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クリスチャンJKですが、少女漫画世界の公爵令嬢になっていいですか?  作者: 地野千塩


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第18話 ただいま

 目を覚ますと、自分はどこかのベッドの上に寝かされている事に気づいた。


 ぐるりと目を見回すと点滴が見えた。どうやらここは病院のベッドの上らしい。


 自分が今着せられているパジャマも、病院の寝巻きみたいだった。


「環奈!」

「佐藤さん!」


 なぜか側に父と担任の礼央がいた。


「あれ? 私、どうしたんですか?」


 父は病院の先生を呼びに行ってしまった。


 礼央に事情を聞くと、体育の授業中に気を失い、病院に運ばれたそう。身体は異常はないが、一向に目を覚まさず、3日間眠りこけたいたそうだ。


 父が連れてきた医者に診てもらったが、身体の異常はどこにもなく、首を傾げながら病室を出ていった。


 このまま退院して良い事になったが、父と礼央にこの長い夢を説明した。


「あぁ、これは悪魔の攻撃だな。洗礼受けたての子にはよくあるんだ」


 牧師である父の見解では、悪魔が見せていた幻の可能性が高いという。夢の世界に閉じ込め、神様に向かわせ無いようにしていたのだろう。あの漫画世界も幻だと思うと、心底ホッとした。


 公爵様やヘレンと会えなくなるのは寂しいが、所詮架空の人物だ。寂しくなっても仕方ない。それよりは父や礼央に再会できて良かった。


「でも佐藤さん、良かったですよ。ちゃんと現実にかえってこれて」


 礼央は陰謀論者としてキリスト教に興味があるらしい。こんな荒唐無稽な話も特に疑わず、むしろ環奈に優しかった。礼央の姿をよく見ると、喉仏はゴツいし髭の剃り跡も濃いめだ。手の甲や指にも毛が生えているが、フツーの男性らしい姿にホッとしていた。


「礼央先生、私ずっと片思いしてた。ごめんなさい、とっても気持ち悪いよね」


 なぜか礼央に告白していた。父は唖然として言葉を失っていたが、環奈の気持ちはスッキリしていた。


「いや、自分で言うのもなんだが食事も付き合うの大変だよ。添加物入りの食品は全部避けてるし。うちの嫁とも食事の意見合わない所も多いしな。佐藤さんみたいな普通の人には手に負えないよ。俺はワクチンも反対派のハイパー陰謀論者だからね。俺は誰にどう言われても反ワクチンを貫くぜ!」

「あはは、それはちょっと嫌だね〜。でも、キリスト教に興味あるなら、うちで結婚式あげる? 先生、結婚おめでとう」


 この世界に戻ってきた環奈の気持ちは、晴れやかだった。


 素直な気持ちで礼央にお祝いの言葉を送っていた。確かに自分は失恋してしまったわけだが、それで良いと思った。


 むしろ漫画世界でいつのまにか溺愛されていた状況の方が気持ち悪い。


「そうですよ、礼央先生。うちの教会に遊びに来ます?」

「えー、いいんですか? だったらヨハネの黙示録の事を教えて欲しいんです。陰謀論者としては終末が気になるんですよ。終末の反キリストはローマ法皇かトランプかわからないんですよねー」

「私もまだわからないですが、肉体は死んでも脳だけ機械化して永遠に生きる技術が出来そうとかいうニュースも見た事ありすね。なんか関係ありますかね?」

「うわ、牧師先生。これはガチで終末ですよ。黙示録の封印が解かれてそうじゃないですか。たぶん脳だけデータ化して、肉体は悪霊の棲家にするって感じじゃないですかね? ムーンショット計画とも通じるな。おそらく獣の刻印は、ワクチンではなく人間の肉体がなくなり……」


 大人二人は聖書の話題で盛り上がっていた。二人の笑い声を聞きながら、ようやく元の世界に帰ってこれた事を実感し、安堵のため息をこぼしていた。


「ただいま」


 環奈は小さな声でつぶやいた。

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