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第1話 ムーンショット計画

 こんな実験があるらしい。


 メス蝶々にイケメン蝶々の画像をずっと見させていたら、メス蝶々は現実のオス蝶々に興味を持てなくなったらしい。


 これは、蝶々に限った話では無いと月美は思う。月美は、いわゆるヲタクでプロの漫画家になるほどだったが、現実の異性には全く興味が持てない。


 異性は漫画やゲーム世界にいるキャラクターだけでいいんじゃないかと思ってしまう。


 日本の結婚数は減り、それに伴って赤ちゃんも減っているらしいが、漫画やゲーム、アニメとの関係を否定できないと月美は思ったりする。


「はぁー、今日もいい原稿をかけたわ」


 月美は、出来上がった漫画の原稿を見ながら、うっとりとした表情を見せた。現実にはあり得ないイケメンや美女ばかりの漫画だが、月美自身は出来を気に入っていた。


 担当編集者からは、より非現実な都合のいいキャラクターの漫画を作れと言われていた。


 編集者によると、政府はムーンショット計画というのをたてているらしい。将来的には、人々を仮想空間に住まわせ、肉体での仕事は減らしていくらしい。噂の段階ではっきりした事はわからないが、内閣府のホームページに堂々とこの計画が発表されていた。SF小説にしか見えないファンタジックな計画だが、信じられない事に内閣府のホームページで発信されている。


 そのために今後もより非現実的な娯楽が支持されるだろうという話だった。より非現実な娯楽には、政府からの協力金も出て、 アニメ化などもされやすくなるだろうという。政府は昆虫食も推しているようで、タイトルに「虫」が入っているのも有利という噂も聞いた。政府は戦争もはじめたいみたいで、軍人ヒーローの作品を広めてプロパガンダしたいという噂も聞いた事がある。※あくまでも噂だが。


 収益が落ち込んでいる出版社としては、有り難い噂だろう。それに営業部やマーケティング部署の人によると非現実な漫画は人気が出やすいという。それだけ人々は現実が辛いのかもしれない。恋愛や結婚も自分の思う通りにはいかない。疲れる事だ。子育てはもっと自分の思い通りにならないはずだ。だったら仮想世界で夢を見るのも悪くない。月美はそんな風に考えていた。


「現実に都合にいいイケメンなんていなしねー。いたとしてもホストじゃん。金かかるわ」


 月美は自分の原稿を見ながら、呟く。今描いている原稿は、「悪役令嬢は、カフェ店長になって隣国の騎士に溺愛されます」というタイトルだった。異世界転生した悪役令嬢が溺愛される話で、モブに至るまで全員美形だった。ヒロインの悪役令嬢は、前世の知識を利用してカフェを繁盛させる話で逆ハーレム要素もある。とにかく読者に受ける要素をこれでもかと詰め込んだ。


「ムーンショット計画? いいんじゃない。恋愛や結婚も面倒だし、非現実な世界に逃げたって。最高よ!」


 月美は笑いながら呟いた。

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