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同級生

前話でついに80話となりました。

読んでくださる方のおかげでここまで続けることができています。本当にありがとうございます。


完結に向けてこれからも進んでいきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 遊具もほとんどないここは、たまに町内である祭の会場になってるっていつだか一緒に帰ってる時青葉が教えてくれたっけ。


「そんでさ、話聞いてて思ったんだけど…………。羽代は考えられる奴だからそんな風にあれこれ悩んじまうんじゃねえか?俺はさ、自分の力コントロールできないのが春風杯でバレた時やべぇ、どうしよう、続けられなくなるかもとかは思ったけどそんな難しいこと考えてなかった。バレたらどうしようってのはその前から常に考えてたけど、自分のことに精一杯で相手のこととかチームのことなんて頭になかった。最近はコントロールつくようになってきて少しは周りも見れるようになったって思うけど、でも上手い奴と戦うためにどうしたらいいかなんて全く考えてねえ。相手が誰だろうと、どうやったらスマッシュを、パワーを生かせるか。そうやって自分中心にコート立ってる。でも羽代はいつもそうやって考えながらコートに立ってバドミントンしてるんだろ?コートの上でどうするかって人それぞれだと思うし何が正解とかはねえんだろうけどさ、でも俺には羽代みたいなことはできねえから素直にすげえって思うぞ」

「そうそう。僕も毎日目の前にバンバン飛んでくるシャトル打ち返すのに精いっぱいでそれ以外何にも考えてなかい。だけど羽代君はそんなに色々考えながら僕より早く動いてるんでしょ?それにさ、団体戦って一人で戦うわけじゃないじゃん?ダブルスでは大エース幹人さーん!が相方なわけだし、シングルスの時だって絶対僕や春ちゃん先輩とか誰かしらベンチにいて一緒に戦うよ。それにコーチや先生だっておなじチームなわけだし。迷ったり不安になることは誰にだってあるけどさ。少なくともコートに立ってる間いつだって羽代君は一人じゃないよ。なんて、実際コートに立つわけでもない僕が言っても的外れかもしれないけどさ。春風杯、初めて一人でコートに立った時に上からはみんなが、ベンチからは春ちゃん先輩やコーチたちが見守ってくれて応援してくれたの凄い嬉しくて。あ、案外バドミントンって個人競技だけどひとりじゃないんだって思ったんだよね」


 二人にこんな話したのは初めてで、勢いで話し始めたものの何が返ってくるか怖かった。話すのも多分ぐちゃぐちゃでしどろもどろだったし。いつだったかも幹人先輩相手にもこんな風に話したっけ。結果として、たった数ヶ月足らず一緒に過ごした奴のために必死に言葉を尽くしてくれているのを目の前で見て、なんか晴風(ここ)に来てよかったなってまた思った。


「そりゃさ、チームで戦った経験ねえし個人としても経験浅いから正直最近の練習試合でも先輩方に頼りっぱなしだってすげえ思うよ。でも羽代いつも落ち着いてるっつーか、んー……あれだ!ヒョウヒョウとしてるから、正直焦ってるのは俺だけな気がしてた。だからさ、今日お前も同じなんだなって思えて安心したよ。案外ちゃんと人間なんだな」

「わかる!羽代君ってなんかあんまり感情表に出ないし割と常に淡々としてるから、そうやって悩んだりするんだって僕もちょっと安心した。とにかく、さ。このメンバーでバドミントンできるのってきっと今だけなわけだし、僕はコートの外から声出すことしかできないけどさ、それでも自分にできる事を精いっぱいやりたいと思ってる。だから、二人も自分が後悔ないように思いっきりやってきてよ。先輩方もさ、こっちが変に気にしすぎたり気を使ったりすること望んでないだろうし」


 なんだかな……。俺、高校生になってから弱くなってて困るな。こうやってかけてくれる言葉がなんか凄くしみて、やばい、ちょっと泣きそうだ。こんな風に同級生に愚痴を言ったり相談したりしたこと、今までなかったからどうして良いかわからない。思い返せば中学生の頃なんてまともに周囲の人と関わる機会がなかったからな。


 今振り返ると小鈴さんみたいに変らずいてくれた人も、青葉みたいに見てくれていた人もいたのに、そこに目を向けることも助けを求めることもしなかった。というか、できなかった。気づく余裕もなかったんだと思う。あの頃おかれた状況で、世渡り下手な十三才やそこらの俺にはアレが精一杯だった。あの時は、唯一残された居場所である部活で結果を出すことに必死で周りなんて見えていなかった。寝ても覚めてもバドミントン。二年生からの記憶はバドミントン関連ばかり。クラスに誰がいたとか先生が誰だったとか、そういうことは全くといっていいくらいに覚えていない。誰かを巻き込みたくないって思いもあって、自分の殻に閉じこもっていた。当然大抵の人は多数派につくし長い物に巻かれるから、何もせずとも潮が引くように周りから人はいなくなっていたし今となってみればいらぬ心配だったかもしれない。

 元々他人にあまり興味がなかったのはあるけれど、それに加えて無意識にこれ以上他のことで傷つくのを避けていたんだと思う。仮に人と関わってみたところでお互い傷つけたり傷ついたりすることは避けられないことは部活を通して痛いほど体験していたから。だから自分を守るため何にも期待せず望まずいた。


 もしも、部活動絶対所属なんてルールがなかったら

 もしも、全部放り出して部活をやめていたら

 もしも、誰かに助けを求めていたら

 もしも、全部はねのけられるくらい自分が強かったら

 もしも、もしもいじめなんておこっていなければ



 ここで全国を目指すと決めた時、ここでならどんな困難が待っていたとしてもバドミントンができるって思った。それは数か月経った今でも間違っていないと言い切れる。それでも、あの時○○だったらって色んな「もしも」はふとした時に頭をチラついて、ありもしない過去や未来を思い描くことは度々あった。でも、そのどれもしっくりはこなくて、きっとそれは散々な目に遭ってそれでも進んできたからこそある今の自分を、自分のバドミントンを信じたかったから。


「ごめん。なんか、大会近いし一人で焦ってたかも」

「何さ!今特に謝るとこじゃないでしょ~。てか榛屋工業?の鷹山さんって人失礼過ぎない?なにさ初対面の羽代君捕まえてフォームが汚いって!」

「それは俺も思った。確かに羽代フォームは独特だけどさ、だからって体を壊すような動きしてるわけじゃねえのは見てりゃわかるし」


 あれっ?小夜川みたいにお手本のようなフォームじゃないのは自分でもわかってたけど、俺って周りから見てもわかるくらい変則的だったの?


「さ、小夜川……。お、俺そんなにフォーム……変……?」

「あーいや、ほら、お手本みたいなタイプじゃねえだけで、悪いわけじゃない」

「どうやったら……小夜川みたいにフォームきれいにできる……?」

「や、いまからフォーム変えようとしたら、本番崩れちまう。一度染みついたもん直すには時間かかるし。そもそも羽代には必要ない。俺はバドミントン始めた頃から結構身長もあったから、力任せにならないように基礎はスゲーしっかり叩き込まれたんだよ。それに、コントロールできないのはフォームが悪いんじゃないかって自分でも滅茶苦茶調べたり研究したりしして、パワー以外で何が強みかって聞かれたら挙げるだろうなって思うくらいには自信あるし練習した部分だから。でも羽代の強みは別だろ。なんつーか、何来るかわかんなくて怖いっつーか。な、青葉?」

「うぇ?僕!?んーと、えー、あ!そうそう、羽代君スマッシュ、クリア、ドロップ、カットのどれを打つ時も直前まで同じ動きするから何来るかわかんなくて強いと、思う。あれ?言ってることわかる?僕変なこと言った?あってる??」

「それそれ!青葉、お前やるな。国語の成績良いのか?」

「んー……数学よりは得意かな!」


 人は人、自分は自分。痛いほどわかっていたはずだったのに、やっぱり無意識のうちに勝手に比較して焦ってた。すっかり話が学校の授業と課題の話に移行している二人が、なんだかいつも通りで安心する。そっか、今日会ったばっかの一人に言われたことを全部真正面から受け止める必要なんてなかったんだ。


「そんで赤檜学園の龍野さんって人が強かった話もさ、一人じゃ僕たち誰も勝てないかもしれないけど、先輩方もいる団体戦だったら結果はきっと違うものになるでしょ?だから悔しい気持ちはバネにして明日からの練習に生かせばいいけどさ、それ以上に今気にする必要全くないよ!」

「確かに県内だったら総合力は圧倒的にナンバーワンの選手だと思う。シングルスじゃ確かに最強クラスの選手ではあるけど、羽代が今日聞いた通り松下さんは勝ったことあるからうちにも対抗できる人はいる。怖がり過ぎる必要ねえよ。それにあくまでシングルスと比較してだけど、ダブルスはそこまで結果が出てない。なんつーかあの圧と風格、最低限過ぎるコミュニケーションのせいで組める相手がなかなか見つからないらしい。だからきっとあの人も完璧ってわけじゃないと思う」


 なんだ、一人で何とかする必要なんて全くないじゃん。どうしてそれに気づいていなかったんだろう?今日悔しいと思ったのも、高校に上がってからの自分に少なからず手ごたえを感じていたから、少しは自信がついていたからこそなのかも。


「あの、さ。ほんとに今日は二人とも、練習終わりで疲れてるのに遅くまでありがとう。俺、明日からも頑張るから」

「や、何もしてない。そんなん俺の方が春風杯の頃散々迷惑かけたし練習付き合ってもらったしな」

「僕も、なんか羽代君がちゃんと人間で安心したからよかったよ」

「やだな、俺そんな人外みたいだった?」

「喜怒哀楽はなんとなくわかるけど、バドミントン関連以外だと大きなリアクションしないし口数も多くないから、謎に包まれてる感じはあったかな」

「教室通りがかるといっつも本読んでるしな。誰かと話してるとこほぼ見たことねえ」


 そっか、周りからそう見えてるんだ。過去のミステリアスボーイ(笑)が思い返されて滅茶苦茶むず痒い。演じているうちにいつしか地になっていたんだろうか?それとも元々そうだったのだろうか?真相は自分にはわからない。意外と自分で自分のこと、わかっていないんだろうか。


「ゔ…………なんか、今日の練習会とは違う方向でダメージ食らった気がする」

「大丈夫だよ、なんかお前最初より人間(笑)っぽくなってるし」

「頑張れ!人間一年目(笑)!」


 今日上手くできなかったのは悔しい。もう一人で悩む必要も戦う必要もないんだってわかっていたつもりだったけど、改めて気づくことができた。


「わ!見て蛍!蛍いる!」

「マジで?ってホントだ黄色い!光ってる!」

「ほら、小夜川君あっち!もっといっぱいいる!」

「今行く!」


 伝えたい言葉は沢山あるはずなのにありがとう以外に何を言ったらいいかわからなくて、何度か口を開いては閉じてを繰り返していた。その時目の前を小さな光が横切る。暗闇にぼんやり浮かぶ光。それだけ聞くとちょいとホラーっぽいけど今回は違う。青葉がいち早く反応し、つられて小夜川が立ち上がる。夏の風物詩、そう。蛍だ!近くを流れる川の方から飛んできたんだろう。


「ほんとに、バドミントン続けてよかった」


 鳥居をくぐって飛んでいく一匹を見送って、軽く顔をタオルで拭いて。それから二人を追いかけた。


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