示を出す。

 その中から、俺の担当らしい使用人の女性が一歩前に出た。


「テルト様、私は使用人のマルシアと申します。身の回りのお世話を担当いたしますので、何なりとお申し付けください」


「その“テルト様”ってのは照れるな。テルトでいい。それに、あまり気を使わなくていいから」


 すると、横で見ていたアリッシュがくすりと笑った。


「マルシア。テルトさんは冒険者だけど紳士よ。あまり干渉されるのが好きじゃないから、自由にしてあげてね。窮屈に感じちゃうから」


「アリッシュ様、かしこまりました」


 マルシアに案内され、俺は自分の部屋へと通される。


「こちらがテルト様――いえ、テルトさんのお部屋です。夕食の際にはお呼びに参ります」


 そう言って、マルシアは静かに退出した。


(ステラ、さすが貴族の部屋だな)

(マスター、これまで拝見した中でも最上級の部屋です)


 部屋の家具や装飾品を一通り眺め、窓から中庭を見下ろしていると、屋敷の中も少し見てみたくなった。


 部屋を出て中央のホールへ向かうと、マルシアが慌てた様子で駆け寄ってくる。


「テルトさん、どうされました?」


「まだ日も高いだろう? 夕食まで時間があるし、少し見て回ろうかと思って」


 すると、執事のデビットが姿を現した。


「テルト様。それでしたら、私がご案内いたしましょう」


 案内されて中庭に出ると、手入れの行き届いた花や木々を眺めながら、王都や貴族街について一通り説明を受けた。


「テルト様。先ほどは誠に失礼いたしました。バックス様がお友達を連れてこられるのは珍しく、つい《鑑定》を使ってしまったのです」


「そうだったのか。俺はてっきり、バックスたちをBランクにした冒険者がどれほどのものか、値踏みされてるのかと思ったよ」


 デビットは小さくため息をついた。


「ふぅ……テルト様は、その若さに似合わず、人生経験が豊富で聡明な方とお見受けします。どのようにしてバックス様と関わり、Bランクのパーティーへ導いたのか……老骨ながら、興味を抱かずにはいられません。それほど、テルト様は魅力的なお方です」


「魅力的? ははは、初めて言われたな。買いかぶりすぎだろ。……それに、俺の方こそデビットさんに興味がある。そうだな――冒険者で言えば、Bランク相当の実力を持ってるんじゃないか?」


「とんでもございません。もしそうであれば、《鑑定》を阻害されたあなた様は、Aランク相当ということになってしまいます」


「ははは。確かに、それは矛盾してるな」


「さて、そろそろご夕食の時間でございます」


 いよいよ、バックスの父親や兄たちと顔を合わせることになるらしい。

 胸の奥が、ほんの少しだけ高鳴った。



もし少しでも楽しんでいただけたら、リアクションや★、ブックマークで

応援してもらえると励みになります。


皆さんの反応が、次話を書く原動力です。

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