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第5話 異世界転生ってやつですか?

 目覚めたら、見覚えのない場所にいた。


 豪華な部屋だった。寝かされているベッドは、天蓋付き。布団はフカフカで軽い。恐らく羽根布団だろう。


 洋風の部屋だったが、カーテンやカーペットは派手だった。いかにも女性が好みそうな部屋だったが、何となく落ち着かない。


 単なる女性というより、お姫様でも住んでいるかのような部屋だ。天井には大きなシャンデリアがあり、白目をむきそうになった。


 この部屋は見覚えがあった。


 確か「悪役令嬢は、カフェ店長になって隣国の騎士に溺愛されます」に出てきた。ヒロイン・メリアの実家の公爵令嬢家ではないか。


 背景の細かいインテリアが綺麗で「作者の月美先生のアシスタントさん大変だっただろうなー」と思ったので、印象に残っていた。


 確かメリアの実家は色々と問題があり、序盤で家出するのだ。家出先の小さな村で、ひょんな事からカフェを開き、隣国の騎士に溺愛されるというタイトル通りの内容だ。メリアは、前世は日本人だったが、その知識を活用しカフェを繁盛させていく描写がおもしろかった。


「何で、私はメリアの家にいるの?」


 考えてもわからない。メリアの実家は、色々問題があった記憶があるが、序盤の事だったので、すっかり忘れていた。


 そういえば夢の中で天使と色々話した。あの漫画の世界に入った事は、本当だったみたいだ。


 本当に夢?


 ただ、頬をつねると痛い。夢の割にはリアリティがあるようだった。


「ぎゃ!」


 ただ、部屋の鏡を見に行ったら声が出た。


「何、これは……」


 そこのは佐藤環奈(17)の姿はない。黒髪ポニーテイルで大人しそう、ややヲタクっぽいJK・佐藤環奈の姿ではなかった。


 西洋風の濃い顔立ちの令嬢がいた。やや釣り目で、悪役令嬢っぽい。金色のストレートヘアは、自分でもうっとりするほど綺麗だった。天使の輪もできている。ワンピース状のヒラヒラパジャマを着させられていたが、とても似合っていた。この顔だったら令嬢らしいレースたっぷりのヒラヒラドレスも様になるだろう。


「なにこれ、私じゃない……」


 意識は確実に佐藤環奈(17)だが、外見は明らかに悪役令嬢だった。漫画のキャラにいそうだったが、環奈の記憶の中には全く同じルックスのキャラは思い出せない。


 この世界は少女漫画の中である事と、自分の外見がかなり変わってしまった事は理解した。


 あの天使が言った事は本当だったようだ。


 やっぱり夢?


 その割にはリアル過ぎるというか、肉体の五感がリアルすぎて、環奈は人知れず身震いしていた。


「もしかして転生?」


 そんな気もしてきた。今のシチュエーションは、異世界転生ものの冒頭と大差ない状況ではないか。


 でも、転生は無いはずだ。死んだら神様の裁きをうけ、天国or地獄行きが決定する。新米クリスチャンである環奈だが、その事はわかる。正直勉強不足で、死後の世界とか黄泉とか、千年王国の話はあまり頭に入っていなかったが。


 だとしたら、やっぱりあの天使がいうように夢の世界だ。


 あの天使には、サトゥ・カンナという令嬢にして貰うといった。恐らくこの世界での自分の名前なのだろう。


 モブキャラでいいと言ったはずだが、今の自分の肉体はヒロインでも通用するような美しさだ。


 環奈、いやカンナは鏡を見るだけで満足した。こんなお姫様みたいな部屋に一瞬でも住み、美女にもなれた。


 もう満足だ。礼央に失恋した悲しみなどは、すっかり忘れていた。気づくとカンナは笑顔になっていた。


「じゃ、早く目覚めればいいのね。あれ? 夢から覚めるのってどうすればいいの?」


 もう十分です!と思ったが、夢から目覚める方法が分からず、時間だけが経過した。


「えぇ? やっぱりこれって転生!?」


 カンナは、小声でつぶやいた。


 頬をつねると痛い。リアルな肉体感覚がある。


 この状況は転生したとしか思えなかったが、頭はパニック状態だった。


「礼央先生ー、助けてー」


 そこで出てくる言葉は、初恋相手の名前だった。父親の事はすっかり忘れていた。

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