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異世界転移したら、世界を統治していた超AIが俺の頭の中にいた件  作者: 月詠 神路


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第21話 未来を断ち切る刃

 カーチスは剣と盾を構え、さらに重厚な鎧を身に纏っている。機敏性は高くないはずだった――少なくとも、俺はそう思っていた。


「《瞬地》!」


 俺が踏み込むと、カーチスも同時に《瞬地》で間合いを詰めてくる。


 カンッ、カンッ、カンッ――!


 剣と刀が何度もぶつかり合い、火花が闇の中へ散っていった。


「これも防ぐのか……」


「さぁ、テルト。まだ君の力はこんなものじゃないだろう?」


「そうだな……」


(ステラ、結構きついな)


(マスター、図書館で読んだ戦技を試すときです!)


(……そうだな)


 つばぜり合いの最中、どうにかカーチスの剣を押し返して間合いを取る。


 再びカーチスが剣を振り下ろしてくる。その瞬間、俺は右手の刀でそれを受け流し、左手から魔法を放った。


「《ファイアボール》!」


 初級魔法――だが狙いはそこじゃない。カーチスが盾を使って魔法を防ぐ、その一瞬の隙。


 俺は刀をすっと鞘へ納めた。


「……ん? どうした?」


「俺の力を見せてやる。戦技《居合一閃》!」


 空気を切り裂くほどの高速の一撃。

 カーチスの盾をすり抜け、その胴を断ち切る――はずだった。


「もらった……!」


 だが、その刹那。


 カーチスは剣で俺の刀を受け止め、返す一閃で俺の左腕を切り裂いた。


「ぐっ……! 《メガ・ヒール》!」


 即座に回復魔法を発動し、傷を塞ぐ。


「ほぅ……回復魔法まで使えるのか。ますます、クラウンに欲しい人材だな」


(ステラ……明らかにおかしいぞ)


(マスター、同意見です。彼はマスターの動きを先読みしています……まるで未来を見ているように)


(やっぱりか。これは……未来予測みたいなスキルだな)


(これまでのことを簡易解析しました。やはり、カーチスはマスターの動きの一歩先を取っています。こちらの《高速演算》より速いです!)


 俺は探るように声を投げかけた。


「なるほど……未来予測か」


 その言葉に、カーチスの眉がピクリと動いた。図星だ。


「君には本当に驚かされる……。まさか俺のユニークスキル《未来予測》を知っているとはな」


「知っているさ。そして――弱点もな」


「ならば見せてもらおう。未来予測を破れるという、その力を」


(ステラ、準備はいいな。魔法を頼む)


(マスター、ステラにお任せください!)


「いくぜ! 戦技《修羅乱撃》! 《メガ・ファイアボール》×10!」


 修羅のごとき殺意で斬り乱れる連撃と、ステラが放つランダム軌道の《メガ・ファイアボール》十発が、同時に降り注ぐ。


「チッ……戦技《鉄壁絶守》!」


 《鉄壁》の上位戦技による防壁が展開される。

 だが、ランダムに飛び交う火球まで完璧には防ぎきれない。


 いくつかの火球が直撃し、カーチスは爆風に押されて後方へ弾き飛ばされた。


「ぐっ……久しぶりに味わう痛みだ。なるほど、ランダム性と速度差を絡めて“多重未来”を作り出したか。確かに、未来予測の弱点を突いている」


 それでも、カーチスは口元に笑みを浮かべ、《メガ・ヒール》で傷を癒して立ち上がった。


「だが……それだけでは俺には勝てない」


「……っ!」


「さて、ここまでは互角といったところだな。君の戦技と魔法の同時行使……おそらく《高速演算》と《並列演算》を持っているな? まるで二人と同時に戦っているような感覚だ」


(さすがはAランク……いや、Sランクの実力者だ)


(マスター、これは良いデータが取れています!)


「二人分? 俺は一人だぞ。打ちどころでも悪かったんじゃないか?」


「……そうかもしれんな。だが――そろそろ終わりにしよう」


 カーチスの眼光が鋭くなる。


「俺のとっておきを……君に見せよう」


「《瞬地》!」


 俺は反射的に構えを固めた。

 だがカーチスは盾を前に突き出し、一気に距離を詰めてくる。


「戦技《盾衝撃》!」


 盾を叩きつけられた瞬間、衝撃波が全身を駆け抜けた。

 骨の髄まで響く振動に、脚から力が抜けていく。


「くっ……これは、麻痺系の戦技か……!」


 膝が痺れて動かない。

 重く沈む体を支えるのが精一杯で、反撃の機会を失った。


 カーチスは距離を取り、盾越しに冷たい視線を投げてくる。


(ステラ、まずいぞ……!)


(マスター、落ち着いてください。今こそ、MMORPGと図書館で得た知識を合わせて立ち向かうときです!)


(……そうだ。この戦技なら、いけるかもしれない)


(その意気です。サポートはステラに任せてください!)


「さて、《盾衝撃》をまともに受けた君は両脚が動かせない。どうするつもりだ?」


「……俺も、とっておきを見せてやるぜ」


 痺れる脚を踏みしめ、俺は刀を鞘に納める。

 その動きを見て、カーチスが口元を歪めた。


「なるほど、《居合一閃》か。俺の闘気を見て、《未来予測》が今は使えないと気づいたのは褒めてやろう。だが――ここまでだ」


「心づかい、どうも」


「いくぞ! 戦技《終撃覇斬》!」


 空気そのものが裂ける。

 押し寄せる覇道の斬撃は、戦場の終わりを告げる鐘の音のように重く、背筋を凍りつかせた。


 だが――恐れるな。


「いけぇ! 戦技《無拍返》!」


 呼吸も鼓動も乱さぬまま、俺は自然体で斬撃を受け流す。


 刀が火花を散らし、圧倒的な重圧が後方へと逸れていった。


「よし……成功した……!」


 安堵した瞬間、遅れて残滓の衝撃波が押し寄せ、肺を潰すような圧力が俺を叩きつける。


「ぐっ……!」


 耐えきったものの、闘気も魔素も削られ、刀も防具も傷だらけになっていた。


(ステラ……なんとか、耐えたぞ)


(お見事です、マスター。でも……刀と防具はもう限界です)


「本当に君には驚かされる。まさか《終撃覇斬》を受け流すとは……これでも俺の決め技だったんだがな。君を相手にしていると、自信をなくすよ」


「まだまだ……こんなもんじゃない……!」


 声は震え、息も荒れる。

 闘気も魔素もほとんど残っていない。


(ステラ……ここまでか)


(マスター、諦めるのは早いです。この状況を想定して鍛錬を積んできました。その結果――エキストラスキルを取得可能です。マスターの意識にリンクし、ダウンロードします!)


(……凄い。これなら、まだ戦える!)


「いくぞ――エキストラスキル《起死回生》!」


 全身を熱が駆け抜け、闘気と魔素が一気に蘇る。

 枯れかけていた心臓に、再び炎が灯ったようだった。


「……っ! 《起死回生》だと……!?」


 驚愕に目を見開いたカーチスも、すぐに剣を構え直し、同じ言葉を口にする。


「エキストラスキル《起死回生》!」


 互いに回復を果たした直後。

 カーチスは剣を下ろし、静かに告げた。


「……これ以上は模擬戦では済まなくなる。ここまでだ。俺の負けだ」


 その宣言と同時に、場を揺るがすほどの歓声が巻き起こった。


「おおおおおっ!」

「すげぇ……噂のルーキー、テルトがカーチスに負けを認めさせたぞ!」

「やべぇぇぇ!」


 俺ははっとして周囲を見る。

 いつの間にか漆黒の障壁は消え、外の冒険者たちが闘技場を囲んでいた。


(ステラ、これは……?)

(マスター、《終撃覇斬》を受け流した衝撃で障壁と《ダークネスホール》が破壊されてしまいました。その結果、《起死回生》も見られてしまいました……)

(……また、目立ってしまったのか)

(マスター、申し訳ありません。もっと早く報告すべきでした)


 カーチスは手を上げ、群衆を静めながら俺の方へ歩み寄ってくる。


「テルト、すまない。君は目立ちたくないと言っていたのに……結果的に、皆に見られてしまった」


「いや、あれは不可抗力ですよ。仕方ないです」


「……なぁ、冗談抜きで俺たちのクラウンに来ないか? 君が来れば、俺たちに必ず活気が出る」


「遠慮しておきます」


「そうか」


 寂しげに笑いながらも、どこか吹っ切れたようにカーチスは手を差し出す。

 俺は迷わず、その手を握り返した。


「テルト、俺の負けだ。あとで俺の“とっておき”を渡そう。武器と防具を壊してしまった詫びも兼ねてな……上で待っていてくれ」


 そう言って階段へ向かおうとした、その時。俺の視線がある人物を捉える。


「カーチスさん、それより……まずは、あの人を」


 カーチスもつられて振り向き、息を呑んだ――そこには、仁王立ちするロゼッタがいた。


「はい、カーチスさん。わかっていますね? 私と一緒にギルドマスター室へどうぞ。……テルトさんは、上でお待ちください」


(ステラ……また、やってしまったな)


(マスター……そうですね……)



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