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異世界転移したら、世界を統治していた超AIが俺の頭の中にいた件  作者: 月詠 神路


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第13話 中層の気配

 足を踏み入れた瞬間、肌に触れる空気ががらりと変わった。ひやりとした冷気と、どこか澄んだ気配――戦場の緊張が消え、静寂だけが満ちている。


「……ここは?」


(マスター。ここは《セーフティエリア》です。魔獣は出現しません。中継地点や休息場所として冒険者たちが利用しています)


 ステラの説明に視線を巡らせると、岩陰や湖畔にいくつものテントが張られ、焚き火の光が静かに揺れていた。中には簡易調理台を並べた屋台まであり、くつろぐ冒険者たちの表情もどこか柔らかい。


(マスター。リンクした体に、想定以上の疲労が確認されました。ここで一度、休息を取ることを推奨します)


(……そうか。自覚はなかったけど、たしかに足が重いな)


(はい。マスターは集中しすぎる傾向があります。こういった場所では、こまめな休息が理想です)


 素直にステラの助言を受け入れ、岩場の奥まった静かなスペースにテントを張った。湿気も少なく、休息するにはちょうどいい環境だ。


(シーナに言われて携帯調理器具は持ってきたけど……正直、料理なんてやったことないぞ)


(ご安心ください。元の世界での一般料理レシピを意識にリンクし、再現可能です)


(……まったく、頼りになるな)


 アイテムバッグからホーンラビットの肉と宿で買った野菜を取り出す。簡易フライパンで焼き肉ダレを作り、具材を炒めてパンに挟む。


 香りが立ち上がった瞬間――自分でも思わず唾を飲んだ。


(お、うまい。野営でこんなの食えるとは思わなかったな)


 噛みしめるたびに広がる肉の旨味とタレの風味。思わず顔がほころぶ。


 ――ふと視線を感じて顔を上げると。


 周囲の冒険者たちが、味気なさそうな携帯食を手にしながら、こちらを羨ましそうに見ていた。


 ……見なかったことにした。


 そのまま静かに食事を終え、テントに潜り込み寝袋に体を預ける。


 深い眠りが、すぐに意識をさらっていった。



「……ん。どれくらい寝てたんだ?」


(マスター、おはようございます。約八時間ほどです)


「八時間? ずいぶん疲れてたんだな」


 大きく伸びをすると、身体の奥から力が満ちてくるのがわかった。ステラの提案どおり、しっかり休んだのは正解だったらしい。


 テントの外に出ると、地底湖の水面が青白い光を反射し、幻想的な輝きを放っていた。


 地底湖の冷たい水で顔を洗い、気分をスッキリさせる。


「さて、行くか」


(準備は万全です。マスター)


 静かに頷き、俺は再びダンジョンの奥へ足を踏み出した。



 地下四層に入った瞬間――肌を刺す、獣の気配。


「ステラ、あれは……オークだな。奥にいるのはコボルトか。たしかCランク魔獣だったよな」


(その通りです。ここから先は主にDランクパーティーが挑むエリアです)


「え、そうなのか。ソロのDでもギリいけると思ってたんだが……」


(マスター、慎重に進むことを推奨します)


「了解。まずは……あの袋小路にオークを誘導してやってみるか」


 身を低くして距離を詰め、近くのオークに向けて《ファイアボール》を放つ。


 火球は赤い軌跡を引いて飛び、オークの肩口を派手に焼いた。


「グオオォォッ!」


 怒号とともに、地面を割らん勢いでオークが突進してくる。


「やっぱり一発じゃ倒れないか。なら――《真空斬》!」


 空気を裂く青白い斬撃が飛ぶ。しかしオークは両腕を交差して受け、衝撃を弾き返した。


「力任せなだけじゃないのか! くっそ、硬いな!」


 斧が振り下ろされる。紙一重で避けながら間合いを調整する。鉄塊のような腕、獣じみた踏み込み。その一撃一撃が重い。


 何度も攻防が続いた、その刹那――オークの動きが、一瞬だけ止まった。


「ここだ……《アイスボール》!」


 氷球が命中し、オークの動作が凍りつく。


「今だッ!」


 踏み込みと同時に、刀に炎の魔力を宿す。


 燃え上がる刃が軌跡を描き、オークの胸を貫いた。


 轟音とともに倒れ伏し、光の粒子となってアイテムへと変わっていく。


「……ふぅ。なんとか一体は倒せたけど……複数はきついな」


(マスター。しかし、Cランク相当のオークを討伐したことで、マスターの闘気と魔素の基礎値が大幅に上昇しました)


「ゲームでいうところの“経験値が入ってレベルがアップ”ってやつか」


(厳密には“吸収”の方が近いです)


「なるほど……どっちにしても、ここは稼ぎどころってわけだ」


 刀を静かに収め、次なる獲物が潜む影へと視線を向ける。


 ダンジョンの奥はまだ深い。

 そのすべてを踏破するには――もっと強くなる必要がある。


 俺はひとつ息を吐き、再び影の中へと歩みを進めた。



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