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「うん、そうして今に至るって感じかな」


 随分長くなっちゃった。その間最低限の相づち以外は口を挟まずにいてくれた青葉は、今も神妙な面持ちだ。


「え……。それじゃあ僕の試合練習の相手って凄い無理させてたんじゃ……。ごめんなさい、僕、気づけなくて……」

「いやいや、あれはボクから持ちかけたでしょ?なんか皆を見てたらやりたくなっちゃったんだ。不思議なことに怖いとか嫌だとか何も思わずコートに立てたし。選手じゃないって思うと気持ちが楽なのかも。練習の手伝いって思ったらなんかできちゃった!」

「そっか……なら、良かったです」


 心から安心した様子の青葉を見て、何故かこっちまでホッとする。


「先輩いつも僕等のことサポートしてくれるけど、逆に何かお願いされたり頼られたりすることってほとんど無かったから話してくれて嬉しいです。ほら、部室で雑談してる時とかも二年生の先輩方や僕らの話を笑って聞いてることがほとんどで、あまり会話に参加されてる印象がなかったので」


 そっか。ボクの人生はいとこの大会をみたあの日からバドミントン一色で、それ以外のことになんてほとんど触れてこなかった。だけど、ボクにとって直近のバドミントンに関する記憶はあまり思い出したくないものばかり。でもバドミントンしか知らないからそれ以外の話題なんて浮かびそうになくて、とても話せそうもなかった。結局怪我をして入院して、マネージャー(仮)をやるようになってからだって如何にして一日でも早く復帰できるか、どうしたら個性の強い後輩たちにとって一番良い練習が出来るのかってバドミントンが生活の中心で、頭の中のほとんどを占めていたから。

 それでも現役時代と比べたら多少時間に余裕があったから、本を読んでみたり、絵を描いてみたり、音楽を聴いてみたり。少しでも自分の中の九割九分を占めるバドミントンを少しでも薄めようと、とにかく色々やってはみた。でも何をしていたって頭の片隅にはずっとバドミントンがあって、やっぱり同じくらいに集中できるものなんてそうそう見つからないんだって気づいてしまった。結局ありとあらゆるものを試した結果、悪くない、続けられそうって思えたのは写経と瞑想くらい。うーん、我ながら渋い。

 確かに後輩三人とボクって形で部活が再始動してからは、以前より自分から話さなくなったとは思う。きっとそれに三人は気づいていただろうけど、元々その状態のボクしか知らない一年生から見てもそうだったんだ。

 それくらい、バドミントン部に身を置きながらバドミントンを避けていた。

 バドミントンを出来ない烙印を押されたように思えてしまって、膝の傷跡をずっと隠し続けてきた。自分が見なくて済むように、人に見られて詮索されないようにって着続けていたインナー、明日からちょっとずつ辞めてみよう。今の自分をちゃんと受け入れていきたいから。とはいってもしばらくは習慣で装備してしまいそうだけど。



 いつかまた、笑って自分のことやバドミントンのこと、話せる日が来るのかな?

 不安はいっぱいだし、向き合わないといけないことも沢山。先は長いかもしれない。


 だけど、過去を初めて言葉に出来たことだけでも大きな進歩だって信じたい。


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