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第5話「呪われた村」


「村は、この橋を渡って……っと」


 ルナはヘルゲに渡された地図を確認しながら、メリンダと村へ続く険しい道を共に歩いていた。

 

「ルナ、ジジイが悪かったな。普段はただ胡散臭いだけのジジイなんだが……」

「メリンダは悪くないよ。それに着いてきてくれてありがとう」


 あの後、渡された任務について、受付の人から詳しい話を聞くことができた。すると、「うちも着いていく」と名乗りあげたのだ。ルナはそれを断る理由もなかった。


 (……本当、いい人だなぁ)


 最初出会った時、何故子供を見捨てようとしたのか不思議なくらいメリンダの人柄は優れていた。頼れる姉御というかなんというか。(……今度、弟や妹いるのか聞いてみよ)

 それはそうとして、メリンダの口数はギルドに向かう道中に比べて、少なくなっていた。

 

「何も聞かないの?」

「……あんたが話したくなる時まで待つさ。うちは待つのが得意な「狩人」だからな」


 これがメリンダなりの気遣いだった。確かにまだメリンダに話すことは出来ない。己を語って、だれかに「もういいよ」と言われてしまえば、ルナ自身どうなってしまうのか分からないからだ。今はまだ、その言葉は聞きたくない。聞き流すことも出来ない。それならば、最初から話さない方がいいと判断したのだ。


「……ありがと」


 ルナは小さな声で、呟いた。


 ・

 ・

 道中の魔獣を倒しながら数日かけて、ふたりは目的地へ辿り着いた。

 

「ここが、呪われた村か」


「呪われた村」

 それは抽象的な意味もあるだろうが、この世界に「呪い」は実在する。そのため、本当に「呪い」があるのか、それとも他に何らかの原因があるのか。どちらにせよ、ルナたちはあのギルドマスターを認めさせるためにそれを解決しなければならなかった。

 村を見渡すと、村人たちはそれなりの生活をしているように見えた。調査のための聞き込みをしようと声をかけるが、その前に逃げられるということが度々あった。そんな中、歩いていた先にやけに豪華な建物があり、護衛が何人か立っていたのをルナたちは見つけた。


「村長さんにお話を聞くことって出来ますか」

 (……なんかなぁ)

 護衛が所々身につけている、不相応な豪華な装備品が目に付いて仕方なかった。


 ・

 案内されたのは、来客用なのか綺麗な部屋だった。「明日の朝、お帰りになりますので、今夜はこの部屋でお休みください」と侍従のような男に言われ、ルナとメリンダは手荷物を解き、身を綺麗にすると、慣れないふかふかのベッドへ身を投げた。


「すっげェやわらかいな」

「凄く高級そう……」

「こんなに村長の家は金持ちそうなのに、どこが呪われているんだろうな」

「いやぁ……なんか嫌な予感はするんだよね」


 横領か、横領か。やっぱり横領か!八割の可能性で村長は横領罪は適用されるだろう。問題は何が、「呪い」なのかだ。横領によって民が飢えているだけならば、「呪い」と言われることもないだろう。わざわざあのギルドマスターがこの場を救えと言ったのはそれなりの理由があるはずだ。


「まずは村長に話を聞かないとなぁ」

 

 ・

「高熱に、手足の異形化……そして、個人差があると」

 やはり横領してそうな容姿の村長の、長ったらしい話を要約すると、こうだった。その症状をまとめると、ルナの脳裏にはひとつの可能性が過ぎった。一方で、メリンダは首を傾げたままだった。

 

「これは呪いとか病気とかじゃなくって……魔化の症状ですね」

「まか?」

「魔力というのはご存知ですか?」

「それは、えぇ」

「魔力が暴走してしまうと、理性を失った魔化という状態になります。魔力を多く持つ人ほど、なりやすいんですよ」

「我々はどうすればよいのですか?」

「簡単です。魔力を使いすぎないことです。黒い雲が近い時は特にですかね」


 魔化と、横領はどうにも結び付けることは出来なかった。魔化を知らない人々が居ることは珍しいことでは無い。知らないが故に、魔化の症状が進行したことで「呪われた村」になったのだろうか。横領のことも解決する必要はあるが、まずは魔化を食い止めることが先決だ。

 と、ルナがこれからの動向について色々思案していると、ようやく話を理解したのかメリンダが、「あと、あれだな!」と唐突に大きな声を出した。


「おっさん、魔獣を食う時はちゃんと止めを刺すことも忘れんなよ」

「それは勿論です。我々も魔獣は臨時の食料として重宝しておりますから」


 村長はメリンダのアドバイスに朗らかな笑みで答えた。(……あれ、なにか違和感を感じる)

 

 ・

「よし、働くか」

「働くってまたなんでだ」

「村長の話を聞いただけじゃ、何も分からないからね。恐らく村長はクロだ」


「まず心を掴むことから、ね」

 ラクスはそうだった。ルナたちは村に突然やって来て、「余所者」と煙たがられていた。けれど、ラクスは村の人たちとと共に大工仕事やら何やら力仕事を手伝っているうちに、自然と溶け込んでいった。ラクスを見習えばいい。

「おばさん!なにか手伝わせてください!」

 ルナはメリンダを引き連れて、村の人々に声をかけていった。

 

「よし、これで終わりっと」

 村に滞在してから一週間が経った。流石に黒幕に近い村長の家に居るのは少し憚る思いがあり、近くの宿へと移った。

「ルナ!こっちも手伝ってくれないかい?」

「はいはーい」

 ラクスの手法は正しかったのか。村の人たちは徐々にルナたちに心を許すようになった。しかし、魔化の原因に関する有力な情報は掴めずにいた。

 

「あいたっ!……あ、板のささくれが刺さったのか……」

「あら、たいへんだわ」


 おばさんはポケットから瓶を取り出すと、ルナの手に液体をかけた。すると、ルナの手の傷が一瞬にして綺麗になった。

 

「それって、ポーション?」

「そうよ」

「そんな高いもの私に使って大丈夫なの?」

「気にしないで。この村はポーションの産地だからね。これは試作品だって、村長さんから貰ったのよ」

「へぇ、すごいね」


 ポーションは魔力を込めることで作ることが出来る万能薬であるため、市場では高値で取引されている。魔獣が増えてポーションが需要が高い今、それを作ってお金を稼いでいるなら、村長が金持ちなのは納得するしかないだろう。


 ・

 

「……ん?これが終わってからね」

 

 その後、おばさんが手袋を持ってきてくれた。それを手につけて作業を続けていたら、誰かに服の裾を引っ張られた。また何か仕事を頼みたいのだろうか。と振り返ると、そこには小さな男の子がいた。

 

「おねぇちゃんたちは、いいひとなの?」


 その手が小刻みに震えていることをルナは見逃しはしなかった。「ねぇ、君もしかして――

 

「あいつのせいだ!あいつが俺たちを呪ったんだ!!師匠殺しのアレクシス・ギーレン!!」


 突如現れた男の叫び声が、ルナの声を遮った。

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