Fツリー メロゴールド編
みーやツリーをメロゴールドが乗っ取った後の、ピリオドソード編です
「じゃあ死んで」
「おっと、物騒な話はやめたほうがいいぜ」
「な──」
【青空の影】
「な……何者、なの。あなた」
「俺か? 俺は虚無。訳あってこのオーヴァゼア? とやらに転生してきたんだ。ま、いわゆる一つの異世界転生者って奴だな」
「虚無? あなた、虚無!?」
驚いた様子を見せる美少女に面と向かいながら、おれはその手に握られた刃を意識していた。美少女(村上ハルヒとかいったか?)は顔に似合わず、剣呑な雰囲気で刃を振り下ろそうとしていたところにおれが現れたのだから、ハルヒとやらにしてみれば状況が飲み込めないのも無理は無い。
ピリオドソードとか言っていたが、そんな代物の実在を許せばこの世界の破壊に歯止めが利かなくなってしまう。おれはそんなものを許すつもりは無かった。この世界には必要ない。だって、必要がないのだから。
「あれ? 私の、私のピリオドソードが……」
「というわけで、そのピリオドソードは消させてもらった」
「そんなわけ!!」
「心配するな。別にあんたまで消そうって訳じゃない。ただ、その刃は別だ。それは人の手に余る。容易にバランスを崩壊させる」
「そんな……嘘、嘘でしょ? だってあれは、純文学の……純粋結晶なのよ?!」
「純文学? それは直木賞とかのやつか? あれ、もしかして文学部? いやー奇遇だね。俺も昔文学部に居たんだよ」
「ありえない……こんなレベルの……基底現実改竄型異常能力者が……」
親しみをこめたつもりだったが、ハルヒの顔色は青ざめたままだ。別に悪者ってわけじゃないんだから、そんなに怯えた顔で見なくてもいいだろうに。突然この場に現れたのは確かに悪かった。でも、それはお互い様だろう?
「覚えたわよ、虚無。ここは引くわ。いずれ、また」
「ちょ、待ってくれよ! 俺はまだ……」
消えてしまった。村上ハルヒは苦々しそうな顔つきで、吐き捨てるように言葉を残し、残されたおれたち(あとはオーヴァゼアポリスの面々とか)には何も残さずに。
「あの……どういうことだ?」
「ああ。ジミー・スポイラー。彼女の怒りを買ったのは君か。そうだな。よし、じゃあちょっと変わってみよう」
「変わる? どういうことだ?」
「まあまあ、見てなって。それと舌を噛むと悪いから黙ってたほうがいいよ」
おれは現実改変能力を発動した。
【法界の火 -side リマインズ-】
現代思想出版社(株)の火災事件を担当するのは本来リマインズ・ソニックだったが、村上ハルヒはそれを良しとしなかったわけで、その結果ジミー・スポイラーごとピリオドソードで断裁するとまで思い至ったわけだ。それを止めればハルヒがあんな顔をすることはないのだから、おれとしてはなんとかあいつを悲しみから救ってやりたいと思うわけで、可能な限り協力してやるつもりだった。
「ここは?」
「現代思想出版社のオフィスビルだな。リマインズがいるはずなんだが……」
リマインズ・ソニックはまだいないはずだ。事件が起きる前の時間に戻ってきたのだから、ここにリマインズがいるわけがない。
「ここを襲ってくるのは異界交合教団の連中だ。そいつらを蹴散らせばここのミッションはクリア」
「どういうことだ? さっきからわけわかんねェことばっか言いやがって」
「信じる信じないは別にいい。でも、可能性を残すにはこれしかないってことは忘れないほうがいい」
「ハッ! 上等じゃねェか! 異界交合教団っつったってあたしらの敵じゃねェよな、スポイラー?」
「セヴンスライト……俺は勝つ。気を引き締めろ、マール……特S対応」
「オーケイ!」
文字通り火花を散らすのはマール・シューケで、ジミー・スポイラーは自身のスポイラー能力を動かし始めた。最警戒態勢を意味する特S対応。オーヴァゼアポリスデパートメントは優秀だから、教団の連中にはまず後れを取らないだろう。おれが出来るのはここまでだ。
「それじゃあな。おれはまだ行くところがあるんだ」
見送る二人の言葉も聞かず、おれは時空間転移を行った。