第16話 ご都合主義の限界です
メリアは麦畑を通り抜け、隣の村の方へ歩いていった。
どことなく忍び足で、周りの視線を気にしているようであった。後をつけるカンナとヘレンは、バレないように身を隠しながら歩いた。
空は高く、麦畑や田舎の畦道はスローライフな雰囲気だった。本音ではスローライフを満喫したい気分でもあったが、今はそれどころではない。
とにかくメリアの背中を追った。
「メリアお嬢様、なんか変な幽霊をつけているみたい」
ヘレンは、メリアを遠目で見ながらつぶやいた。
「変な霊?」
「ええ。なんか悪魔みたいのも見える。メリアお嬢様に酷い悪口を言ってる」
「どんな?」
「よく聞こえないけれど、お前はダメなヤツとか……」
それを聞くとカンナも苦虫を噛み潰したような表情になってしまった。確かにメリアの村人からの評判は散々だったが、あの日記の内容を見てしまった後では、一方的に責められない。
聖書では正しい人は一人もいないと書かれている。もちろん、自分も完璧ではない。メリアを責める事は出来そうになかった。
「どこいくのかしら?」
「さあ、わからないわ、ヘレン」
メリアは隣の村に入ると、人気のいない屋敷の方に向かった。
一見大きな屋敷だったが、木々に囲まれているせいか、本当に幽霊でも出てきそうだった。
「どうする? カンナお嬢様。屋敷に入ります?」
「ど、どうしよう……」
屋敷の前に来てみたが、いざ入ろうとするのも戸惑う。屋敷の雰囲気も怖いし、幽霊でも本当にいたら……。
「でも、ここで待っていても仕方ないわよ。とりあえず入ってみない?」
「そ、そうね」
カンナはびびっていたが、ヘレンは余裕だった。そんなヘレンといたら大丈夫そうだと思い、屋敷に入ろうとした瞬間だった。
「お前ら、何をしてるんだ?」
レンだった。いつものような燕尾服ではなく、真っ黒なコートに身を包んでいた。その姿はまるで死神みたいだった。
「逃げよう、ヘレン!」
そうは言っても遅かった。あっという間にカンナもヘレンも捕まってしまた。何か薬剤のようなものを嗅がされ、瞬く間に意識を失ってしまった。
「生贄を三人も見つけられるなんて、ラッキーじゃん?」
途切れかける意識の中でレンのその言葉だけがはっきりと聞こえた。
やっぱり漫画世界などろくなものでは無い。こんな風に危険もつきまとう。そろそろクライマックスっぽいし、製作者が無理矢理山場を作った感もする!
いつものように都合よくラッキーが重なったりしないだろうか?
しかし、どう考えても助けに来てくれそうなヒーローは思い浮かばない。
早く元いた世界に帰りたかった。失恋をしてしまったけれど、この世界よりはマシな気がした。




