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一回戦 第二ダブルス

修正報告 91話 「未知のモモンガ」にて、桃文珠の二年「今井」が「芳倉」になっていました。2024/07/24に修正を行いましたが、それ以前に読まれた方がいらっしゃいましたら混乱させてしまい申し訳ありません。正しくは「今井」です。

 

 インターハイ予選までの数か月、ダブルスは幹人先輩との練習が中心だった。けれど、こんなこともあろうかと白間川戦以降も小夜川君とだって練習はしてきたし、もっといえば涼先輩やひなた先輩とだって練習試合で組んだことがある。人数が少ないから=切れる手札が少ないとは限らない。自分たち次第で、可能性は無限に広げることができる。戦略の幅を広げるべくできる事をあれこれ模索したこの数か月だったけど、やることは中学と比べたら驚くほど増えたのに、頼りにされたり任されたりするのがとにかく嬉しくて、充実していた。

 部活に行くのが不安で仕方がなかったあの頃とは全く違う。今日は何をされるんだろう?何を言われるんだろう?って通学中頭がいっぱいになっていたのが随分昔に思えるくらいだ。

 密度の高い練習の日々は長いようで短くて、入部した頃はまだ先だと思ってきたインターハイ予選もついに今日が本番。


 一回戦は第二ダブルスと第三シングルスに選んでもらった。中学生の頃焦がれていた団体戦に、いよいよ自分が出場するんだ。やばい。ちょー嬉しい。実は朝から結構テンションが上がっていたけれど、誰にも気づかれていない。

 相手も同じ一年生。余計に負けたくない気持ちはあれど、それ以上に久しぶりの公式戦が楽しみで仕方がなかった。


 隣の小夜川は突然のイレギュラー出場に少し緊張ぎみみたい。それなら序盤は、広めに動く意識でいよう。

 不安になる気持ちもわからなくはないけれど、自分としては相手を見た上でコーチがいけると判断したから初戦からこのチョイスなはずだし、お互い今まで積み上げてきたことを出すしかないと思ってる。

 まあ、コーチも先生も、それから南先輩と幹人先輩まで第一ダブルスじゃなくてこっちのベンチに来てるところを見るに、そっちよりは心配されてる気はするけれど。


 桃文珠コールが頭上を飛び交う中、コートに入り挨拶を済ませる。じゃんけんは勝ったけどあえてサーブを選んだ。普通レシーブ選ぶ人が多いんだけどね。

 もしレシーブを選択した場合、最初のラリーはスマッシュが大得意な小夜川を確実に後衛からスタートさせることはできなくなる。それならばサーブ権を取って自分でサーバーをやっちゃえば、小夜川には最初から後ろにいてもらえるのだ。

「サーブで!」って言った時相手は不思議そうな顔してたけど、ちゃんと意図はある。

 ただ今回はダブルスだから、シングルスほどロブやハイクリアが飛び交ったりすることが多分ない。から、小夜川バズーカの出番もあまりないかもしれない。その分シングルスと比べて緻密にコントロールされたショットや一瞬の駆け引きなどスピード感が増すから、ラリーのテンポは小夜川が動きやすいように要所要所でコントロールしていきたいな。

 そんなことを考えながら一ゲーム目がラブオールプレー!


 だけどいざ始まってみると常に数点はリードを保つことができているものの、いまいち完全に乗り切れない状況が続く。相手に攻められる展開こそあまりないし、何が来ても拾えはするのに……。ひたすら上げてくる相手を崩しきれずにいる。

 まだ硬い相方の分までカバーしなきゃって、守りを意識しすぎたかな?

 小夜川も、久しぶりのダブルスってことでミスをしないことに意識を向けて慎重な動きをしていたし、二人して構えすぎたかも。


 案の定インターバルでコーチに、


「二人とももう少し思い切っていいです。隣の天野君と花光くんは大幅リードしてますし、一ゲーム目は間違いなく取ってくれるでしょう。だから、もっと余裕をもってください。公式戦だからって、シャトルを落とさないことだけに意識を向け続ける必要はありません。羽代君、今のあなたなら後手に回らないように立ち回れば相手が何を打ってこようと対応できます。前衛に出た時はもっと積極的に得点を狙っていいです。小夜川君、今のあなたなら力まず難しく考えないで身体に染みついたフォームで打てば、どんなショットもネットを超えます。あなたにはパワーがあるんだから、無理をして難しいコースを狙う必要なんてありません」


 ってアドバイスを受けた。うーん。気合い入りすぎも考えものだ。反省反省。

 そこからは繋ぎばかり意識したショットが少なくなった分、一回一回のラリーは短くなっていった。うん、悪くない感じ。


 とりあえず点差を守りつつ一ゲーム目は先取して、二ゲーム目もリードしたままインターバルを超えた。ただ、小夜川はまだ本調子じゃない気がする。ここを勝てば二回戦以降は恐らくシングルスに出ることがほとんどになるだろうし、できればこのゲーム良い感覚を掴んでもらって次に進みたいんだけど……。

 そういえば、最初の推測通りここまで小夜川はスマッシュを決め球として使うことができていない。長身でパワーもあるからドライブやカットなんかも十分攻撃になるんだけど、それも警戒されているようで小夜川が後ろにいるときはロブを上げてこないし前にいるときは落としてこない。いつもより広い範囲をカバーしようなんて考えていたけれど、そんなこと意識する必要もなかったくらいこっちにばっか球が飛んでくるのだ。前衛にいる時はそのまま俺が決めることが出来るけど、後衛にいる時は崩しきれないことがチラホラ。

 試合を通して攻めているのはこちらだと言い切れる。だけど、相手も気合というか勢いで食い下がってくるからちょっとやりづらい。一ゲーム目からそうだったけど、攻撃そっちのけでひたすらレシーブしてラリーを続けようとしてくるからちょっと対応に困っている。純粋に攻めようとしてくれればミスも狙えるしカウンターもできるのに。

 二ゲーム目に入り、俺が前衛で点を取るラリーが多くなったからだろう。できる限り後ろに下げようと相手が動いているのがわかる。それでも小夜川前衛、俺後衛のローテーションにさせることが難しい時には、低めの軌道で小夜川を狙ってくる。低めなら上から叩いて返球することできないからか、それとも後衛からの返球の方が球足が長くなる分多少時間に余裕ができると考えたのか。相手は小夜川が後衛に回ると、よほど体勢を崩さない限りは低めの軌道の球しか後ろに飛ばさない。低い軌道で返すということは、相手がシャトルに触れるタイミングも高い球より早くなる。つまり一生呼吸を整える暇すらないラリーが続くということ。相手もそれは承知の上で角度の附いた返球をさせないためにしてきているんだろうけど、それで自分たちの体力を削られたのか、二ゲーム目はさらに一回一回のラリーが短くなってきてる。

 それでも思ったほどの点差がつかないから、ここはやっぱり一度小夜川に決めてもらって勢いに乗りたい。なんというか相手に「攻撃させられている」状況じゃなく、こっちがやりたい攻撃をできる状況をつくりたい。


「小夜川、ちょっとやってみてほしい事があるんだけどいい?」

「……あんま難しいことは今言われてもできねーかもしれないけど、何だ?」


 そこで考えた作戦がこうだ!


「あのね、この後のラリーでもしまた小夜川が後ろに下げられるタイミングあったら無理にスマッシュとか角度のある球打とうとしなくていい。ロブとか高い球も打たないで。とにかくドライブでごり押ししてほしい」

「おう……!いいけどそれ何の効果があるんだ?」

「今まではどこかのタイミングでこっちがロブとかクリアを挟んで仕切り直そうとしちゃうことが多かった。でもさ、それじゃ結局こっちが攻撃的なショットを打てなくて相手の思うつぼ。どうにか一度、こっちが明らかに攻め勝った!みたいな一点が欲しい。それをする為に、相手の狙いに乗っかる。今相手がやりたいのは俺を後ろに下げて小夜川にシャトルを触らせない、前衛の俺にシャトルを触らせずに後ろの小夜川に低い球ばっかりよこして返させるの二つ。後者のパターンが来た時、今お願いしたみたいにドライブごり押して後手に回らせて点を取れればさ、相手の作戦を真正面から破ったってことになるじゃん?今相手は、「小夜川にオーバーでフルスイングさせない、俺に前で打たせない」ように立ち回ることで最低限の点差で粘ってる。でもそれを崩せばこっちに対しての対抗手段がなくなるでしょ?」


 悔しいけど、ある程度経験があってローテーションがしっかりしてる相手を崩し切るようなことは一人じゃできない。速い展開に持ち込もうとしても、相手は小夜川に低い位置での返球を強いてくるのと反対に、俺が後衛の時は高い位置で返球させようとしてくるから。

 物理的な攻撃力に関しては、自分が晴風でも一、二を争うくらい低い自覚はある。だからこそ特にオーバーヘッドストロークからのショットについては、練習会以降特にあれこれ模索した。そうしてたどり着いた「答え」を、この試合ではまだ発揮することができていない。


 こうもがっつり守りに入られると、それを崩すのって難しいんだな。


 先程チラリと見えた隣のコート。涼先輩たちの相手ペアはやけに攻撃的なスタイルみたいだったけど、こっちの二人はどちらかといえば「守ること」に特化したペアなのかもしれない。これは長引かせると尚更やっかいになる。ここで切らないと。

 涼先輩たちの一勝に続きたい。流れは確実にきているから。


 今スコアは9-5。第一ゲームでは自分たちのもったいないミスが何点かあったけど、このゲームではミスで相手に点を与えることは一度もしていない。

 桃文珠としては先に一敗していて、次の第一シングルスに待ち受けるのがあの(・・)松下幹人。この第二ダブルスを落としたら一気に戦況が苦しくなる。それがわかっているからだろうけど、目の前の二人も確実に焦りは出てきている。綻びを生じさせるにはこれ以上ない絶好の機会。

 日頃一緒に練習していて凄い人だとはわかっていたけれど、この後幹人先輩が控えてくれていることがこれほど頼もしいとは。去年まで第一シングルスに出てたっていうのも納得だ。ダブルスに自信があるチームだったら、先輩はこれ以上ないくらい頼もしいフィニッシャーになる。


 向こうがギリギリなことはわかるから、ここが攻め時。


「一本!」

『シャー!』


 サーバーは小夜川。レシーバーは、相手のひょろっと背が高い亀塚君。

 サーブレシーブでも、向こうは二人とも無理に叩いてくることは無い。むしろこちらのサーブが気持ち浮いたかな?って時ですらワンテンポ待って上げてくる。よほどレシーブに自信があるのか、それとも反対に自分たちの攻撃力に自信がないのか。あるいはその両方かもしれない。でも、小夜川に全力で打たせることは防ぎたいのは明らかだ。もしかすると公式練習見てたのかな?確かにあれを知ってしまったら絶対打たれたくないと思うのも仕方ないかも。


 小夜川が選んだのはロングサーブ。うん、あえて自分が後ろにさげられやすくするにはもってこいだ。

 案の定返球は小夜川に向けたクリア。クリアはクリアでも、低い軌道を描くドリブンクリアだ。小夜川にフルスイングさせないことは、試合開始から徹底している。

 でもそれは今一番してほしい返球。


 バチ!!


 よっし!小夜川なら、フルスイングしなくたって十分パワーがシャトルに乗る。

 相手は面食らったようで、明らかに動き出しが遅い。


 ぽふょ!


 辛うじてラケットに当ててきたものの、さっきより浅い。


「小夜川!」


 畳みかけるように再びドライブ。相手はまたラケットに当ててきたけれど、今回はもうコントロールする余裕もない。フワフワと絶好球がやってくる。


 ズドガ!


 うん、ナイススマッシュ。

 向こうがスマッシュを打たせてくれないのなら、こっちが打てるような返球をさせればよいのである。


「マジで?!今の音ほんとにシャトルか……?」


「普通あんな音する?」


 あっけにとられる相手二人とギャラリー。そうだろうそうだろう。晴風高校のメンバーだって、初めて見た時は何が起きたかわからなかったんだぞ。


「いよっし!小夜川ナイスー!」

「おう。スマッシュ打ったの今日初めてかも」


 真正面からほぼ唯一の対抗策を破られた相手は、狙い通り明らかに動揺している。ベンチの先生はガッツポーズしてるし、広木さんは深く頷いている。よし、これで大分動きやすくなるぞ。


「次から、前でも後ろでも今みたいにガンガンいっちゃって。今の小夜川なら絶対大丈夫だから。もう一本いこう!!」

「よっしゃ。……ありがとな羽代、俺に打たせてくれて」


 ここで畳みかける。小夜川はああ言ってるけど、あの規格外のパワーが無ければ今の作戦は成り立っていない。自分だけじゃ、とても崩し切ることはできなかった。


「一本!」

『おーし!』


 次に小夜川が放ったのはショートサーブ。レシーバーは赤縁眼鏡の赤渕さん。

 今までだったら前衛の小夜川を避けてこっちに上げてくるか、ヘアピンかロブで返球せざるを得ない球を打って強打が返せない状況を作られる。それで攻めあぐねているうちに小夜川を後ろに下げられるか、こちらが上げて無理やりローテーションを回すか。

 これの繰り返しだった。技術の面で相手に負けているとは思わない。なのに離しきれない展開がずっと続く。

 例えるならば、相手の戦力が百だとして、こちらが二百だとする。こちらが攻撃と防御に百ずつ割いているところに、相手は防御に百を全振り。そうなればこちらの百の攻撃では完全に押し切ることができない。

 今までの状況がそんな感じ。今の一球で、尚更相手が防御に全力だから攻撃する余裕はないこと、これまで以上の攻撃に対する対応をする余力も残っていないことを確信した。それならこちらはもっと攻撃に割くリソースを増やして押しまくるのみだ。思えばここまで相手に攻撃されての失点だってほぼない。その時点で気づけばよかったのに。自分では落ち着いてると思ってたけど、やっぱり完全にいつも通りってわけにはいってなかったみたいだ。


 軽く息を吐いて、シャトルを追う。赤渕さんの返球はロブ。さっきのドライブからスマッシュの流れが頭をチラついてるんだろう。今小夜川()に落とすのは相当勇気がいる。


 小夜川はそのパワーに目がいきがちだけど、もう一つの強みは基本に忠実なショットが打てること。フォームは全く悪い癖がないし、長身だと手足が長い分ネット前や体周りのラケットワークみたいに小回りが必要になってくる部分って苦手とする人が多いんだけど、同じくらい身長がある他の選手と比較して小夜川はレベルが高い。そういう一見地味に見える部分を徹底しているのが何より強いところだと思う。

 こっちも負けてられない。できればまだ見せたくなかったんだけど、出し惜しみするより今は良い感覚で試合に勝ちきることが大事な気がするから。


 練習会で榛屋のあの人から言われた「フォームが変(意訳)」のおかげで気づくことができた自分の強み。それは、オーバーヘッドストロークで打つことになるスマッシュやドロップ、カットスマッシュやクリアの打ち分けを相手に読ませないということだ。正確には、試合を通して行動パターンがわかってくれば詠まれることはあるだろうけど、単純にフォームを見て何が来るか予測することは難しいらしい。


 幹人先輩曰く

「なんつーか、ほんっとインパクトの直前までまるで力入ってるように見えないんだよ!なのに普通にスマッシュ飛んできたりするからびっくりする!すっげー肩とか肘とか柔らかいんだろうな」


 涼先輩曰く

「んーとね、なんかどの球もこっちのコート入ってきてから思ったより伸びるからちょいちょい手元が狂う。だからってフォーム見ても何打ってくるか予想つかないから打たれてた球見て動くしかないからたまに時間足りない」


 小夜川曰く

「正直最初は、フォームだけ見た印象だとマジでコイツ小学生の時からやってんのか?って思った。でもいざ打ってるとこ見るといいショット連発してるからビビった。肩回りとか手首柔らけえからできる動きだ。羽代単純に瞬発力あるし、相手の行動を先読みして動くからコート上だとさらに速え。加えて変則オーバーヘッドストローク。打たれるまで何が来るかわかんねえから、相手の反応は遅れる。そうなると羽代の動きが尚更速く感じるんだろうな」


 今まで自分が強みだと思っていたのは、純粋なスピード(瞬発力)と読みによる行動の速さという二つ。だけど、練習会後、先輩方や同級生に自分のことについてあれこれ聞いて回って気づいたもう一つの強み。

 それが「変則フォーム」である。練習試合や大会の時、ちょくちょく相手が返球しにくそうにしたり困惑していたのはこういうことだったのか!そして情報収集や分析(自分がコート外にいる時に限る)に長けた小夜川の言葉で自分が今目指すべき形が明確になった。瞬発力、読み、そして変則フォーム。それら全部を使った、総合的な「速さ」を磨く。


 そう決めてからは残された少ない時間であれこれ模索しながらも、間違いなく今までにない手ごたえを感じていた。


 だがしかし、この試合思えば「速さ」を生かせていなかった。らしくもなく慎重すぎる立ち回り、ひたすら防御一辺倒の相手を崩そう崩そうと力任せで単調になる攻撃。動きこそ硬くはならなかったものの、確実に勝たなければならないと思って思考が硬くなっていた。


 だから温存とか、次の試合とか今は考えない。今、この一球を全力で取りに行く!

 食らえ!


 パシュッ


 カットスマッシュ!普通のスマッシュとは違って、ネットを超えたあたりでグっと高度が下がる。それでドロップと同じようにサービスライン周辺に落ちる。


 スマッシュやドライブ、ドリブンクリアを警戒していたんだろう。相手は二人とも後ろ気味に構えていたから、がら空きの場所に叩き込めた。


「あっ!」


 咄嗟に赤渕さんが飛び込むももう遅い。わずかにガットに当たったシャトルが軽く跳ねてからそのまま落ちた。

 相手を崩せない崩せないってやきもきしてたけど、小夜川のスマッシュで突破口が開けた、ならば後は勝ち切るだけ。相手を圧倒するスマッシュや優れたフィジカルがなくたって、戦い方はある。だからバドミントンは、おもしろい。


「ナイス羽代!」

「ありがと!どんどんいこう!」


 ハイタッチをして、間髪入れずにサーブの準備を整える。


「一本!」

『おーし!』


 小夜川が構える。相手は一言二言、言葉を交わしてから位置についた。さっきより掛け声にも覇気がない。


 パシッ!


 相手が構えてからすぐ放たれたのは、初めての練習試合でも使った低い軌道を描くロングサーブ。センターラインに沿って飛んでいく球を見て、あの時は相手が多用してきたのをやり返すようなタイミングで使ってたな、なんて思い出してしまった。

 今日初めてのコースを突いたサーブに面食らったのか、相手がどうにか捉えた球は明後日の方向に飛んでいた。


「ナイスサーブ!」


 ベンチから声が飛ぶ。これで、12-5。三連続得点だ。この試合を通して一番テンポ良く、やりたいことができてる。

 あと三点。


 お次は普通にロングサーブ。小夜川がそのまま前衛に残ったから、ローテーションせず後衛から返球に備える。飛んできたのはカット。でも残念。そんなに浮いてると……。


 スパン!


 小夜川は余裕で届いちゃうし叩ける。


「ナイッショッー!」


 南先輩が思わず立ち上がってるのが見えてちょっと笑ってしまった。


 さああと二点。

 ショートサーブが珍しくヘアピンで返って来た。それもコースはこちらから見てバック。つまりクロスのヘアピンだ。今までの作戦が通用しないとわかったら違うことするしかないもんね。ミスやリスクを嫌っているのかここまでクロスへの返球は全くといっていいほどなかったから、普通不意を突かれて体勢を崩すだろう。でもね、どっちのサイドに落とそうとうちの小夜川くん(・・)なら一歩やそこらで届いちゃう。


 ポッ!


 余裕をもってヘアピンをストレートにお返ししてカウンター。亀塚さんもギリギリ取って来たけど、ロブは浅い。


「取るね!」


 流石に小夜川が手を伸ばしても届かない高さ。それなら後衛の出番!


 パン!


 今日一番のスマッシュは、体勢を崩した亀塚さんの右足を掠めた。

 あと一点。


 今度もショートサーブ。直前の失点を意識してか赤渕さんの返球はロブ。この高さなら余裕がある。落下点に移動したら力を入れすぎず抜きすぎず膝に体重を乗せる。


 っぽ!


 思いっきり床を蹴って飛び上がり。放つはスマッシュ!ではなくドロップ。

 相手二人の間を狙ったショットは、吸い込まれるようにセンターラインに触れた。


「15―5。マッチワンバイ晴風高校。15―12、15-5」


 やった……!


「うっわ……。相手も悪くない動きしてたのに、最後六連続得点だったぞ……」

「晴風……全然知らなかったけどヤバくね?」


 終わったと認識した途端、周囲が突然音であふれたような感覚に襲われる。思ってたより集中してたみたいだ。


「ナイスゲームー!」


 ベンチの方を向けば、ソワソワする長山先生と、今にも小躍りしそうな南先輩。そして安堵した様子のコーチ。

 よかった。ちゃんと、チームに貢献できた。


きりの良い所までと思っていたら8,500字近くになりました。今のところ我等上州羽球部!で一番ボリュームのある話です。





いつも見ていただきありがとうございます!

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