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第6話 少女漫画世界に転生してヒロインの身代わりになりました!?

 環奈は、必死に「悪役令嬢は、カフェ店長になって隣国の騎士に溺愛されます」の内容を思い出していた。


 ・舞台はナーロウ国

 ・魔法国家である

 ・中世ヨーロッパ風世界だが、文明は魔法の力で発達。水道、電気、ガス等にインフラは魔法によるもの

 ・宗教はなく、魔王という王様が崇められている。

 ・治安は良い。四季があり、自然も豊か

 ・飯は不味い。パンは石のよう。

 ・作画が高度で美形が多かった。


 思い出せるだけ思い出したが、今いるメリアの実家である公爵家の事はよく思い出せない。序盤は読み飛ばしていた。


 ヒロイン・メリアの事も出来るだけ思い出す。


 ・公爵令嬢

 ・釣り目で悪役令嬢と恐れられていた

 ・友達はいない

 ・前世は日本人女性

 ・料理好き

 ・実家の家族の問題があったっぽいが忘れた。というかほとんど覚えていない!


 意外とメリアの情報も思い出せなかった。他にも細かい設定も描き込まれていたが、ヒーローに溺愛される描写しか印象に残っていない。それに漫画も飽きかけていたので、あんまり覚えていなかった。


 こんな事になるなら、ちゃんと漫画を読んでおけば良かったと思ったが手遅れだった。


 この世界は夢なのか転生なのかわからないが、元いた世界に帰れないのが一番の問題だった。


「どうしよう……」


 確かに礼央に失恋して絶望感はあったが、こんな世界から帰れないとなると、恐ろしい。しかも自分の肉体は別人になっている。


「うわぁん。神様、イエス様ぁ。ごめんなさい! 環奈の外見に不満を持ったり、元いた現実世界が嫌になったりして、ごめんなさい〜。あなたに立ち返りたいですぅ」


 カンナは泣きながら悔い改めの祈りをしていた。本人はそんなつもりはなかったが、どう見ても悔い改めだった。


「アーメン」


 祈り終えると、カンナはそう言った。アーメンというのは、クリスチャンが祈り終える時に言う言葉である。「その通りになります」という意味だ。ネット風の言葉で言えば「それな」という言葉だ。子供の頃は、父がしょっちゅう「アーメン」と言っていたので「ラーメン?」と聞いたら呆れられた。クリスチャンの前では、「アーメン、ソーメン、ラーメン」などというギャグは言わない方が良いだろう。


 祈り終えたのと同時にドアのノックがなった。


「どうぞ」


 そう言うしかない。恐らくこの屋敷の人物だろうが、この夢の世界から抜け出す方法を知っているかもしれない。


「お嬢様!」


 入って来たには燕尾服姿の若い男性だった。知らない顔だったが、たしか漫画の中メリアは実家で執事がいた事を思い出した。序盤で数コマしか出てこないモブキャラで、顔は全く覚えていないが。


 金髪碧眼のイケメンだった。絵に描いたようなキャラで、やはり漫画の世界だと思わされた。モブまでイケメンというのは眼福である。


 いや、問題はそこではない。カンナは必死に事情を説明した。


「夢の世界? そんな事はあるわけないじゃないですか」


 執事は全く信じてくれない。仕方がないので、どういう状況で自分がここにいるのか聞いてみた。


 カンナはこの屋敷の近くの森で倒れていたらしい。公爵令嬢のメリアと勘違いされ、この屋敷に運ばれたそうだ。


「えー、私はメリアじゃありませんよ」

「わかっていますよ。でも、メリアお嬢様は本当に行方不明でして……」


 この執事はとんでも無い事を言った。メリアのの身代わりをしろという。世間体もあり、このままメリアが行方不明にしていくのは不味い。ちょうどカンナが現れて利用するとか良いと言い始めた。


「ちょっと待ってくださいよ〜。身代わりなんて無理です!」

「大丈夫、大丈夫。とりあえず家にいればいいから。旦那様も目が悪くなってるし、誤魔化せるって」


 どうもこの執事はアバウトな性格らしい。頭を抱えそうになるが、漫画世界では入れ替わりとか身代わりとかいう設定はよくあった。たぶん、この世界は漫画世界だけあり、色々とご都合主義なのだろう。細かいところを突っ込むのはやめたほうがいいのかもしれない。


 そう思うと、少し気も抜けてきた。「漫画世界に転生して悪役令嬢の身代わりになりました」という漫画のヒロインになったと思えば良いんだ。


 せっかくの夢だ。とにかく楽しめば良いんじゃない?


 そんな風にも思い始めたら、すっかり気が抜けていた。


 それにメリアの居場所も知っている。この屋敷から少し離れたトリップ村という場所で、カフェ店長をやっていたはずだ。自分にはこの世界は描かれた漫画世界の知識がある。いざとなったら、メリアをこの屋敷に連れ戻せばいい。


「わかったわ。メリアお嬢様の身代わりになれば良いんでしょ?」

「カンナお嬢様、本当に物分かりがよくて助かります!」


 執事の男は、感激して泣いて喜んでいた。こうして見ると、ちょっとワンコっぽい素直そうな執事だ。


「ところで、あなたって誰?」

「俺ですか? 俺は、レンという執事です」


 頭に思い付いた疑問を投げかけていた。


 カンナは、この世界が夢のなかであり、帰り方がわからなくなっている事は、とりあえず忘れる事にした。

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